あさナビ

2025.10.10

中村鴈治郎さんに聞く、映画『国宝』の舞台裏

歌舞伎役者の 四代目 中村鴈治郎さん登場。

歌舞伎指導を務めた映画『国宝』でのエピソードはもちろん、

11月に・歌舞伎座で上演される

三谷幸喜さん作・演出

「三谷かぶき 歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)

     ~幕を閉めるな~」についても伺いました。

 

※ 下にスクロールしていただくと放送内容をご覧いただけます。

 

 

 

<公演情報>
歌舞伎座 松竹創業百三十周年「吉例顔見世大歌舞伎」夜の部
三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン) ~幕を閉めるな~』

作・演出:三谷幸喜

■出演
狂言作者花桐冬五郎:松本幸四郎
座元藤川半蔵:片岡愛之助
山本小平太:中村獅童
油屋遊女お久:坂東新悟
浅尾勾太郎:中村福之助
市山赤福:中村 歌之助
篠塚五十鈴:中村莟玉
坂田虎尾:市川染五郎
大道具方儀右衛門:阿南健治
骨つぎ玄福:浅野和之
竹島いせ菊:坂東彌十郎
頭取嵐三保右衛門:中村鴈治郎

2025年11月2日(日)~26日(水)
※10日(月)、18日(火)休演
開演:17:00
会場:東京・歌舞伎座

 

 

映画『国宝』

大ヒット中の映画『国宝』で歌舞伎指導をし出演もした。

もともと出演はするつもりなかったが

スタッフとして協力はしますといっているうちに

出てくださいよということに。

原作が書かれる前から作品に協力。

原作の作家である吉田修一氏が、

歌舞伎のことを書きたいということで、

連載する朝日新聞の方から自分のところに相談が来た。

歌舞伎の中のことを書きたいっていうので

だったら楽屋に来ればいいと楽屋に来るようになり

自分の出番になると横についてきた。

普段の格好で来られても邪魔になるので

黒子の衣装をつくって着せ、

後見はできないが、袖までついてきて、

岡持ちや合引を持ったりした。

彼は、そこで、舞台に上がる前、歌舞伎役者が

何を話しているのか、何をやっているのかを見ていた。

女形の人が、「はい」ってきっかけになったら

いきなり女になるというそれを間近に見ている。

だから、こういうことなんだっていうのを多分感じたのだろう。

そうやってかかれた原作は新聞の連載だったので、

毎日のように読んでいたが、出来上がった時に

あんなに長いものになるとはわからなかった。

壮大なもの書かれたんだなあと思った。

 

 

『曾根崎心中』

映画『国宝』の中にもでてきた『曾根崎心中』はお家芸。

祖父と父とで、昭和28年に久々に世の中に出した作品。

『曾根崎心中』というと、江戸時代からずっとやっていた古典だと

思われるかもしれないが、実は江戸時代に1度流行り、

それから途絶えていたものを宇野信夫さんの改訂で復活させた。

だから昭和の歌舞伎。

『国宝』の原作では『曾根崎心中』はそれほど取り上げられてないが

李監督は、『曾根崎心中』をシーンで持ってきて、

二人のいろんなものを描きたいということだった。

心中場でお初が手を引いていく場面と、

俊介が手を引かれて出ていくということがリンクしたり、

うまいこともってきたと思った。

その『曾根崎心中』の徳兵衛を自分が最初に演ったのは

21歳の時で祖父の代役だった。

祖父が体調崩し見舞いに行ったところ

今日の夜の部に出るよう言われた。

普通代役というのは一座の中から出るはずでだが

『曾根崎心中』だけはうちの祖父と父しか

やっていなかったので、皆さんやりたがらなかった、

経験のない自分がいきなり立たされ、セリフは後ろからつけられるが

心中の動きはそうもいかないので稽古をした。

代わった日のことは、興奮していてあんまり覚えてない。

 

 

 

歌舞伎役者 中村鴈治郎

自分は実は初舞台は遅かった。

これは幼稚園の間は大人の世界関わらせたくないという

母の方針だった

兄弟一緒に初舞台を踏ませようということで

自分は8歳で、弟が6歳。初代鴈治郎の33回忌に合わせた

今で言うと8歳で初舞台というのは遅い。

初舞台踏んでからあまり稽古しなかったので

舞台に立ったのは小学校の間だけ。

中学、高校のときは一切舞台に出なかった。

男の子は声変わりするので子役もできない。

女形もできない。そうすると、舞台立ちにくい。

しかし踊りの稽古や鳴り物の稽古などはできるのに

その稽古もほとんどしなかった。

舞台はほぼ10年間ぐらい、ブランクがあった。

代役を喜んでやりますって言ったが出来るわけない。

同年代との違いに気付き「やろう」と思った時は20代。

三味線も鳴り物も習ったことないと気づいて、慌てていったが、

横にいるのは小学生。そういう状況だった。

転機になったのが2001年のイギリス公演。

結局、その、一度代役はできたが今度本役でやらせてもらった時に、

手も足も出ない。祖父の真似をしても、とにかくできない。

ずっとその呪縛から抜け出せなくて、

そのうちに父も私のことを徳兵衛として使わなくなった。

久々に相手役にと言ってくれたのが、そのイギリス公演だった。

 

 

鴈治郎襲名と歌舞伎の魅力

鴈治郎襲名は2015年。

実は、父が坂田藤十郎を襲名するときに、

同時襲名という話があったが

鴈治郎の先に藤十郎があるように見えてしまうと思い断った。

成駒屋にとっては、鴈治郎という名前で終わり。

坂田藤十郎というのは、屋号も違えば、全然家も違う。

父は坂田藤十郎って名前を世の中に復活したいと思い

「成駒屋」の家をでた。

結果的に襲名は10年遅れたが、

その時に鴈治郎を継いでたら時期早々だったかもしれない。

歌舞伎の魅力は奇想天外な物語や、

男が女をやるという女形の魅力、

そして衣装や大道具、全部がどれをとってもすごいこと。

あれだけ大道具にお金かける芝居もないだろう。

そして、新作もでてきているが、古典のものも実は演じ方が

変わってきてるかもしれない、

現代の方にある程度受けるように常に変化してきてる

だから生き残ってる、ずっと人気を得られてるんではないかと思う

 

 

これからの予定

映画『国宝』では、歌舞伎を教えるだけではなく、

楽屋の雰囲気や化粧の仕方、道具の置き方など、

違和感のない映像にすることが自分の務めだと思った。

監督はちらっと映るかもしれないチラシ1枚でもこだわるので

舞台スタッフが全部私に聞いてきて質問攻めで

鴈治郎の取り合いという状況だった。

11月2日から26日まで『三谷かぶき 歌舞伎絶対続魂

(ショウ・マスト・ゴー・オン)~幕を閉めるな~』に出演。

稽古の1番初めの三谷さんからの挨拶が。

「今までで一番歌舞伎座を笑わせる」というもので

それはすごいことなったなと思った。

さらに映画『国宝』でもでてきた「曾根崎心中」を来年3月の

南座での若手の公演で上演することになった。

今回は新しい形にして、「曾根崎心中物語」として新版を作る予定。

映画の影響で歌舞伎を観に来る方が増えたのは本当にありがたいこと。

『道成寺』や『藤娘』といった古典に興味を持ってくださるのも嬉しい。

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