リスナーの皆さんからも連日感想が寄せられている映画「国宝」を私もやっと観に行くことが。
歌舞伎の世界の世襲や血筋をテーマに、それらにある時は守られ、裏切られ、そして翻弄される歌舞伎役者の人生を描いた吉田修一さん原作の文庫本上下巻800ページの超大作を映画化した作品。
吉沢亮さん、横浜流星さん、渡辺謙さん、田中泯さんと言った方々の、どれほどの稽古を積んだ事であろうという踊りが随所で披露されます。
歌舞伎座や浅草平成中村座では生の、また東銀座の東劇ではスクリーンを通して歌舞伎を観る機会があり、踊りや舞台の美しさや色彩の鮮やかさに息を飲んだものです。
しかし「国宝」で描かれる歌舞伎は異常とも言える強烈な緊張感が絶えず伝わってきたのでした。
流れ出る汗や涙で崩れていく白粉を塗った役者の顔が画面いっぱいに映し出されたり、あえて無音状態にして踊る際の衣擦れの音を際立たせるなどのシーンは観客席では決して体験できません。
しかしこれらの映像によって、生身の人間が厳しい稽古を重ねたうえでさらに極限の精神状態で舞台に立つ姿が観客に痛いほど伝わってきたのでした。
また血筋ではない役者の苦悩と血筋であるが故の苦悶が底辺に絶えず流れ、そこからも緊張が痛いほど伝わってきます。
つまりこの映画は175分にわたって一切気を抜けるところのない作品で、
始まる前にトイレの心配していた自分がいかに浅はかだったかを思い知らされました。
余談ですが歌舞伎のシーンで「あっ、この光景を見たことがある」と思い調べたところ、鶴瓶さんの落語会「らくだ」で鶴瓶さんの葬儀の司会者役として舞台に立った京都南座での撮影と判明しました。
改めて鶴瓶さんには大変な経験をさせて頂いたものだと思った次第です。

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