あなたの家には、どんな「昭和の記憶」が残っていますか?
家にある「昭和の記憶」。例えば、写真。今はみんなスマホで撮りまくっていますが、昭和は「フィルム」。僕も中学・高校の時はよく撮りましたよ。いざ写真を現像すると、何じゃこりゃ!という失敗写真だらけ!?目が赤くなっていたりして…
あと昭和と言えば、VHSのビデオ。中身の分からないビデオテープ山ほどあるでしょ?中身を観たいけど、肝心のビデオデッキが無くて見られない!そして、「ビデオテープ」が登場する前、昭和30年代から50年代頃は、「8ミリフィルム」が全盛期でした。さすがに「8ミリフィルム」が今も残っている家庭は、そう多くないと思います。
そんな「家庭の押し入れに眠っている8ミリフィルム」を市民から募集!それを使った映画プロジェクトを、茨城県笠間市が進めています。
その名も「カサマノシネマ」!果たしてどんな映画が出来るのか?
この映画の製作・監督をされている三好大輔さんにお話しを伺います。
晴の輔 笠間市の市民の家庭に眠っている8ミリフィルム。それで映画を作る。何がきっかけだったのですか?
三好「この活動は、もう10年やっております。『8ミリフィルムを集めて映画を作るという地域映画というのを笠間でやりたい!』という要望をいただき、地元の大学生が中心となって、進めております。」
晴の輔 どれくらい集まったのですか?
三好「108本集まりました。」
晴の輔 このきっかけが無かったら、一生眠ったままだったのが山とある。どのような映像が残っていたのですか?
三好「昭和30年代、40年代、50年代が中心で、『子どもたちの運動会』『七五三』中には『笠間稲荷に奉納するしめ縄作りをする様子』などもありました。」
晴の輔 色々な匂いも感じられそうです。
三好「(笑)ぷんぷんと。活気のある時代を観ることによって、時代の再確認をして元気になっていただきたいし、今の若い子に参加してもらい、『こういう時代』があったことを知って欲しいのですね。」
晴の輔 それではバリバリ平成生まれの子たちは、8ミリフィルムを観たら、どのような感想なのでしょう。
三好「全く自分たちの知らない時代の映像なのですけど、映写機にかけて観てみると『涙する子』がいたりします。僕自身も、この活動をするきっかけというのは『友だちの結婚式ビデオ』を頼まれたことなのです。生い立ちを写真で綴っていくではないですか。『その中で使えたら使って』と8ミリフィルムを渡されて、観た時に涙が止まらなかったのです。」
三好「8ミリフィルムで撮っている人の『まなざし』がダイレクトに感じられるメディアだと思っています。テクニックや構図ではない、撮影するお父さんの『娘の姿を残したい』というその想いだけで撮っていて、その『想い』がビンビンに伝わってくるのですね。」
晴の輔 なるほど、今お話しを聞いていて、今の世代の子たちって「撮りなれて」いるし「撮られなれて」います。プロに近い技術も素人が持っていたりもします。だけど、その頃は「愛情」でその姿を残したい!そこがストレートに出ている!
三好「例えば『お祭りの風景を残したい』という方ですと、祭りや街に対する想いが、ダイレクトに8ミリフィルムに焼き付いているのです。」
晴の輔 8ミリフィルムを提供してくれた市民の方は、自分でもうご覧になっているのですか?
三好「デジタル化したデータを提供者さんの家まで持って行き、映像を見ながら大学生がインタビューします。」
晴の輔 何十年ぶりかで、8ミリフィルムを観る姿も撮影している。
三好「その瞬間も記録しています。」
晴の輔 それ面白そうですね。
三好「そうなんですよ。カメラが回っていようと、大学生がいようと、家族だけの空気になるのですね。映像を通じて一瞬にして、『繋がりなおす』といいますか『改めて自分たちの絆を確認し直す』。そんなところも映画の魅力となっております。」
晴の輔 この映画はどこで観ることが出来るのでしょう。
三好「完成上映会は3月22日、笠間市立笠間公民館・大ホールで無料上映いたします。」
晴の輔 出身ではないですけど、お話し伺っていると「観たい」ですね。
三好「是非!」
「どっちだ!?晴の輔」
毎週スタッフから二者択一のお題が出ます。私がそれを選ぶというコーナーです。
「晴の輔さんの家にある、“晴の輔さんの昔の映像”を映画にするなら?
『今までの出演番組をつないで映画にする』 それとも 『落語をやっている映像をつないで映画にする』 どっちだ!?晴の輔」
「落語をやっている映像」をつないでもね…それは落語でしょ。
決めました!
