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2022.03.25

鳥類学者の 川上和人さんに聞く、鳥類の生態の面白さと実際の研究の現場

森林総合研究所 チーム長で鳥類学者の

川上和人さんが登場。

小笠原諸島を中心に30年近くにわたって鳥の研究されている専門家。

世界的な発見もされている「鳥」の研究をするきっかけ、

現在おこなっている研究の話、身近な鳥の意外な生態系での役割の話など

鳥たちへの見方、考え方が変わる,お話を伺いました。

森林総合研究所のHP  コチラ

 

鳥の研究を始めたきっかけ 

小笠原諸島で島の鳥の生態、進化、保全について

研究をおこなっている。

自分は一般的にいう鳥が好きということではなく、

鳥のことを研究するのが好き。

もともと自分の先生が島の鳥の研究をしていて、

小笠原の母島で「メグロ」という鳥の研究をしていた。

それから10年ぶりに追跡調査をしないかと話があり、

それがきっかけで、小笠原で鳥の研究を始めることになった。

「メグロ」は世界中で小笠原にしか生息しない鳥。

まずは1年間を通じてじっくりとメグロをみて、

この鳥のことをすべてわかるようになりたいと思い、

小笠原の母島で約10か月過ごした。

最初はメグロ1種類だけをみていたが、小笠原には島がたくさんあり、

島ごとに生息する生物の種類が違うことが次第に気になってきて、

新しいテーマがどんどん見つかり、研究をすすめることになった。

 

 

メグロの研究

自分が鳥類を研究するきっかけとなった「メグロ」は、

小笠原諸島の母島と向島と妹島に生息。

向島と妹島は近く、能力的には移動できるが、

それぞれの島に住むメグロのDNAを調べると

DNAの配列が違っており、島の間で行き来がないことが分かった。

メグロがいる島は、個体数が多く、縄張りがもてなく、死んでいく鳥もいる。

近くにはメグロがいない島もあり、そこへ飛んでいけば、

縄張りをもてるのに、飛んで行かない。

このひとつの理由は島の生物だからということがあると思う。

遠くまで飛んでいく性質を持つ個体と、もたないかない個体がいた場合、

飛んでいく性質の個体は、

飛んでいった先は普通は海で、島がなく、死んでしまう。

しかし、移動しないタイプの個体は、

生まれた場所にいればいいので、生き残りやすい。

この性質が遺伝するものだとすれば、島という環境では、

移動しないタイプの個体が生き残りやすくなると考えられる。

鳥は飛ぶだけなく、飛ばない性質があるというのが面白い。

 

 

小笠原諸島に生息する鳥   

小笠原諸島は東洋のガラパゴスといわれる。

「オガサワラヒメミズナギドリ」や「オガサワラカワラヒワ」など

小笠原諸島にしか生息しない固有の鳥がたくさんいる。

オガサワラヒメミズナギドリは2011年に

ハワイで昔の標本をみて新種だとわかり発表された

この発表がされた際、自分たちは同じ鳥を小笠原で見つけていて、

2012年に小笠原に生き残っていると発表した。

世界中で100羽以下と非常に個体数が少ない鳥。

2015年、父島列島の東島で巣を発見した。

東島は小さな無人島。繁殖時期は冬。

冬は、海が荒れやすく、さらに繁殖時は夜行性ということで

無人島に冬に泊まり込みで行かなければならない。

そのようなことから、発見が遅れた。

「オガサワラカワラヒワ」は、

本州に生息する「カワラヒワ」の亜種とされていたが、

自分たちのDNAの調査で、別種にすべきとわかり、2020年、論文で発表。

今年の9月から別種として認められると思う。

南硫黄島に生息。絶滅に近い鳥のため、

島の人たちと外来生物の駆除をおこなうなど守るために頑張っている。

 

 

身近な鳥の生態系

身近な鳥にも生態系の中で役割がある。

ハトは、タカなどの食物になるということで、生態系をささえている

カラスは、ごみを食べることで世界をきれいにしている。

動物の死体はほっておくと病気がわくこともあるが、

カラスのようにそれを食べる生物がいることで、

分解され、それが資源として生態系の中で循環される。

生態系をきれいな状態に保つのがカラスの役割。

このような形でいろいろな鳥をみると、

広い目で自然を見ることができ、身近な鳥も違ってみえてくる。

ツバメは新しく巣をつくり、その巣を使ってスズメやハチなどが巣をつくる。

木の穴などに代わるものを都会に作っている。

ツバメは新しい環境を作る生態系エンジニアの役割を果たしている。

このように生態系の中の役割を考えるのは楽しいこと。

身近な鳥も考えてみると面白い。

 

これからの夢・目標                  

今注目しているのが西之島。

最近大きな噴火があり、島全体が溶岩と火山灰で覆われ、

全く新しい島になった。何もない場所に海鳥たちが住み始めている。

海鳥がそこにすむことで役割を果たし、

新しい生態系ができてくると思い、調査をしたいと考えている。

自分は、生物の研究は面白いということを発信していきたい。

新しいことを知ることは人間にとって喜び。

自然の中には新しいことを知る材料がたくさんある。

それをなんとかして発見していきたいと思っているのが自分たち研究者。

こんなに楽しいことがあるということを知ってほしい。

研究を続けて新しいことを知って多くの人に楽しんでほしいと思っている。

研究は崖のようなところを登ったり、泳いで無人島に上陸するなど、

大変なこともあるが、大変だからこそ、

そこにはまだ魅力的な自分たちの知らないことが残されていると思うので

気を付けながら研究を続けていきたい。

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