音源を聴く

01月31日岩手県 一関市編

街歩き「一関市」

日本百景の一つに数えられる「げいび渓」。
砂鉄川が石灰岩を侵食してできた、およそ2キロにわたる渓谷。
川岸には高さおよそ100メートルの断崖絶壁がそびえ、幻想的な世界が広がります。
「げいび渓」の名物として知られるのが、船頭が棹一本で巧みに舟を操る舟下り。
雪が舞う冬の期間は、「こたつ舟」を運行。
雄大な渓谷の中を、舟はゆっくりと進みます。

舟で供されるのは、アツアツの「木流し鍋」。

「鶏肉でしょ、大根、ニンジン、ゴボウも入ってる。
 これを味噌で煮た、まさにここだけの味わいなのね」

「木流し鍋」は、木を伐りだし、筏に乗せて川を流して運んだ
「木流し」と呼ばれた人たちが、仕事の合間に山で食した伝統料理なんだとか。


そして舟下りのクライマックスは、船頭が唄う「げいび追分」。
深山幽谷にこだまし、旅情をいっそう盛り上げます。

慌ただしい日常を忘れ、ゆったりとした時間に身を任せるおよそ90分の舟旅。
水墨画のような風景が、心に深く刻まれます。

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栗駒山に源を発し、市内へと流れる磐井川の浸食によって形成された厳美渓。

奇岩や深い淵、しぶきを上げる滝、急流が岩肌を削った甌穴と、
変化にとんだダイナミックな景観が、およそ2キロにわたって続きます。

悠久の時の流れが磨いた岩肌とエメラルドグリーンの水流、そして川岸を彩る木立。
四季が奏でる美しい景色は、国の名勝天然記念物に指定されています。

そして連なる奇岩が純白の綿帽子を纏う、
この時期だけの山水画のような景観も一興です。

上流にある吊り橋からは、
激しい流れが岩にぶつかり豪快な水しぶきを上げる荒々しい風景と出会い、
下流を歩けばゆったりした淵と遭遇。
対照的な風景が、訪れる者を楽しませてくれます。

「渓谷沿いには、様々な形の奇岩や趣の違う滝がいっぱいあるのね。
 まさに自然が生み出した芸術作品だわ」

そして厳美渓の名物が「空飛ぶだんご」。
岩場のカゴにお金を入れて木槌を鳴らすと、対岸からロープ伝いに
お茶と団子が届く‥そんな風情溢れるサービスです。

もうすぐ雪解けの春‥
木槌の乾いた音が渓谷に響けば、本格的な観光シーズンの始まりです。

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岩手県の南の玄関口、一関温泉郷のなかに位置する「道の駅 厳美渓」。
名勝天然記念物「厳美渓」や博物館のある道の駅として、
また、お餅の文化を誇る道の駅として知られています。

お目当ては、つきたて餅をいただけるレストラン。
豪華に「お餅本膳」を注文。
あんこ、ごま、納豆、海老、お雑煮、それぞれ やわらかいお餅が2つずつ。
砂糖と強めのお酢で味付けされた大根おろしと、お漬物も付いています。

「う〜ん、つきたてのお餅って、柔らか〜い。
 あんこも、ごまも、甘さちょうどいいわ。
 うわ〜、お雑煮のお餅トロトロ、こんなに伸びるんだ!
 お餅好きには、たまらないわね」

豊かな稲作地帯である一関では、
冠婚葬祭を始め、節分、お彼岸、七夕、稲刈りなど
行事の際に、もちをついて食べる習わしがあるのだとか。
その日数は、なんと年間60日以上。
この地方に伝わるもち料理の数も、300種類を超えるのだそうです。

毎年秋には、「全国 ご当地もちサミット」を開催。
各地から、自慢の餅料理が、一関に集結します。

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一関を代表する祭り、「一関市大東大原水かけ祭り」。
沿道で待ち構えた人達から水を浴びせかけられながら
裸の男衆が勇ましく走り抜け、冬の寒さを吹き飛ばします。

