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04月24日岡山県 瀬戸内市

街歩き「瀬戸内」

瀬戸内市牛窓町の東部に位置する街並、「しおまち唐琴通り」。
古くから異国文化と交流し、
港町として栄えた江戸時代から昭和30年頃の面影を色濃く残しています。

1887年、明治20年に警察署として建てられた洋館、「海遊文化館」。
現在は朝鮮通信使との文化交流の史料を公開。
「船形だんじり」や「和船」を展示する
資料館となっています。

「本蓮寺」は、朝鮮通信使の接待所となった法華宗のお寺。
海辺に映える美しい三重塔がシンボル。
室町時代建立の本堂、中門、番神堂は国の重要文化財に指定されています。

「へえ、昭和初期に出来た郵便局が、喫茶店になっているのね。
  大正4年に建てられた銀行は、通りの文化を紹介する文化館になってる。
   どちらもレトロでモダンな建物なのね」

そして通りを進めば、見えてくるのが「船留り(ふなどまり)」。
このあたりには、江戸時代、岡山藩の施設が立ち並んでいたのだとか。
明治時代になると多くの漁師が移り住み、海には漁船が並び、網が干されています。

穏やかな瀬戸内海を感じながらの散策は、懐かしくも心躍るひとときです。

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古くから受け継がれてきた匠たちの伝統や技を伝える「備前おさふね刀剣の里」。
「刀剣博物館」「刀剣工房」「鍛刀場」など、5つの施設で構成されています。

「刀剣博物館」は、日本刀を専門展示する全国でも珍しい博物館。
備前長船の歴史と備前刀、また日本の鉄と日本刀について、
映像やパネルクイズなどで解説する情報コーナーも人気です。

「刀剣工房」は、職人が実際に作業する様子を一般公開。
刀身研ぎ、刀身彫り、鞘や柄、ハバキの製作風景など
刀剣作りにかかわる作業工程を間近に見ることができます。

「へえ、刀って数種類の砥石を使い分けて、斬れ味と輝きを増していくんだ。
 鞘は、ほおの木を鑿で彫り上げていくのね」

日本の伝統工芸のすべてを集結した刀剣作り。
まさに世界に誇る芸術作品です。

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瀬戸内市の郷土料理「どどめせ」。
炊き込みご飯に合わせ酢を打って作る元祖「備前ばら寿司」です。

鎌倉時代末期、高瀬舟の船頭たちが毎日炊き込みご飯を作って食べていたところ、
ある日、酒に酔った武士がそれをやっかみ、
酸っぱくなったどぶろくをざざっとかけて帰ってしまいます。
何も知らずにそれを食べた船頭たちは、いつもと違う味に
「うめえ、うめえ」と大喜び。これが始まりなんだとか。

やがて、この「どぶろくめし」が名物となり、
なまって「どどめせ」として広く親しまれ、
その後、全国に名高い「備前ばら寿司」に姿を変えたといわれています。

「どどめせ」を供するうどんの名店、「一文字」へ。

「へえ、椎茸・さやえんどう・かんぴょう・錦糸たまごのほかに、
 里芋でしょ、タケノコ・ごぼう・にんじん・鳥肉・ちくわが入っている。
 合わせ酢と日本酒と特製の天然だしで味付けしているのね」

武士のいたずらで生まれたという中世ロマンの味。
素朴な味の中に独特の風味が生きています。

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鎌倉時代後期に始まったとされる岡山県指定の重要無形民俗文化財
「踟供養」。
阿弥陀信仰によって浄土の世界へ導かれたという
奈良時代の『中将姫伝説』を劇化した珍しい祭りで、
日本三大練供養の1つとされています。

面をかぶり、装束を着け、菩薩や仏に扮した人々が
極楽に見たてた場所から、この世で臨終を迎えた人のところまで練り歩きます。
そして亡くなった人を象徴する小像を
蓮台(れんだい)に乗せ、極楽浄土へと連れ帰ります。
その厳かな立ち振る舞いに、参列した人々は、ひととき極楽浄土へと誘われます。

「へえ、行列は、中将姫の木像を手にした六観音、
  花束を手にした子ども達、ほら貝を吹く人、ドラやシンバルを鳴らす人など、
   総勢70人くらい。が2列になって行進するのね。」

膝を曲げるお辞儀、合掌した右手で輪を描く仕草などの所作は、
古い形式を今に伝えるもの。
さらに使用される面は、室町時代初期か南北朝時代の作とされています。

なんとも煌びやかで、なんとも神々しい行事です。


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<街歩きパートの曲紹介>

瀬戸内の町歩きと併せてお届けした曲は‥

  M1‥ポール・モーリア・グランド・オーケストラ、「エーゲ海の真珠」
  M2‥ナナ・ムスクーリ、「アルハンブラの思い出」
  M3‥ハリス・アレクシーウ、「恋に身をゆだねて」
  M4‥クレモンティーヌ、「ココモ」
  M5‥シセル、「ヒア・ゼア・アンド・エブリホエア」
    そして
  M6‥シークレット・ガーデン、「ノクターン」でした。

<花鳥風月〜旬の言の葉>

四季、時とともに移りゆく春夏秋冬。
そして、自然の流れにそうように存在する、数々の言葉。
彩りのある日本語を、季節の歌とともにお届けする
「花鳥風月〜旬の言の葉〜」
今回、注目するのは…『田植え』

日本には日々の暮らしに溶け込み、
心和ませるいくつもの風物詩が1年を通じて巡ってきます。
それらが季節の景色を彩り、風にのって薫り、聴こえ…私達のまわりを包むことで、
趣きのある言葉が紡ぎ出されます。
花鳥風月、季節ごとの草花や生き物、旬の味覚、年中行事、詩まで、
日本の気候風土に寄り添うように存在している数々の言葉を知ることで、
日常生活を心豊かなものにしたいですね。
今回、ご紹介する旬の言の葉は、『田植え』。

今年も時季になりました。
田植えは育てた稲の苗を本田に植え付ける作業。
1年間の水稲(すいとう)栽培の中で、収穫と並んで重要です。
1954年(昭和29年)公開の黒澤明監督作品「七人の侍」でも、
田植えは印象的に描かれていますね。
かつて田植えは農作業であると同時に、
お米の豊作を祈る“田の神の祭り”という、大切な神事でもありました。
お囃子や田植え踊りは「田楽」になり、
そこから「猿楽」や「能」などの芸能へと発展していったとされています。
お米は気温に敏感な作物なので、
気温が15℃を下回ると成長が止まり、10℃を下回ると枯れてしまうといわれます。
度重なる品種改良や、栽培技術の向上によって“米どころ”は増えましたが
各地で田植えの時期に差がある大きな理由は、
日照時間と気温の関係をみて調節しているからなのです。
日本屈指の米どころである北陸をはじめ、
北海道、東北、東海、九州など、各地で主要品種があります。
コシヒカリ、ひとめぼれ、ヒノヒカリ、あきたこまち、
きらら397(さんきゅうなな)、ゆめぴりか、はえぬきなど、
アナタのお家では、どのお米を食べているでしょうか?

  M1‥小田和正、「緑の街」
  M2‥My Little Lover、「Man & Woman」