古美術永澤 presents ミッツ・ザ・コレクション

2023.11.12

2023年11月12日放送『ちりめんビブラート』

音楽への造詣が深いミッツ・マングローブが、

毎週様々なテーマと共に70年代・80年代・90年代の音楽を

ミッツ・マングローブ自身の解釈でお届けしていく番組『ミッツ・ザ・コレクション』。

第92回目のテーマは『ちりめんビブラート』。

ちりめんビブラートとは、振動幅が細かいビブラートのこと。

ゆったりしたビブラートがつけにくい場合だけでなく、

曲や歌の「疾走感」や「浮遊感」、「妖しさ・淫靡さ」を押し出したい時に、

敢えて使う人が多いという印象があります。

今回は、そんな「ちりめんビブラート」の達人・変人たちを

時間の許す限りご紹介していきました。

 

まずは「ちりめんビブラートの達人・変人 -男性歌手編」と題して、

ミッツさんが編集したスペシャルメドレーでお聴き頂きました。

まず1曲目は、沖田浩之さんで「お前にマラリア」。

ミッツさん曰く、沖田浩之さんのちりめんビブラートは

「並みいる男性アイドルたちの中でも、特に異才を放っていた」とのこと。

 

メドレー2曲目は、吉川晃司さんで「Kissに撃たれて眠りたい」。

90年代になると、以前よりロックな歌唱力を身につけた吉川晃司さんも、

自慢の喉を小刻みに震わせていました。

 

メドレー3曲目は、GACKTさんで「Vanilla」。

90年代後半、「ビジュアル系ロックバンド」と呼ばれる、

耽美で刹那的で承認欲求の強そうな歌手たちが大量に発生しました。

中でも、とりわけ偏執的に「ちりめんビブラート」を、

自身の歌唱に取り入れていた人と言えば、GACKTさんです。

この3曲を続けて聴くと、どこか日本のポップスやロックが辿ってきた道程が

分かるような気がしなくもありません。

 

続いてはちりめんビブラート「女性歌手編」メドレーです。

メドレー1曲目は、和田アキ子さんで「孤独」。

こちらは1972年の紅白でも歌われた楽曲です。

今でこそ、深いビブラートの代名詞のようになっている和田さんですが、

デビューから10年ぐらいは、圧倒的に「ちりめんビブラートの達人」でした。

特に、R&B色を出したいバラード曲などで、幅の大きいビブラートで歌ってしまうと、

演歌っぽくなってしまうために、あえて「ちりめん唱法」を取っていたのかもしれません。

 歳を重ねるごとに幅の大きいビブラートや、

自然に波打つビブラートを操れるようなり、

今の和田アキ子というドエライ歌手は出来上がったわけです。

 和田アキ子の楽曲は、そのビブラートの違いで

「年代」「時代」がすぐに分かるというのも、

長年聴いてきて面白いところです。

 

続いての曲は、中島みゆきさんで「ジェラシー・ジェラシー」。

日本のフォーク・ロック・ポップス・歌謡曲すべてのジャンルに、

多大なる影響を及ぼしてきた歌手と言えば中島みゆきさんです。

あの独特なブレスと「ちりめんビブラート」で歌えば、

この世の曲のほとんどは「中島みゆき楽曲」になるぐらいの力があります。

93年にリリースされた「ジェラシー・ジェラシー」という、とてつもない狂気性を感じる曲です。

 

「ちりめんビブラート女性歌手編」メドレー3曲目は、

宇多田ヒカルさんで「Addicted To You」。

男性がGACKTさんならば、女性は同時期にデビューした彼女こそ、

「ちりめんビブラート」で日本音楽史に金字塔を打ち立てた人だと言えるでしょう。

クイーン・オブ・ちりめん・宇多田ヒカルさんです。

 男性と違って女性の「ちりめんビブラート」は、

真意を隠すための目くらまし的な効果もあったりするので、

ビルビル震えている歌声の向こう側に、いつもこちらの感性を集中させがちです。

 

お別れの曲は、坂本九さんで「明日があるさ」でした。

日本のロック・ポップスのルーツである

エルビス・プレスリーの影響を受けた最初の日本人歌手と言えば、

間違いなく「坂本九」さんでしょう。

 彼が、エルビスから体得し、数多のヒット曲で鳴らしたビブラートは、

今もなお永遠の調べとして、私たちの心を躍らせ続けてくれています。

 今回は、坂本九さんのちりめんビブラートが炸裂しまくる

「明日があるさ」をお聴き頂きながらお別れでした。

番組に関する感想・ご意見・ご要望などありましたら、

mco@1242.com までお寄せください。

お葉書は、

〒100ー8439 ニッポン放送「ミッツ・ザ ・コレクション」まで。

次回の放送は、2023年11月19日(日)17:30〜です。

どんなテーマでどんなセレクト楽曲が繰り出されるのか、お楽しみに!

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パーソナリティ
  • ミッツ・マングローブ
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    ミッツ・マングローブ

    ドラァグ・クィーン・歌手・タレント。総じて「女装家」。
    1975年 4月10日 神奈川県横浜市生まれ
    10代中盤ををロンドンで過ごす。 慶應義塾大学法学部を卒業後、 英国ウエス卜ミンスター大学に入学。商業音楽全般を学ぶ。帰国後2000年ドラァグ・クイーンとして東京でデビュー。以降、各地のクラブを中心に様々な活動やイベントの主催をする傍ら、05年に星屑スキャットを結成。07年スナック「来夢来人」にて丸の内初の女装ママに。
    09年頃からテレビでも活躍。
    2011年「若いってすばらしい」で歌手デビュー。2012年3人組コーラスグループ“星屑スキャット”のメンバーとして「マグネット・ジョーに気をつけろ」で日本コロムビアよりメジャーデビュー。2018年星屑スキャット1stアルバム「化粧室」をリリース。野外フェスティバルへの出演含め精力的に活動中。
    2019年星屑スキャット初の全国ツアー「あ々喉仏」開催。
    2021年4月中野サンプラザを含む星屑スキャット全国ツアー「色、色々」開催。