このブログ連載は一体何人くらいの人が読んでいるのだろうか。手応えのないまま73歳の春が過ぎようとしている。ラジオを聞いていたら爆笑問題の太田クンが「あのテレカが載っているのが嬉しかったネ。オレ達が司会に入ったら高田センセーが、出演者が一流なんですからテレカのイラストも一流にしましょうって山藤画伯にお願いしてくれてネ。あの時は感動的だったよな。高田センセーも昔の人だから物持ちいいんだよ。よくあれだけの数が残ってたよな。大事だからってオレもどこかにしまったんだけど もう何処行ったか分らないネ」全然大事になんかしてないのである。松村邦洋は前回の私の3才の時の利発そうな写真をみて「今でも あの頃の3才に会ったら ハッハーッとひれ伏して子分になって一生ついていきますネ。今の僕よりはリコウそうですもん」松村と太田のふたりはこの連載を見ている事が分った。
☆
おもひでをコロコロしながら今をコツコツ書きつづる この不定期連載・・・立川談志がこの世から居なくなって11年。今でも師匠に関する本やらCDが出続けているが この音源だけはまずいだろと思っていたものが遂に白日のもとに・・・。CD4枚組である。「伝説の談志五夜」。パッケージの表に丸く囲ってある。よく見ると私はこう書いた。『談志は言った。「これだけは世に出すな」と。by高田文夫』である。このコピーがそのすべてである。1995年。談志59才、私47才の男盛り、ハチャメチャ盛りである。国立演芸場で連続5夜やるというのだ。たしかに色んな事があったが あの時の音は・・・。作家の和田尚久という男が居て私と「ギャグ語辞典」などを一緒に作った男だ。私にハマり晩年の談志にもハマったという珍しい浅草男である。この男が国立劇場に入り込み ありとあらゆる音をきき この「5夜」を発掘したという訳だ。

有名なエピソードであるが第3夜楽屋へ私が遊びに行ったら中村勘九郎(のち勘三郎)が来ていたので師匠とワーッと銀座のBAR『美弥』へ。師匠は嬉しくてもうベロベロ。深夜2時をまわった頃「もう明日は高座に上がりたくなーい。勘九郎お前歌舞伎座終ったら飛んできてオレの代りに客にあやまってくれ。オイッ タカダ明日たけし連れてこい」事故ってすぐあとなのだ。まだ人前には1度も出ていない時である。わざと無理を言ってでも師匠はたけしが心配で会いたかったのだと思う。CDの中、この時のトークはいくら談志でも いくらたけしでも いくら勘九郎でも いくら私でも世間に出しちゃいけないトークだと思う。関係各位 話しあいを重ねた末 音は残さない事に決定。せめて写真だけでも私のファンの皆様にお見せしたいと思う。これが事実だという歴史的瞬間を。談志は上手(かみて)に横になって笑っているだけ。私が ひとり段取りをつけ仕切っている。それにしても凄いうけ方だった。あれだけの笑い声、拍手。舞台人として芸能に携わるものとしてあれ程のコーコツはなかった。男ざかりの4人である。この師匠、この仲間たちと一緒に拍手を浴びた栄光だけは今でも大事にかみしめている。もう4人は揃わない。

ちなみに談志が五夜、かけた演題である。「桑名船」「二人旅」「よかちょろ」「欣弥め」「黄金餅」。この5席の他にボーナストラックとして別の国立の会で演じた「木乃伊(みいら)取り」「権兵衛狸」「夕立勘五郎」ほかETC 入っている。
それでは五夜に駆けつけた豪華メンバーをピックアップして記しておく(記載もれはお許しを)。
■第一夜(3月11日)
「時そば」 柳家花緑
「二階ぞめき」立川志らく
漫才 立川談志・前田武彦
トーク 桂三枝
<仲入り>
漫談 ケーシー高峰
「蔵前駕籠」 立川藤志楼(高田文夫)
「姿三四郎」 澤孝子
「桑名船」 立川談志
■第二夜(3月12日)
トーク 山本晋也
漫才 松鶴家千代若・千代菊
「天災」 桂ざこば
<仲入り>
トーク 景山民夫
歌謡 田端義夫
「二人旅」 立川談志
■第三夜(3月13日)
トーク デーブ・スペクター
トーク 玉置宏
「地獄八景」 春風亭小朝
<仲入り>
ウェスタン ジミー時田
「平手酒造駆けつけ」 小金井芦州
トーク ポール牧
「よかちょろ」立川談志
■第四夜(3月14日)
「談志と私」 春風亭昇太
「災難あれこれ」春風亭鶴瓶
太神楽 海老一染之助・染太郎
「女殺 油地獄」春野百合子
<仲入り>
漫才 あした順子・ひろし
落語コント 古舘伊知郎
大放談(飛び入り)中村勘九郎
ビートたけし
高田文夫
「欣弥め」 立川談志
(すごい夜だった事が想像できるでしょう)
■第五夜(千秋楽・3月15日)
「真田幸村」 神田紅
トーク 毒蝮三太夫
民謡 伊藤多喜雄
「猫の皿」 立川志の輔
<仲入り>
歌謡 松山恵子
「替り目」 立川談春
ディキシー 園田憲一とディキシーキングス
「黄金餅」 立川談志
様々な夜があったが談志にとって5日間駆け抜けてみせた事 そしてこれだけのメンバーが連日駆けつけた事が そのプライドを満足させただろう。プログラムに「あいさつ」として談志も書いている。
『このメンバー、別に談志(アタシ)が企画した訳ではない。ま、自然にこうなった。豪華メンバーである。(中略)このメンバーの夜に参加したことは芸人、観客、それぞれ何かのときの語り草になるはずである。落語立川流家元 立川談志』
今回談志のことを書こうと思って いま談志の家をリフォームして住んでる志らくに「家の中ひっくり返しゃ古いもん何か出てくるだろ。持ってこい」と言ったら「これが・・・」と持ってきたのは名刺1枚。しみったれた野郎だ。

昭和46年(1971) 参議院当選
昭和50年(1975) この名刺になった。
本名松岡克由。在任36日目で酔っ払って辞任。
右は「談志受け咄・家元を笑わせた男たち」(中公文庫)私が解説を書いた「粋人・田辺茂一伝」に続く家元の文庫版シリーズ。この解説は毒蝮三太夫(日芸大先輩)である。これだけは世に出すな。
2022年4月27日
高田文夫

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