石川県輪島市で、江戸時代から続く「輪島塗」の塗師屋で、漆器の製造販売をおこなっている「山崖松花堂」。このお店の十七代目となる兄弟お二人が共同代表で、100% 国産の漆でつくる『芯漆』という独自の技法を生み出し、アート作品と呼べる器や像を作っていらっしゃいます。
今回お話しをうかがったのは、山崖松堂さん。
一般的な漆器は、木地と呼ばれる木材の上に漆を重ねますが、『芯漆』はその名前の通り“芯”から表面まで全て“漆”で作られています。この技法を考えられたキッカケは、漆器の修理を依頼されることがなくならないことでした。
お椀やお重など、普段使いしている漆器も作り上げるまで一年を超える長い月日を要します。そんな手間をかけて作った漆器も、塗りが剥がれたり割れたりして修理をしなければならなくなる…そこで、「修理をしなくてすむ漆器が作れたら」という思いが『芯漆』という技法に行きつきました。
「月日を経ることで透明感が増す漆の最大の特徴は“変光性”。プリズムの様に、ある部分は光を吸収し別の部分は反射します。そのために、光の当たり方や見方で違った美しさを楽しめるんです。」と、教えてくださいました。そして、漆の分子構造は琥珀に似ていてとても耐久性に優れています。気温や湿度の変化に強く、酸やアルカリにも腐食されることなくその美しさを保つことが出来るのだそうです。
『芯漆』は、例えば「ぐい呑み」のような小さな器でも、出来上がるまで七、八年ほど…途方もない時間がかかります。それでも、その独特の輝きや感触が一千年も二千年も維持できる…世界中、どんな環境にあってもその美しさは変わらない……と考えると、そこに注がれる時間と情熱の大きさにも納得がいきます。
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