そもそもは江戸時代の初めに起きた明暦の大火を由来に
火事を防ぐ、火防祈願や厄除けを目的に始まったもの。
350年以上の歴史を誇り、極寒の2月に行われることから
「天下の奇祭」とも呼ばれています。

地域内外から集結した280名近くの男衆が、血気盛んに街道を駆け抜けます。
元々は禊をモデルにした神聖な行事なため、衣装は白以外認めません。
先頭を切って走る厄男の持つ旗には、「火防御祈祷」の文字も。

沿道で待ち構えたているのは、冷水の入った桶やバケツを手にした人たち。
無病息災、家内安全などの願いをこめて、容赦なく男達に水を浴びせかけます。
気が付けば、水をかける人たちも、びしょ濡れに。

そして水かけが終わった後のもう1つの風習が、
厄年を迎えた人の家に集まり、酒席を開くこと。
静かな町に笑い声が響き、祭りの夜は更けていきます。

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<街歩きパートの曲紹介>

一関の町歩きと併せてお届けした曲は‥

  M1‥レオン・ラッセル、「ソング・フォー・ユー」
  M2‥ジョン・クーガー・メレンキャンプ、「ジャック&ダイアン」
  M3‥オリビア・ニュートンジョン、「ジョリーン」
  M4‥ティファニー、「思い出に抱かれて」
  M5‥デビー・ギブソン、「オンリー・イン・マイ・ドリームス」
  M6‥マイケル・ジャクソン、「スリラー」でした



<旬彩季候〜味の歳時記>

四季、時とともに移りゆく春夏秋冬。
そして、美しい気候風土から生まれる味覚。彩季
日本の旬のお話を、季節の歌とともにお届けする『旬候〜味の歳時記〜』。
今回、注目する旬は…『なまこ』

日本は古来より、海の幸、山の幸に恵まれています。
そして、季節の節目ごとに、ささやかな御馳走をしつらえて、
年中行事を営んできました。
私たちは、食べることによって健康を維持し、成長していきますが、
その原点は旬の食材を知り、上手に摂ることにあります。
出始めの「走り」、最盛期の「盛り」、そろそろ終わりになる「名残り」。
三つの旬は、初物を喜び、旨みを味わい、
移りゆく季節の名残りを惜しむ…という、日本人の心の表われ。
季節にそった“食の知恵”を知ることで、食生活を豊かなものにしたいですね。
今回、ご紹介する旬彩気候は、『なまこ』。

ウニなどと同じ、皮に棘や突起などがある棘皮動物。
水温が下がる冬に活発になり、餌をたくさん食べるため味も良くなります。
日本では北海道から九州まで全国の沿岸地域に生息していて、
食用には「赤なまこ」と「青なまこ」があります。
一般的に「青なまこ」のほうが安く売られていますが、違いは生息場所。
赤は外洋の岩場に、青は湾内の砂地に多く生息しています。
また、青より赤のほうが磯の香りが強くて、身の歯ごたえが良いといわれます。
なまこの特徴は、コリコリとした食感と、味にかすかな苦み・渋みがあること。
意外にも消化は良く、栄養面はビタミン類が豊富で、
他にカルシウムや鉄、ミネラル分などがバランス良く含まれています。
女性に嬉しいコラーゲンも。
定番の「なまこ酢」は、二杯酢や三杯酢、ポン酢にもみじおろしを加えても美味。
腸の塩辛、コノワタはウニ・カラスミと並んで日本三大珍味に数えられます。
そして、卵巣を手のひらサイズの三角形に干したのがクチコ。
一枚を作るのに、十キロ以上のなまこが必要とされる貴重な物ですが、
ほんのひとかけらを食べると口の中に香りが広がり、酒の肴にぴったりです。

   M1‥フォー・クローバース、「冬物語」
   M2‥松任谷由実、「BLIZZARD」