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2020.06.01

第30回のテーマは「日本の政府・政治とコロナウイルスショック」

番組アシスタントの新保友映です!

緊急事態宣言が解除になりましたが、これからの私たちの生活はどうなっていくのか、非常に気になります。そこで、今後の日本経済について、大石さんが詳しくお話します。

新保 コロナショックで、私たちの今後の暮らしがどうなって行くのか心配ですね。

「今回の新型コロナによる大不況は、1930年頃の大恐慌以上になるとのアメリカの学者の話もありますし、(日本)政府も非常に厳しい状況との見解を示しています。いまこそ、キチッとした経済対策を打って、国民を救済する、あるいは商売を救うことをやらなければなりません。日本国憲法・前文には、「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する」とありますが、過去20〜30年間のわが国の政治を振り返ったとき、政府は国民の福利向上のために働いてきたと言えるのでしょうか。国民の豊かさ、生活水準、安全性などは、各国に比べてどうなのか?、悲惨な状況だと言わざるを得ません」(大石)

新保 具体的にどんなことが悲惨な状況なのでしょうか?

「私が専門とする国土学は、国土に働きかけ、インフラを整備することで、国民の安全と一国の経済成長を目指す、という学問ですが、ここから見ても交通インフラは、アメリカ、ヨーロッパ、中国の水準に比べてはるかに劣っています。防災の施設においても、毎年雨の降り方がきつくなっているのに、その防災に対する事業費はこの30年間で半減されており、こんな国は世界で唯一です。台風19号では多くの人々の命や財産が失われています」(大石)

新保 他には何か削減されたことはありますか?

「医療について調べてみたら、驚愕な事実がわかりました。コロナは感染症ですが、感染症の病床数が1998年には9060床ほどありましたが、2018年には1869床と、80%も削減されています。保健所の数も1995年に747カ所あったのが、2019年には385カ所と半減しているんです。医療費を削減するために、病床数も保健所の数も減らされているんです」(大石)

新保 国民の命にかかる医療費がなぜ削減されてきたのでしようか?

「昨年の秋、経済財政諮問会議という我が国の経済方針を決定する機関が、医療費削減のため、官民合わせて13万床の病床を削減せよ、さらには東京の九段坂病院などを整理統合せよ、と言っています。まだ削減されていませんが、今回のことを考えると病院や病床は削減すべきではありません」(大石)

新保 その他、減らされたものは?

「もっとわかりやすい例で言えば、1995年の日本人の家計の平均収入は約660万円でしたが、現在は約550万円に下がっています。これは国民が貧困になっていったということ。30年かけて100万円も所得が下がっている国はたぶん日本以外ありません。一体何をやってきたのかと言いたいぐらいです。そこに立ちはだかっていたのが、財政再建至上主義です。国民は財政のために生きているわけではありません。国民のために財政があるのです。財政再建至上主義によって、科学技術の研究費も下がってきています。世界の先進国の中で、日本は研究論文の数が減り続けている唯一の国なんです。だから科学技術でも日本は劣後していると思うべきです」(大石)

新保 減らされたお金はどこに回っているのでしょうか?

「使うべきところに使ってこなかったんです。(政府が積極財政をとらなかったため)だから国や国民がお金を使えず、需要が伸びませんでした。需要が伸びないから経済は成長しない。経済が成長しないから税収が伸びない。こういう〝恐怖の輪廻〟を変えないといけません」(大石)

今回の新型コロナウィルス対策では、国費ベースで見ても32兆円、相当思い切ったことをこの政権はやろうとしているんです。これは一つのチャンスかもしれません。いまは後退から立ち直るための投資なんですけれど、これを続けていけば、必ず経済成長できる、日本人の能力が発揮できる環境整備ができる、このように思いますね」(大石)

このあとも、大石さんが、コロナショック後、日本の政府が何をすべきか、熱く語ります。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*大石久和のすっきり納得!経済教室*

〝健全財政〟という言葉があります。出と入りが一致しているのが健全な財政だとよく言われていますが、これが家計なら正しいのですが、国(=政府)の収支には当てはまりません。財務省の発表では「国の借金」と言いますが、これは適切な表現ではありません。「国の借金」ならば、日本がどこかの国から金を借りていなければなりませんが、我が国は世界最大の債権国です。したがって国の借金ではなく、政府の「債務」と言うべきなのです。

また、政府収支と民間収支(と海外収支)の合計は必ずゼロになります。つまり、政府の財政赤字(政府の債務)は、それと同額の民間貯蓄(民間による政府債権の保有)を生み出しているのであって、民間貯蓄が財政赤字をファイナンスしているわけではありません。お金は借りるところから始まるのです。従って、私に言わせれば、財政危機論も、財政破綻論も、財政健全化至上主義論も全部間違いなのです。しかし、これらに日本の政治は、ずっと引きずられてきました。

今回のコロナ対策は、一次補正も二次補正も相当大きな〝真水〟(経済生産を押し上げる効果のある予算)です。これを国債で調達して投入しますが、財政健全化至上主義論者が言っていた財政破綻が起こるのかどうか、このあと明らかになると思います。

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  • 大石久和(おおいし ひさかず )
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    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。