番組アシスタントの新保友映です!
今回は、大石さんが、ドイツのアウトバーンを走ったときの、驚きの体験を伺います。
新保 ドイツのアウトバーンを走ったのは、いつ頃のお話なんですか?
「1991年、ベルリンの壁崩壊から2年後のことでした。旧東ドイツ側の道路を見てみようと思い、フォルクス・ワーゲンに乗ってアウトバーンを走っていましたら、腰を抜かすほど驚いたことがありました。旧東ドイツ側のアウトバーンはほとんどがコンクリート舗装でひび割れだらけ。そのひび割れにアスファルトを注入して補修をしていたんです。ほとんどのアウトバーンはそのような状態で整備されていないことがわかりました。東西ドイツが統一されて、道路脇に設置された非常電話だけがピカピカに光っていたのが印象的でした」(大石)
新保 アウトバーンを走っていた車はいかがでしたか?
「トラバント(旧東ドイツ製の小型乗用車)が印象に残っています。この車を手に入れるには10年待ちと言われた大衆車ですが、走ると真っ白な煙がモクモク出る。大きなドイツ人が小さなトラバントに乗って煙を上げながら走る横を、ワーゲンでスイスイ抜いていく。このとき体制の違いは大きな違いを生んでしまうんだなとつくづく思いました。いま日本が旧東ドイツ路線を進んでいないか、私は心配で仕方がありません」(大石)
新保 旧西ドイツのアウトバーンについては?
「別の機会に西ドイツのアウトバーンも走りましたが、そこでも驚いたことがありました。1つの川を渡るのに上り二車線用と下り二車線用の2本の橋がかかっているところで、片側の橋では補修工事が行われ、もう一方の橋を上り下りの車線で使っている現場を通りました。このようなケースでは、日本の場合は二車線分しか幅員が確保できないので、一車線を上り、もう一車線を下りにして、1つの橋を利用するのですが、ドイツでは片側二車線の橋を、なんと上下四車線で使っていたんです。「そんなことができるのか!」と腰を抜かすほど驚きましたね。つまりドイツでは、路側帯と中央分離帯に余裕があり、非常に広いので、それをフルに使って、片側二車線の橋梁を上下四車線にして使うことができるんです。日本でそのようにできる橋は1つもありません」(大石)
新保 他にも驚いた体験はありましたか?
「アウトバーンの管理者に直接、話を聞いたことがあります。「事故多発地点に速度制限の表示をすべきではないか」と。すると「それは我々の問題ではない、政治の問題だ」と言うんです。考えてみますと、東京と横浜の間を何時間で結ぶのがいいのか、東京と大阪は何時間の物流時間で結ばれていなければならないのか、それは政治の問題かもしれません。我が国の国土をどのように有効利用するか、という視点で速度があるならば、これは政治の問題というのも、うなずける話なんですね」(大石)
新保 大石さんが「腰を抜かした!」という「ドイツ・アウトバーン見聞録」…、まだまだ続きます。詳しくは、上記の「聴き逃しサービス」をクリックして、ぜひ、番組をお聞きください!
*コラム「古代の道『官道』ロマン」*
大和朝廷(王権)時代の「官道(かんどう)」が、現在畑になっている所から発掘されている。「官道」とは、中央と地方諸国を結ぶ「(五畿)七道」(東海道・東山道・北陸道・山陰道・山陽道・南海道・西海道)のことで、この道が実に大規模で直線性に優れた道であったことがわかったのは、ここ30年ほどのことだ。歴史とは時代が新しくなるほど進歩していくと思いがちだ。しかし、30年ほど前から、いろんな開発に伴って発掘をしてみると、歴史学の常識を覆す多くのものが見つかっている。東山道では、なんと幅13mの道が現れた。江戸時代の東海道の幅は5mほどしかない。佐賀県の西海道では17㎞の直線区間があった。今日の高速道路でも17㎞の直線が続くことはない。この山だらけの日本で17㎞の直線区間を造ることは大工事だったことだろう。さらに、この官道があった場所と、現在の高速道路のルートがかなりダブっていることもわかってきた。昔も今も、国土の地形的制約条件が厳しい日本では、幹線道路を造ることの出来る場所は限定される。古代の人々は、なぜ、このように立派な道路を造ったのか? 古代の道『官道』に思いを馳せてみるのも楽しい。
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