06月05日栃木県 栃木市

栃木県 栃木市編

江戸時代より、北関東の商都と呼ばれた栃木の宿。
京都から日光に至る例幣使街道も通り、
東照宮に参拝する西国の諸大名などで賑わいを見せました。

この例幣使街道の一部が、
現在、町の中心街をなす大通りや嘉右衛門町通り。
その両側には黒塗りの重厚な見世蔵や、白壁の土蔵群が残り、
当時の繁栄振りを偲ばせています。

「へえ、『とちぎ蔵の街美術館』、
  およそ200年前に建てられた土蔵を改修したものなのね。
   『塚田歴史伝説館』こちらは、木材回漕問屋を営んできた豪商の屋敷跡だ。
    すごい、巴波川沿いに黒塀と白壁土蔵が120メートルも続いてる」

そして巴波川橋付近から乗船するのが「蔵の街遊覧船」。
およそ300メートルの距離を、船頭の巧みな竿さばきで1往復します。

船頭さんの船頭歌を聞きながら、蔵の街を川面から眺めれば、
まるで江戸時代にタイムスリップしたかのよう。
ゆったりとした時の流れに、身を任せます。

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出流川の源流部 鬱蒼とした自然林や、杉木立の間にある出流山満願寺。

日光山輪王寺を開いた勝道上人により、765年、天平神護元年に開山されました。
日光の修験者は、年中行事の一つとして、
必ずここで入峰の修行を行なったのだとか。
現在も、落差8メートルの滝壺で、滝業を体験できます。

門前には、「出流そば」を名乗った蕎麦の名店がずらり。
そもそもは巡礼者にそばを出したのが始まりで、
現在は、10店ほどが味を競っています。

私も行列が絶えない老舗の名店へ。
大きなざるにそばを盛った「盛りざるそば」が定番メニューです。

「へえ、地元産の玄そばを自家製粉して、松の薪で茹で上げているんだ。
  名水に晒したおそばは、香りも抜群ね。
   んん〜、コシが強くて、ほのかな甘みもある」

職人のこだわりが生んだ極上の味。
緑深い山あいの地に、行列が出来るのも納得です。

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標高341メートル。栃木市の西部にある丘陵地帯、「太平山」。
その中腹、表参道の登り口にあるのが、六角堂。
堂内には、県内で最も古い木造彫刻、虚空蔵菩薩が安置されています。

そして、ここから続くのが、およそ1000段もの石段。
この山で産出された石を積み上げて作られたもので、
まさに信徒の労力と寄進のたまものです。

「へ〜、石段の両側には、およそ2500株ものあじさいが咲き競っているのね。
  西洋あじさい、額あじさい、山あじさいと、いろんなあじさいが楽しめるんだ」

坂を登り切ったところには、鮮やかな朱塗りの随神門。
その先には、827年、天長4年、
慈覚大師により創建された太平山神社が鎮座します。

本殿前にある御神石は、
なでると大きな霊験が得られると注目されているパワースポット。
参拝客は、この石に触れてから、本殿で手を合わせます。

42社60あまりの神々を祭り、
「全ての神々この山に有り 全ての御神徳この山より始まる」
と謳われる栃木のシンボル。
およそ1200年に渡り、山の頂から町の平和を見守り続けています。

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関東平野の切れ目に位置する太平山。
標高は高くありませんが、南がすべて関東平野であるため、その眺望は抜群です。

中でも随一とされているのが、「謙信平」。
戦国武将・上杉謙信がその眺望の見事さに感嘆したことから名付けられました。
また、渡良瀬川・古利根川の合間に丘陵が見えることから、
その眺望は“陸の松島”とも呼ばれています。

「うわ〜、富士山が見える。あれ、東京スカイツリーよね。
  まさに関東平野が一望できるのね」

そして謙信平付近にある茶店では、
「焼き鳥」「卵焼き」「大平山だんご」が看板メニュー。
太平山神社に奉納された米や鶏から生まれた、古くからの太平山三大名物です。

「うん、焼き鳥は甘辛タレね。こんがりと焼き上がってる。
  卵焼きは、甘い味付けのだし巻き玉子なんだ。
   うわ〜、おだんごは、たっぷりのあんこが乗ってる」

茶店で一息ついたら、七不思議伝説で知られる大中寺へ。
こちらのあじさいも、息を飲む美しさです。

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<街歩きパートの曲紹介>

栃木の町歩きと併せてお届けした曲は‥

  M1‥マーティ・ロビンス、「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」
  M2‥ペリー・コモ、「マジック・モーメンツ」
  M3‥バート・バカラック、「遙かなる影」
  M4‥シラ・ブラック、「アルフィー」
  M5‥ディオンヌ&フレンズ、「愛のハーモニー」
    そして
  M6‥B.J.トーマス、「雨にぬれても」でした。


<花鳥風月〜旬の言の葉>

四季、時とともに移りゆく春夏秋冬。
そして、自然の流れにそうように存在する、数々の言葉。
彩りのある日本語を、季節の歌とともにお届けする
「花鳥風月〜旬の言の葉〜」
今回、注目するのは…『サクランボ』

日本には日々の暮らしに溶け込み、
心和ませるいくつもの風物詩が1年を通じて巡ってきます。
それらが季節の景色を彩り、風にのって薫り、聴こえ…私達のまわりを包むことで、
趣きのある言葉が紡ぎ出されます。
花鳥風月、季節ごとの草花や生き物、旬の味覚、年中行事、詩まで、
日本の気候風土に寄り添うように存在している数々の言葉を知ることで、
日常生活を心豊かなものにしたいですね。
今回、ご紹介する旬の言の葉は、『サクランボ』。

この時期、お店のフルーツコーナーでひときわ愛らしい姿を魅せているサクランボ。
育てて出荷するまでに手間暇がかかることから「箱入り娘」に例えられ、
フルーツ界のお姫様…ともいわれます。
世界中で栽培されており、品種はざっと1000種以上。
原産地は系統によって異なります。
日本には明治時代に開拓使などによって欧米から伝来。
各地で栽培を試みましたが、収穫時期が梅雨と重なるので上手く生育せず…
比較的、梅雨の短い山形県周辺や北海道では成功。
現在、全国生産量のおよそ7割を占める山形県を中心に、
日本独自の品種改良が進められるようになりました。
サクランボの中でも、味わい・色・艶を含めて最高品種ブランド「佐藤錦」。
大正元年、山形県東根市で、
味は良いけれど日持ちが悪い品種「黄玉」と、
日持ちはするけれど固く酸味の強い品種「ナポレオン」を
かけ合わせることに始まり、11年の年月をかけて見事に実を結びました。
当初は山形県の旧名である出羽国から取って、
「出羽錦」と命名されるところでしたが、
砂糖のように甘いこと、そして強い情熱を持って作った生産者が
佐藤栄助さんであり、錦を飾ったこと、
というような意味を込めて「佐藤錦」という名前になったのです。

  M1‥スリー・キャッツ、「黄色いサクランボ」
  M2‥渡辺美里、「チェリーが3つ並ばない」