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03月06日愛媛県 今治市

街歩き「今治市」

「今を治める」と書いて「いまばり」。
かつては「今」に「張りつめるの”張”」と書いて「今張」としていた地を
現在の漢字を用いて「今治」と命名したのが、
1600年、慶長5年にこの地を治めることになった藤堂高虎。
「これからこの地を治める」という意味が込められているのだとか。

高虎が1602年、慶長7年に築城を始めた、今治城。
海岸近くに作られた珍しい城で、
堀には海水をひき、外堀を通じて船で海へ出られたと言います。

「なるほど、海につながっているから、
  お堀の水位が潮の満ち引きによって変わるのね。
   えっ、鯛やヒラメも泳いでるの? 見つけられるかしら」

お堀で思わず宝探し。

明治維新後に建造物のほとんどが取り壊されましたが、
1980年、昭和55年、天守や櫓、門などの再建が始まり、
今治のシンボルとして蘇りました。

城の中は、資料館に。
高虎公の肖像画をはじめ、甲冑、刀、火縄銃、今治城絵図など
今治藩にまつわる資料が展示されています。

もうすぐ今治も桜の季節。
今治城にも、淡いピンクの花びらが舞うことでしょう。

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今治の有名な産業のひとつ、繊維。
中でもタオルの生産は、全国生産高のおよそ5割のシェア。
「今治タオル」といえば、いまや世界的に知られるブランドです。

現在のタオルの原型が生まれたのが、19世紀はじめのフランス。
それが日本に入ってきたのは1872年、明治5年のことでした。

今治タオルの歴史が動き出したのは、1894年、明治27年。
阿部平助という人物が
綿フランネルの製造機械を改造し、タオルの製造をスタート。
その後、技術開発を経て、大正時代末には
高級なジャカード織りのタオルが生産できるようになりました。

「なるほど、技術の向上だけでなく、
  今治にはタオル作りの際に欠かせない、質のいい水が豊富にあったのね」

今治を流れる水は、重金属が少なく硬度成分も低い、
タオルの晒しや染めにぴったりだったのです。

今治インターから車で15分のところにある「タオル美術館ICHIHIRO」では、
そんな歴史が育んだ、様々な色や形の今治タオルが揃うほか、
タオルを使ったアート作品もたくさん。

120年の歴史を持つ今治タオルは、
これからもずっと、私たちの暮らしを豊かにしてくれる相棒です。

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愛媛・今治と広島・尾道を結ぶのが、全長60キロの「瀬戸内しまなみ海道」。
島から島へとかかる10本の橋を使って、海峡を横断することができます。

高速道路と並行して、自転車と歩行者用の道が通り、
全国からサイクリングやウォーキングファンが訪れる名所でもあります。

今治から出発して最初の島・大島までの間は、海の難所・来島海峡。
ここにかかるのが、世界で初めての三連吊橋「来島海峡大橋」。
大きな3つの橋が連なって、ひとつの橋を形成しています。

青い空にそびえる6基の主塔、そこにケーブルが美しく弧を描く。
技術の粋を集めた建造物。

「自転車をレンタルして、さあ、サイクリングに出発!」

しまなみ海道沿い15ヶ所に、レンタサイクルのターミナルがあるため、
時間をかけて本格的に走るもよし、短い距離で景色を楽しむもよし。
自分にあったサイクリングを楽しむことができます。

「うわあ、右も左も前を見ても海!
 海風を切って走るのが、こんなに気持ちいいなんて!」

またとない景色を、目に焼き付けました。

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今治が日本一と誇るグルメ、それは「焼き鳥」。
どこにでもある、あの焼き鳥ではありません、
鶏肉を串に刺して炙る…という概念を根底から覆す、
「鉄板で鶏肉を焼く」というスタイル。

定番は「鶏皮」。鶏皮から出たたっぷりの脂で揚げるように焼く、
そしてその上から鉄製のアイロンのようなコテで押さえつけて、
仕上がりをスピードアップ!

今治は海に面した街。普段は魚を食べていても、外食では肉が好まれます。
また、文化的には関西圏の影響を受けている…。
そのため、今治の人が言うには、「せっかち」な人が多いのだとか。
鉄板でプレスして素早く仕上げた「今治の焼き鳥」は、
こうした背景から生まれたと言われています。

「じゃあ、さっそく私も鶏皮からいってみようかな。
  コテで押さえつける時のじゅーって音、脂とタレの香りが、
   なんとも食欲をそそるわ」

外側のカリカリ、皮のふわふわ、いろんな食感が楽しめる「鶏皮」。
ビールのお供にもぴったり。
さあ、楽しい夜の始まりです。

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<街歩きパートの曲紹介>


今治の町歩きと併せてお届けした曲は‥

M1‥モーリス・ホワイト、「アイ・ニード・ユー」
M2‥マライア・キャリー、「ヒーロー」
M3‥リサ・ローブ、「フールズ・ライク・ミー」
M4‥ザ・ビート・ボーイズ、「カリフォルニア・ガールズ」
M5‥プリテンダーズ、「ドント・ゲット・ミー・ロング」
そして
M6‥クール&ザ・ギャング、「ジョアンナ」でした。



<旬彩季候〜味の歳時記>

四季、時とともに移りゆく春夏秋冬。
そして、美しい気候風土から生まれる味覚。彩季
日本の旬のお話を、季節の歌とともにお届けする『旬候〜味の歳時記〜』。
今回、注目する旬は…『たらの芽』

日本は古来より、海の幸、山の幸に恵まれています。
そして、季節の節目ごとに、ささやかな御馳走をしつらえて、
年中行事を営んできました。
私たちは、食べることによって健康を維持し、成長していきますが、
その原点は旬の食材を知り、上手に摂ることにあります。
出始めの「走り」、最盛期の「盛り」、そろそろ終わりになる「名残り」。
三つの旬は、初物を喜び、旨みを味わい、
移りゆく季節の名残りを惜しむ…という、日本人の心の表われ。
季節にそった“食の知恵”を知ることで、食生活を豊かなものにしたいですね。
今回、ご紹介する旬彩気候は、『たらの芽』。
たらの芽はたらの木の新芽のこと。
独特のほのかな苦みと、もっちりとした食感が人気で
「山菜の王様」とも呼ばれています。
木は全国の山野に自生。
山道沿い、林道の道端、傾斜地など水はけが良く日の当たるところに多く見かけます。
地域により差がありますが、天然物の旬は桜の咲く頃から6月の初め頃まで。
今はハウス栽培も進み、早い時期から出荷が始まり、
2月下旬頃から3月中旬頃までが出荷のピークともいわれます。
自生している木は白っぽく、幹や枝の表面に鋭いトゲが沢山あります。
トゲが有るものは、漢字で男と書いて“男(お)だら”とか“男(おん)たら”
トゲが無いか、極めて少ないものは漢字で女と書いて“女(め)だら”
と呼ばれます。
たらの芽も、“男(お)だら”にはトゲがあり、
ハウス栽培の黄緑色で綺麗な肌をした“女(め)だら”とは
パッと見で違いが分かります。

  M1‥柏原芳恵、「春なのに」
  M2‥スピッツ、「空も飛べるはず」