道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

2020.06.15

第31回のテーマは「異なる『思考』」

番組アシスタントの新保友映です!

今回は、大石さんが「自然災害死史観と紛争死史観から、日本人と、ヨーロッパ人・中国人の考え方の違い」についてお話します。

新保 国土や歴史の違いから、考え方が違ってくるんですか?

「紛争による大量虐殺を経験してきた「紛争死史観」のヨーロッパや中国では、次の戦いで勝利を確実なものにするため、徹底的に情緒を排除して、極めて合理的に思考するという経験を積んできました。その結果、彼等は思考の網羅性・俯瞰性・長期性を身につけることとなりました。一方、「自然災害死観」の日本では、いつ・どこで大地震が起こるか?、堤防のどこが・いつ崩れるか?は予測できない事象であることから、「あらかじめ備えておくことができない」という経験を積んできました。その結果、われわれ日本人は、思考の暫定主義や臨機主義を身につけることとなったのです。日本の法律・制度には、「緊急措置」「特別措置」「暫定措置」「当面の措置」という言葉が多いですよね」(大石)

新保 確かに日本人は、なるがまま、そういった考え方がありますね。

「あらかじめ備えることは出来ないので、起こってから考えるという思考形態を私たちは身につけてしまいました。これが我々の『先送り体質』と言われるものにつながっています。よく政治家を先送り体質と非難しがちですが、政治家がそうなのではなくて、私たち日本人がそうなのです」(大石)

新保 いま考えても結論は出ないから、先に延ばそうとなるんですね。他に、日本人の特徴はありませんか?

「日本人の良い部分として、(その場)円満主義/互譲精神を挙げることができます。こんなエピソードがあります。福沢諭吉が江戸時代の終わりに、『コンペティション(competition)』という英語を日本語にするとき、『競争』という言葉を当てました。それを幕府が、『争』という字を見て、『争うとは何事だ』と突き返したそうです。それほどに我々は争いが嫌いなんです」(大石)

新保 荒波を立てたくない、仲良くする、という考えが日本人にはありますね。

「日本人は小さな集落の中で暮らしてきました。江戸時代、村の人数は400〜500人で、冠婚葬祭から田植え、稲刈り、災害復旧まで、ほとんどの暮らしがここで成り立っていました。村の中は全員が顔見知りの仲間で、その仲間が気まずくならない、それが私たち日本人の暮らしの重要なポイントだったんです」(大石)

新保 村の中で生きるには、仲良く、力をあわせることが大事だったんですね。

「この国は〝話し合い解決国〟なんです。話し合いがすべてを解決します。条文に書いたものが解決するわけではないんです。それが日本人にとって何よりも大切なことでした。したがって全員の合意によって、ものごとが決まります。だからいまでも顔見知り仲間に認められることを一番嬉しく感じる、そういう人々(国民)になったんです。仲間に役に立っているということを喜ぶ。優しい国民なんです。」(大石)

新保 確かに、人が喜ぶことが嬉しく感じますね!

「一番良くないのは、アメリカがこうしているから、日本もこうすべきだという言い方です。世界標準だということが、本当に日本人に合っているのか、検証してみると相当危ないことがあります。一人ひとりの責任を明確にすると日本人はその責任の前にたじろいでしまいます。ところがグループの責任となると、このグループで助け合いが生まれる、そういう国なんです。日本人の、このよさを活かさない手はないと思います」(大石)

今回は、大石さんの話に納得するばかりでした。日本人の優しさは、村社会の中で、仲良く、円満に暮らしていくことから生まれたんですね。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*「駅長さん登場!」*

栃木県小山市の道の駅「思川(おもいがわ)」日向野貞二駅長

東北自動車道「佐野・藤岡インターチェンジ」を降りて、国道50号を東へ13kmの場所にあります。小山の豊かな自然の中で生み出された農畜産物の販売から、都市と農村の交流を促進する拠点施設、またドライバーが安心して休憩できる施設として、人気の道の駅です。

Q.そちらの道の駅は、田畑に囲まれているそうですね。

「小山市は県内有数の穀倉地帯で、お米の生産が盛んで、農薬・化学肥料に頼らない安全安心なコシヒカリの生産に取り組んでいます。畜産も盛んで、小山のブランド豚『おとん』を生産者が心を込めて育てています」

Q.『フードバンク』という活動をされているそうですね。

「より新鮮なものを提供するため、時間が経つと生産者によって回収されていましたが、これらの中には食材として十分活用できるものがたくさんありました。子どもの貧困に対する食の支援と、食材の有効利用(フードロス削減)のために『フードバンク』を始めました」

Q.去年の台風19号では、近くの渡良瀬遊水池が大きな役割を果たしたそうですね。

「渡良瀬遊水池は、利根川治水の要として、首都圏の皆様の生命と財産を守るために、大きな役割を果たしたと思っています。またここは、絶滅危惧種が多数ありまして、貴重な動植物が生息する自然の宝庫となっています。国際的に重要な湿地としてラムサール条約に登録されています。この道の駅から車で10分くらいのところにあって、いまの季節は蘆(よし)の新芽が、一面緑の絨毯のようになっています」

Q.これからどんな道を目指していきたいですか?

「県内トップクラスの農産物を売る道の駅として、また地域のみなさんに愛され、親しまれる道の駅として、そして多くの皆様にご利用いただける道の駅として、成長・発展する道の駅を目指していきたいです」

道の駅「思川」
所在地:栃木県小山市大字下国府塚25-1
電話:0285-38-0201
営業時間:9時~19時(4月~8月)/9時~18時(9月~3月)
https://www.michinoekiomoigawa.co.jp
お出かけの際は、ホームページなどで情報をご確認ください。

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )

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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。