道の駅プレゼンツ 大石久和のラジオ国土学入門

2020.05.26

第29回のテーマは「特異な日本語」

番組アシスタントの新保友映です!

日本人は「イェス、ノーが言えない国民」だとよく耳にしますが、日本語は、微妙なニュアンスを含んでいます。「特異な日本語」について、国土学から大石さんがお話します。

新保 まずは、ヨーロッパの言葉と、日本語とどんな違いがありますか?

「ヨーロッパの言葉は、自分の意思や命令を、いかに正確に伝えるか、それを実現できるように磨いてきた言葉です。英語もドイツ語もアクセントやイントネーションが強い言葉です。これは自分の考えを相手にわからせるために必要だったということだと思います。一方、日本語は『思い』や『心のゆれ』を伝える言葉で、私の思いをあなたにどう伝えるか、こういう言葉の磨き方をしてきました」(大石)

新保 この「思い」は、欧米人に、なかなか理解されにくいでしょうね!

「イギリスの元首相・チャーチルが、第二次大戦回顧録で、日本語について、『日本軍の計画は非常に厳格だったが、計画が予定通りに進行しないと目的を捨ててしまうことが多かった。これは一つには日本語というものが厄介で不正確なためだと考えられる。日本語はすぐに信号通信に変えることが難しいのである』と語っています」(大石)

新保 ヨーロッパでは、以前、お話があった『紛争死』の歴史があるから、言葉は正確に伝えないといけなかったんでしょうね。その点、日本語は曖昧な表現が多いですね。

「作家で翻訳家、劇作家でもあった福田恆存(ふくだつねあり)は、著書『日本を思ふ』(文春文庫)の中で、『イギリスのある女流ジャーナリストの書いた本のなかに、こういうことが書いてあります ―対人関係にまつわる心理の綾(あや)について、日本人くらい鋭い洞察力をもつている国民はない― そんな意味のことが書かれてありました。』と語っています。相手の気持ちを読んでそれに合わせるとか、自分の心の揺れをいかに相手に伝えるか、ということのために、微妙な表現ができる言葉を日本人は育てきたんですね」

新保 日本人には『自然災害死』の歴史があり、自然相手では恨むに恨めないので、自分の『思い』や『心のゆれ』を伝える言葉が生まれたんでしょうね。

「日本史を遡ると、こんなエピソードがあります。源平合戦で平家が都落ちした時、自分が作った歌が勅撰集に残るかどうか心配した平忠度(ただのり)は、木曾義仲が迫ってきているのに、また京都に戻って、私の和歌はどうかと評価を聞いているんです。立派な歌だと聞いて安心し、京都を離れますが、その後、源氏に滅ぼされてしまいます。合戦の最中、武将が自分の和歌が評価されているかどうかを気にする、そんな国は他にないと思います。これは馬鹿にした話ではなくて、自分の心のひだをどうやって歌に託すことができたか…、それを大事にしてきた表れだと思います。ただ、ここで注意して欲しいのは、我々日本人は、論理表現が非常に苦手で、論理表現にふさわしい言語を持っていないということなのです。そのことを自覚しないといけません」(大石)

このあとも、大石さんの興味深い話がまだまだ続きます。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!

*「駅長さん登場!」*

長野県上伊那郡飯島町の道の駅「田切の里」下島修駅長

中央自動車道・駒ヶ根インターチェンジを降りて車で15分ほど。中央アルプスと南アルプスに囲まれた道の駅「田切の里」は、「この地に住む私達が、安心して暮らせるように、みんなで参加できる拠点施設とする」をキャッチフレーズに作られた道の駅です。自然の恵みをたっぷり受けた商品をたくさん取り揃え、南信州・飯島町の魅力を感じてもらえる道の駅を目指しています。

Q.そちらの道の駅は、地元の住民の方が出資して出来たそうですね?

「10年ほど前、国道153号線の伊南バイパスが整備されると決まった時に、住民から(車が通過するだけになるが、それでいいのか)という声が上がり、道の駅を誘致しようとなりました。地元住民に、一口1万円を出資していただき、住民主体の道の駅として、2016年にオープンしました」

Q.移動販売車も活躍されているとか?

「この辺りは、食料品の販売店が1軒もなく、買い物弱者、あるいは買い物難民が出る地区でした。そこで住民サービス事業の一環として、町内の各地区や高齢者施設を回って、食料品や日用品の訪問販売をしています」

Q.「重点道の駅」にも選ばれているそうですね!

「当駅は、防災拠点施設としての機能も持っていまして、防災倉庫のほか、非常用の井戸、非常用トイレの設置…、最近、自家発電機を設置し、大きな災害の際は、避難所としての機能を備えた道の駅になっています」

道の駅「田切の里」
所在地:長野県上伊那郡飯島町田切2598-1
電話:0265-98-5525
営業時間:
・ふるさと市場 4月-10月|9:00~18:00 11月-3月|9:00~ 17:30
定休日:年中無休(年末年始を除く)
・そば処たぎり 11:00~15:00 定休日 木曜日(年末年始を除く)
・食事処見駒亭 11:00~15:00 定休日 木曜日(年末年始を除く)
https://tagirinosato.com
お出かけの際は、ホームページなどで情報をご確認ください。

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パーソナリティ
  • 大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )
    大石久和(おおいし ひさかず )

    大石久和(おおいし ひさかず )

    1945年岡山県生まれ。京都大学大学院工学研究科修士課程修了後、70年に建設省(現国土交通省)に入省。道路局長などを歴任、道の駅の制度化などに尽力し、2004 年退官。その後、全日本建設技術協会会長、土木学会会長、日本道路協会会長等を歴任。また早稲田大学大学院(客員教授)、東京大学大学院(特任教授)、京都大学大学院(特命教授)としても教鞭を振う。専攻は国土学。 国土に働きかけるインフラ整備とその恩恵の体系、社会資本整備の哲学である「国土学」を提唱。著書に「『危機感のない日本』の危機」(海竜社)、「国土と日本人 災害大国の生き方」(中公新書)、「国土が日本人の謎を解く」(産経新聞出版)、「国土学 国民国家の現象学」(北樹出版)、「国土学事始め」(毎日新聞社刊)などがある。趣味は家庭菜園。

アシスタント
  • 新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)
    新保 友映(しんぼ ともえ)

    新保 友映(しんぼ ともえ)

    1980年山口県生まれ。青山学院大学法学部卒業後、2003年ニッポン放送にアナウンサーとして入社。プロ野球情報番組などを務め、野球の取材や知識が深い。女性アナウンサーでは35年ぶりとなる「オールナイトニッポン」のパーソナリティをはじめ、音楽番組「三宅裕司サンデーハッピーパラダイス」、バラエティ番組「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」など数々のレギュラー番組に出演し、萩本欽一さんや志村けんさんの番組アシスタントも務める。また報道番組「高嶋ひでたけのあさラジ!」では、ニュースや芸能情報も担当。2018年ニッポン放送退社。現在は、スポーツイベント、トークショーの司会、各種表彰式・授賞式、記者会見、試写会等の司会も務める他、ベースボール専門サイトFull-countでプロ野球のコラムも執筆している。