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03月13日兵庫県 加古川市

街歩き「加古川市」

589年、崇峻天皇2年、
16歳の聖徳太子が仏教を広める道場として建てたとされる「鶴林寺」。
釈迦三尊と四天王を祀り「四天王寺聖霊院」
と称されたのが、この寺の始まりといわれます。

平安時代の壁画が発見された県下最古の木造建築、国宝「太子堂」。
泥棒が盗み出し壊そうとしたところ、「アイタタ」という声が聞こえてきたため、
改心したと伝えられている
「銅造聖観音立像」など、多くの仏教美術が残されています。

山門をくぐり抜けると、のびやかな境内が広がります。
堂々とした仁王門の先には、屋根の強い反りが印象的な本堂。
他にも檜皮葺きの屋根が優美な太子堂、
さらに常行堂や鐘楼などの
国宝・重要文化財が悠々と立ち並び、
朱塗りの三重塔が、唯一鮮やかな景色を作り出しています。

「あれっ、三重塔の四方にある鬼瓦、1ヵ所だけは三方に睨みを利かせてる。
  …三方鬼瓦っていうんだ。魔除けの意味が込められているのね」

さすがは、「播磨路の法隆寺」と称される古刹。
整然とした境内には、静寂と幽玄の世界が広がります。

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平安時代前期の僧、沙弥教信。
念仏を唱えながら仏の教えを説くだけでなく、農民の手伝いをしたり、
わらじを作って貧しい人に与えたり、旅をするお年寄りの荷物を運んだりして、
大勢の人を助けたことから、「荷送り上人」、「阿弥陀丸」とも呼ばれました。

後の世に念仏を広めた親鸞や一遍も、教信を尊敬し、慕っていたといわれます。

その教信が庶民仏教の普及に努めた庵の跡に建てられたのが
「教信寺」。

阿弥陀如来像を安置した本堂。
本堂の左手には、教信の頭部の像を安置した開山堂。
本堂の右手には薬師堂が鎮座します。

「へえ、廟所の中の石造五輪塔、教信上人の墓塔と伝えられているのね。
  堂々とした風格があると思ったら、鎌倉時代末期に作られたものなんだ。」

そして境内には、100年近い老木をはじめとする およそ60本のソメイヨシノが。
季節が少し進めば、可憐な花を咲かせ、境内全体を淡いピンクに染め上げます。

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加古川のご当地グルメ、かつめし。
ご飯の上にビーフカツを乗せ、デミグラス系のタレをかけたもの。
これに茹でたキャベツを添えて、お箸でいただきます。

戦後間もないころに、加古川駅前の食堂が始めたと言われ、
手軽に食べられることから加古川市内の食堂や喫茶店に広まり、
地域の名物料理となりました。

いまや市内や周辺で、150軒ほどのお店が かつめしを提供。
カツも牛だけでなく豚や鳥を使ったもの、タレも店舗によって様々な味があり、
お店ごとに多様なバリエーションが楽しめます。

「タマネギやくだものが煮込まれたかつめしのタレ、本格的ね。
  わ〜、薄く叩き延ばした牛肉は、お箸で簡単に切れる柔かさ」

今では市内の学校で、給食のメニューにも採用されているんだとか。
古き良き昭和の味が、平成の人気メニューとなりました。

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市民の憩いの場、日岡山公園。
一帯は日岡山古墳群と呼ばれ、日岡御陵をはじめ、
5基の前方後円墳が分布しています。

播磨国風土記によれば、この丘が日岡山と名付けられたのは、
応神天皇が狩りをされた時に1頭の鹿が「比比」と鳴いたことから。
またこの丘の姿が子鹿がうずくまっているように見え、
「鹿子のごとし」とつぶやいたことから、
現在の加古川という地名につながっているのだそうです。

広大な敷地には、グラウンド、野球場、
プールを完備したスポーツセンターや武道館があります。

春になると、日岡山公園を鮮やかに彩るのが、およそ1000本の桜。
600メートルにわたって続く散策路が、桜色のトンネルに姿を変えて、
多くの見物客で賑わいます。

夜になると、330本もの ぼんぼりが点灯。
幻想的な夜桜見物も格別です。

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<街歩きパートの曲紹介>


加古川の町歩きと併せてお届けした曲は‥

M1‥ジュリー・ロンドン、「クライ・ミー・ア・リヴァー」
M2‥エンゲルベルト・フンパーディンク、「ラスト・ワルツ」
M3‥スコット・マッケンジー、「花のサンフランシスコ」
M4‥ポールとポーラ、「ヘイ・ポーラ」
M5‥ヘレン・シャピロ、「悲しき片想い」
そして
M6‥フィフス・ディメンション、
「輝く星座〜レット・ザ・サンシャイン・イン」でした。


<旬彩季候〜味の歳時記>

四季、時とともに移りゆく春夏秋冬。
そして、美しい気候風土から生まれる味覚。彩季
日本の旬のお話を、季節の歌とともにお届けする『旬候〜味の歳時記〜』。
今回、注目する旬は…『あさり』

中村 日本は古来より、海の幸、山の幸に恵まれています。
そして、季節の節目ごとに、ささやかな御馳走をしつらえて、
年中行事を営んできました。
私たちは、食べることによって健康を維持し、成長していきますが、
その原点は旬の食材を知り、上手に摂ることにあります。
出始めの「走り」、最盛期の「盛り」、そろそろ終わりになる「名残り」。
三つの旬は、初物を喜び、旨みを味わい、
移りゆく季節の名残りを惜しむ…という、日本人の心の表われ。
季節にそった“食の知恵”を知ることで、食生活を豊かなものにしたいですね。
今回、ご紹介する旬彩気候は、『あさり』。
石器時代の貝塚からも発見されたように日本人に馴染みの深い貝。
生産量も貝の中で1番!
海水の温度が20度前後になる時期、春や秋に産卵し、
その直前は旨みの元・グリコーゲンがグッと増えます。

名前の語源は諸説あり、
たくさん獲れることから「漁る貝」が由来だとか、
「浅り(=川の水の浅いところの意味)に住む貝」であるという説、
また、あさりの“さり”は砂利に通じて「砂の中にいる貝」という説などなど。

あさりの持つ旨みスープを生かして
酒蒸しや、味噌汁、お吸い物、浜焼き、パスタのボンゴレ、
そして江戸の下町っ子には「深川飯」もお馴染みです。
隅田川の東、江東区深川には有名な神社仏閣や様々な江戸情緒が残り、
深川八景と賞される名所。
その地名を冠した名物「深川飯」は、
本来あさりのむき身とネギを味噌で煮込み、汁と一緒にご飯にかけたもの。
江戸時代から漁師や庶民に愛されてきた味です。

  M1‥オフコース、「僕の贈りもの」
  M2‥中孝介、「旅立ちの日に」