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2021.01.25

第58回のテーマは「インフラストラクチャーとは何か」

番組アシスタントの新保友映です!

きょうは、大石さんが最も関心のあるところの「インフラ整備、インフラストラクチャーとは何か」についてお話をします。

新保 インフラといえば、道路を造ったり、治水整備をしたり、人々の暮らしのために必要なもの、そんなイメージではないでしょうか。

「インフラストラクチャー(infrastructure)とは、二つの部分から成り立っている言葉です。インフラは『下の方の』、ストラクチャーとは『構造』という意味で、100年ほど前、フランスの軍隊が使い始めたと言われています。その後アメリカで、高速道路などのインフラストラクチャーが社会を支えるものとして認識され、これがしっかりしていなければ、強いアメリカはできない、国民の豊かな生活はできない、と考え始めて、インフラストラクチャーという言葉が普及し始めたのではないか、と私は思っています」大石

新保 日本でも「インフラ」という言葉は、よく耳にする言葉になりましたね。

「しかし、日本の政治家はインフラストラクチャーの重要性を理解していません。アメリカのバイデン新大統領は昨年12月末、大型の財政出動を決めましたが、これは第一歩に過ぎず、もっと大型の経済対策・コロナ対策を行うと発言しています。その内容は、1番目が「3億人のアメリカ人にワクチンをうつこと」、2番目が「コロナ禍の失業者対策」、そして3番目が「インフラ投資による新たな雇用創出」なんです。トランプ前大統領も、かつて「2兆ドル規模のインフラ投資をやる」と発言していました。一方、日本政府がこの12月11日に、防災・減災、国土強靱化に関する5年間の新たな対策を決定しましたが、総事業費は15兆円でしかありません」大石

新保 なぜ日本の政治家は、インフラを口にしないのでしょうか?

「その理由の一つは、世界で最も財政が厳しい国だから、ということであり、もう一つはインフラの重要性の認識がないからです。インフラが世の中にとって不可欠なものである、という認識がそもそも欠けています。以前、平城京は中国の長安の真似をしてつくったという話をしました。規模は小さいですが、中国の長安と同じような碁盤目状の道路も平城京にはあって、そのことは歴史教科書に出ています。しかし、長安にはあって平城京にない、それは何かというと都市全体を囲む城壁なんです。この都市城壁をつくらなかった民族は世界の中で日本だけです」大石

新保 この都市城壁が日本になかったことが、大きな要因なんですね。

「都市城壁は間違いなくインフラストラクチャーです。インフラストラクチャーがなかったら都市というのはそもそも始まらない。日本には都市城壁で命を守られた経験がないから、インフラストラクチャーが社会にとって不可欠な装置だという認識につながらないのです。現代のインフラストラクチャーは、当然城壁ではなく、一国の競争力を規定するための道路・空港・港湾や、人々の命を守るための堤防・ダム・貯水施設です。そして生活環境を良くするための上下水道・駅前広場などがインフラになっているわけです」大石

新保 インフラは、社会を元気にする元になるんですね!

「ドイツでは道路を使って1時間に95キロ先まで行くことはできますが、日本は60 km先までしか行けません。180キロ先に行くと考えると、ドイツは2時間以内に行けるのに日本は3時間かかってしまいます。どっちが効率的な輸送ができるでしょうか。どっちの宅配の運転手さんが休憩時間を長くとることはできるでしょうか。ということを考えたらインフラが人々を救うんですよ。コロナの災い転じて福となす、そのためには、われわれの認識をあらためないといけないですね」大石

このコロナ禍だからこそ、有意義に、効果的に、お金を投資してほしいと思いました。ぜひ、大石さんの熱いお話を、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、お聞きください!

*大石久和のひとくちコラム*

今回はテーマ「お節介なヨーロッパ人」。

 哲学者の中島義道氏は著書『『思いやり』という暴力』のなかで、妻に大きな鞄を持たせ自分が小さな鞄を持って歩いていると、「女性に重い荷物を持たせるとは何事か」と叱られたり、赤信号で横断歩道を渡ろうとすると、隣の人が「渡るな」と太い腕をだしたり、といった他人の行為へ干渉するヨーロッパ人(ドイツ人)の話を紹介している。私もかつてウィーンの街中で、自転車道にたまたま踏み出して歩いていたとき、自転車で通りかかった人から「ここは歩く場所じゃない」と叱られた経験がある。また、これは友人の話だが、彼は子どもがまだ小さい頃、北欧の国に留学していた。そのとき彼の経験では乳母車を階段上に運んだりする際には、「手伝い者」が必ずと言っていいほど登場して手助けしてくれたというのである。

 他人に干渉的な社会は、このように同時にお互い助け合う社会でもある。その背景には、都市城壁のなかでの安全な暮らしを長期間維持するために、戦闘集団という機能集団にならなければならなかった経験、「落伍者を出さない社会」という精神があるからではないか。一方、顔見知り仲間のなかで暮らしてきた我々日本人は、仲間以外の人間はほとんど関心外の存在なのである。そのわかりやすい証拠が点字ブロックの存在。わが国の主要な駅などには点字ブロックがギッシリと敷き詰められ、目の不自由な人の移動を助けている。ところが世界の他の国々には、このような点字ブロックは皆無と言っていいほど敷かれていない。9.11のハイジャック犯と戦ったユナイテッド93便と、たった一人の包丁男のハイジャックで墜落しかかった全日空61便(1999年)という違いが、これを端的に証明している。

*駅長さん登場!*

島根県奥出雲町の道の駅 奥出雲おろちループ 藤原紘子 マネージャー

島根県の南の玄関口・奥出雲町にあるこちらの道の駅は、国道314号にかかる、日本最大級の二重ループ式道路「おろちループ」の頂上、標高675mに位置しています。神話「ヤマタノオロチ」の舞台でもあることから、「おろちループ」という、駅名の由来になっています。

Q.上空からの写真を見ると、ぐるぐると二重の輪になっているんですね!

「奥出雲おろちループは、広島県と島根県をつなぐ国道314号の高低差105メートルをループ状の道路で結んでいます。大小11の橋と3つのトンネルからなる日本最大規模の2重ループで、総延長は約4 km。昭和57年に着工し、10年の歳月をかけて平成4年に開通しました」

Q.道の駅がある標高675メートルからの風景は素晴らしいでしょうね!

「いまは冬なので雪景色が大変きれいです。春から夏にかけては緑がとても美しく、一番人気があるのは秋で、一面が真っ赤な紅葉に包まれます」

Q.最近の話題で、とってもいい話があったそうですね。

「昨年4月の緊急事態宣言のとき、臨時休業しました。そのとき、心配だったのが、店内の在庫でした。問屋さんから、このままでは廃棄処分しかないので、安くても売って欲しいと話を聞いて、店舗営業再開後すぐに『問屋救済特価セール』を開催しました。定価の3〜5割引したところ、多くのお客さんに来ていただき、廃棄処分をしなくて済みました」

Q.藤原さんは4月から駅長になられるそうですが、駅長になったら何をやろうとお考えですか。

「ここ奥出雲町の南の玄関口となっていますので、街の魅力を多くの人に伝えたいのと、店舗の魅力化、情報発信、そして防災拠点、子育て支援にも力を入れたいと考えています」

道の駅 奥出雲おろちループ
所在地:島根県仁多郡奥出雲町八川2500-294
電話:0854-52-3111
営業時間・休業日等の詳しい情報はホームページでご確認ください。
道の駅 奥出雲おろちループ ホームページ

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。