ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

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2021.06.15

サンデー早起キネマ・番外編『グリード ファストファッション帝国の真実』

毎週おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
今回は番外編。オンエアとは別に、是非ご覧頂きたい作品を取り上げます。

SDGs(持続可能な開発目標)が社会の大きな指針となった今、ご覧頂き一緒に考えたい作品
『グリード ファストファッション帝国の真実』

人気ファストファッションブランドのTOPSHOPを擁しながら2020年に経営破綻したイギリス・アルカディアグループのオーナー フィリップ・グリーン卿をモデルにした作品です。
グリード(GREED)=強欲な富める者が貧しき者から搾取し、とめどもなく格差が拡大してきたグローバル資本主義の縮図が描かれています。

主人公は、ファスト・ファッションブランドの経営者として成功し、アパレル業界に帝国を築き上げた大富豪リチャード・マクリディ卿。しかし、彼は今、怪しい金融取引、脱税、労働搾取などの疑惑で、イギリス当局から追及されています。

物語は、そんな彼が、エーゲ海を望む美しいギリシャのリゾート地・ミコノス島で開く60歳のバースデーパーティーを巡る6日間を描いています。
パーティーのテーマは古代ローマ帝国。円形闘技場を建造し、ライオンまで駆り出す悪趣味。しかし、競技場の建設は遅れに遅れ、ライオンも猫のようにおとなしく、さらには近くの浜辺でキャンプ中のシリア難民とのイザコザなどトラブル続きです。大勢の使用人たちが奔走する中、家族や知人、リチャードの伝記を執筆する作家のニックもやってきました。リチャードの過去を知る関係者たちに取材を重ねたニックは、リチャードが南アジアの縫製工場で働く女性たちを不当な低賃金で酷使している事実を突き止め、複雑な思いです。そんなニックが心を通わせたスリランカ出身のアマンダも傲慢極まりないリチャードの下で働きながら、ある深刻なジレンマに陥っていました。
その後もパーティーの準備は迷走し続けます。招待した各界の大物セレブのキャンセルが相次ぎ、大急ぎでそっくりさんを調達する秘書…。
果たして、悪趣味なまでに贅を尽くしたパーティーは無事開催されるのでしょうか?
そしてその当日、運命の扉が開かれます!

監督は、イギリスの名匠マイケル・ウィンターボトム。オリジナル脚本も執筆し、ファストファッション業界のダークサイドに鋭く切り込みました。「この作品のテーマは不平等性だ」と監督はいいます。「過去30年間、自由市場原理主義は不平等性のもとに機能してきた。マクリディが恩恵を受けてきたやり方が、一方では大きな不平等性を生み出してきたんだ」と。つまり、マクリディはこれまでの時代を象徴しているのです。どうやって市場が機能するようになり、どのように世界が変化し、資本主義が変わり、グローバル化が世界を変えていったのか、マクリディを観れば一目瞭然です。
その資本主義の申し子、帝国を築いたリチャード・マクリディを演じたのは、スティーヴ・クーガン。“強欲資本主義が生んだ怪物”のパワフルさとカリスマ性が見事に体現されていました。セレブの象徴であるこんがり日焼けした肌と真っ白な歯がリチャードのギラギラした側面を際立たせていて妙な感じです。

高いブランドの服を買いまくったバブル期から、おしゃれでリーズナブルなファストファッションに移行してきた私たちの日常。「安いから、まぁいいか」とそれほど欲しくなくても買ってしまうことはないでしょうか?その“安い服”を作るために、どれだけ大量の水が使われ、どれだけ大量の二酸化炭素が排出されるのか、そして、どれだけ多くの途上国の人たちが低賃金で過酷な労働を強いられているのか…この作品を観ると、これから自分がファッションとどのように向き合っていかなければならないのか、そして“対価”について真剣に考えるようになります。
ファッションだけではありません。「誰かを何かを犠牲にして成り立つ世の中はおかしい」と、どうして今まで気づかなかったのか…そう考える人が増えるほど、搾取により築かれた極一部の人たちの帝国が揺らぐ音が、だんだん大きくなっていくのではないでしょうか?

『グリード ファストファッション帝国の真実』

6月18日(金)より、TOHOシネマズ シャンテ他にて全国ロードショー

公式サイト:http://greed-japan.com/

監督&脚本:マイケル・ウィンターボトム
出演:スティーヴ・クーガン、アイラ・フィッシャー、シャーリー・ヘンダーソン、エイサ・バターフィールド
2019/イギリス/英語/カラー/シネスコ/5.1ch/104分 原題:GREED 映倫:PG12
配給:ツイン
Ⓒ2019 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. AND CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION

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      ひろたみゆ紀

      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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