「今までの出演番組をつないで映画にする」
というか俺ね、初めてテレビに出たのが、NHKためしてガッテンのレポーター。取材でメキシコに行ったの(笑)。あとは歴史番組のレポーターもやったけど、映画にするほどの量はないからなあ…何か付け足さないとねえ。付け足す…
今日は、「茨城県笠間市が映画を製作!素材は市民の押し入れに眠っていた昭和の8ミリフィルム!?」というトピックスでお届けしました。笠間市は僕の地元ではないのに、その映画が見たくてたまらない!3月22日スケジュール空いているかなあ。いい試みです。あなたの家の押し入れにも8ミリフィルムという「街の財産」が眠っているかもしれません。是非探してみてください。
そんな「カサマノシネマ」に
それでは、次回もお会いしましょう。立川晴の輔でした。
-WEB版こぼれ話し1-
晴の輔 ちなみに監督はおいくつですか?
三好「48歳です。72年の子年生まれです。」
晴の輔 僕も72年の子年です。同級生でしたね。監督も観たことのない映像ですよね?我々は8ミリフィルムの世代ではないですよね。
三好「僕らが小学生だった頃には、クラスに一人ぐらいは親御さんが8ミリフィルムを回していたかな…というぐらいですかね。」
晴の輔 ぐらいですね。
三好「中学・高校の頃になると、ビデオが出現、ビデオテープで映像を残されている家庭がちらほらと出てまいりました。」
晴の輔 監督でも「観たことのないような」景色がいっぱいあったりするのですか?
三好「その土地の性格が、8ミリフィルムを通じて凄く出てまいります。」
晴の輔 なるほど。昭和と今で、笠間市が変わっているところは?
三好「圧倒的に、昭和は『子どもたちが多い』というのが一番感じるところで、お祭りなどでは『今の5倍はいる』と撮影されていた方から伺いました。街の活気が全く違います。」
晴の輔 今のお祭りは、子どもよりも大人の方が多いですからね。そんな現実も見えてくるのですね。その時代の風景・情景を見ると、現代の見方が変わってくるかもしれません。
三好「自分たちの『親世代』『おじいちゃん・おばあちゃん世代』がやってきたことが、時間軸がある8ミリフィルムと共に、『当時の空気』をそのまま伝えることができる映画ですので、体験していただきたいと思います。」
-WEB版こぼれ話し2-
三好「皆さん、『そんな8ミリフィルムなんて』とおっしゃっています。」
晴の輔 持っている方にすれば、自分たちの記録ですからね。「お役には立てません」ぐらいの感覚なのでしょうか。
三好「そうですね。ただ個人が記録したフィルムには凄く『地域の性格』を現したものや、『当時の文化・風習』を克明に記録したものがたくさんあるので、40年50年経った今、見返すことによって『新たな価値』が生まれたり、見た人が『元気になったり』、『昔を思い出したり』といったような時間を作り出すことができるのが、8ミリフィルムの魅力です。プロが撮る『お祭り』は式次第に則ったお題目を丁寧に撮影します。でもホームムービーは家族と一緒にお祭りに行く過程で、『屋台で何かを食べる』、など記録としては『無駄』と思われるようなことがたくさん映り込んでいます。そこにこそ『当時のリアルな空気』が写されていて、共感されるのではと思います。」
晴の輔 素晴らしい企画ですよね。「眠っているもの」も宝になる。
三好「ただフィルムの劣化や、高齢になられてフィルムの保存場所が分からないなど散逸の危機的な状況です。フィルムの保存は個人では難しくなっていますので、地域で守るという仕組みを、作らなければいけないと感じています。」
晴の輔 ぎりぎりのラインですか。
三好「そうですね。もう見られなくなってしまったフィルムもたくさんありました。一本のフィルムに映されているのは、そこにしかない貴重な記録なので、残すためには『今、動かないと』もう一生観ることが出来ません。」
晴の輔 ある意味「遺跡の発掘作業」と同じ。
三好「全国で眠ったままの、価値あるフィルムは必ずあるので、掘り起こして地域で楽しむ仕組みを広げたいと思います。」
晴の輔 地域で押し入れの整理って感じですかね。
三好「大事な活動だと思います。YouTubeでも『カサマノシネマ』のダイジェスト映像が見られますので、そちらでも楽しんでいただきつつ、興味があったら足を運んでいただきたいです。」
【三好大輔プロフィール】
プロデューサー・地域映画監督
大学卒業後、音楽チャンネル、広告制作会社で映像制作、デザインを学び独立。
2008年より東京藝術大学デザイン科非常勤講師を務める。
地域に眠る8mmフィルムを掘り起こし、市民と協働する地域映画づくりをはじめ、全国にその活動を広める。
2011年安曇野に移住。2015年、映像制作会社株式会社アルプスピクチャーズ設立。
2020年より松本の築150年の古民家に拠点とする。
東京藝術大学大学院専門研究員
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