医療法人優和会理事長の松永平太さんが登場。
千葉県南房総市千倉町を中心に松永さんの実践されている
高齢者を支える地域医療について伺うとともに、
松永さんの考える「高齢者の幸せな最期」とは何かについても伺いました。
松永平太さんの著書
著書「笑って、食べて、愛されて―南房総、在宅看取り奮闘記」(幻冬舎)
地域医療への思い
父はとても怖い人で、千倉は嫌だ、東京で頑張ると、
南房総を捨て、出ていった。
しかし、父の具合が悪くなり戻ってみると自分が思っていた千倉と違い、
とても皆優しかった。ただ父が厳しかっただけだった。
千倉に戻り、父の病院を継いで気が付いたら25年。
生まれて育って、最期にいい人生だった、
先生に診てもらってよかった、と思ってもらえるような
医療をやっていきたいと思い、地域医療に至った。
病院で命が助かった。家に帰り、開業医が往診で診る。
「何したいですか?」といっても「特に・・・」と答え、
「何をしてもらいたいですか?」と聞くと「早く死にたい」と言う。
助かるばかりではたりないのだと思った。
助かった後の命の行方に対して医師として支えていきたい。
少しでいいから笑顔をつくっていきたい。
そのような思いをもって25年。
自分が生きてきた地域、自宅で最期まで過ごしたいというが、
実際はほとんどの人が達成できていない。
それはおかしい、という思いでやってきている。
高齢者の幸せな最期とは
自分が考える高齢者の幸せな最期とは、
「命の流れが続いていく」ということ。
家族や知人、友人、そのようなつながりの中で、
最期、幸せだったと思って亡くなっていくこと。
人生において一番大事なのは一番最期。
一番最期が幸せだったら今までに不幸な人生があったとしても
幸せな人生だったと思える。
しかし、皆、最期に手を抜いてしまう。
ほとんどがこんなはずではなかったと、
地域と切れてどこかで最期を迎えている。
少しでも笑顔が生まれるような、美味しいものをたべて、
お風呂にはいって、みんなで支え合って、余生を過ごせるような、
よかったと思えるような老後を作っていきたい。
高齢者に質問している3つのこと
1つ目は、「最期、どこで死にたいですか?」
2つ目は「心臓が止まったら心臓マッサージをするか?」
3つ目は「食べられなくなったらどうする?延命処置を望むか?」
死ぬことを考えると、その向こうにある生きること、
そして、今何をするべきかが見えてくる。
幸福度の高い国の医療
日本は長寿国。しかも平和で世界が憧れる国。
しかし、日本人は足りないものを探しては不平不満を言っている。
つまり、幸せを感じられないようになっている。
幸せは、自分の周りに落ちていて、それを拾い上げかみしめること。
しかし、それができていない。幸せに気づいていない。
日本は医療が死と戦うものだった。
その結果、長寿の国になったが、
その先にある死というものが受け入れられにくい国になってしまった。
最近は医療の光と影の影の部分に気が付くようになった。
たとえば緩和医療のように
穏やかな死への医療が復活していると思う。
地域医療を実践するために幸福度の高い国である北欧に勉強に行った。
幸福度の高い国の医療を実践には自分なりの結論を持っている。
それは「昼間と夜の部屋を分けよう」ということ。
昼間にベッドに行かない。昼間は居間のソファーで寝る。
座っているのと違い、寝ていると体も頭も寝てしまう。するとどんどん弱くなる。
「自宅でゴロゴロ」ではなく、「自宅でゴソゴソ」がいい。
独居の老人は増えている。だけれども笑顔で生きている。
独りでも自分の望むところで生きていける社会を作っていかないといけない。
3月14日(木) 優和会が実践している地域医療
著書「笑って、食べて、愛されて」(幻冬舎)の中で、
マザー・テレサの「この世で最大の不幸は、
貧困や病ではなく、見放されて誰からも必要とされなくなることだ」
という言葉について書いている。
誰かから愛される、繋がっているということが大事。
年をとると、繋がりがないと苦しくなる。
繋がりや愛があればあるほど、元気に幸せに生きていける
そして認知症になりにくいというデータがある。
そのために実践していることがデイサービス。
集まることでいろいろな不具合、障害を持っている人がいる。
自分一人ではない、仕方がない、これが年を取ることだと、
自分の居場所を見つける。
すると少しずつ“ゴソゴソ”が始まり、“ニコニコ”が始まって、
支え合って笑顔が生まれる。このような仕掛けをつくっている。
そのほかには、美味しいものを食べてもらい笑顔になる。
という仕掛けも作っている。
長生きが○か×かではない。命が助かった後の命のQOL、
命の輝きが上がれば〇(マル)。命の輝きは「笑顔」だと思う。
認知症になっても笑顔はできる。
自分たちは日本一、地球一、笑顔を集めるグループになろうと思っている。
これからの高齢者医療のあり方
いつか必ず来る死をもうちょっと身近なもの、生活の場にもっていきたい。
最期を看取るために家に帰ってくる。
家族は穏やかに最期を迎えると感じる。
命はおじいちゃんおばあちゃん、お父さん、お母さん、孫・・・と
繋がっていく、流れていく。
もう一度生活の場、自宅に戻り、そのような命の流れを守っていきたい。
「いい最期」は、本人もこんなに集まってくれてありがとうと満足し
まわりの方もこんな最後いいねといい、家族もやることをやったと思い、
関わってきたスタッフも一緒に涙を流す。
QOLの後ろにある「QOD(クォリティ・オブ・デス)」をできるだけ高めたい。
人生の先輩である長老を貴ぶ文化が消えて行っていると思う。
長老を大事にする一家は同じように命が大事にされる。
長老を貴ぶ文化を復活させたい。
地域の中でもう少し死が見えて、
うまく生きていける生き方を伝えていければいいと思っている。
人間の生きる3兆候、「食べること」「笑うこと」「繋がること・愛されること」
これを大事にしていきたい。
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