東京都立農業高等学校 校長の並川直人さんが登場。
今の農業高校におけるデジタル化への対応と実際、
農業を志す若い人にスマート農業などの先端技術
そして、地域との連携した様々な取り組みについて伺いました。
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梅じゃむ、林檎じゃむ → 全日制食品科学科生徒の実習生産品
「果樹」の授業でのブドウの栽培管理実習
「野菜」の授業でのミニトマトの栽培管理実習
緑地計画科3年生による卒業制作の庭園です。(令和7年度作品)
昨年の卒業庭園の作品
農業高校とは
農業高校と一口に言っても、
農業単独校から家庭科との併置校、
総合学科の中に農業系列を置く学校まで幅広く、
全国では369校、約7万2000人の生徒が学んでいる。
ただ全国の高校生全体から見ると、
農業に関する学習をしているのはわずか2〜3%ほど。
東京都でも農業系学科を持つ都立高校は8校に限られ、
生徒数も1、909人と決して多くはない。
東京都では園芸系・食品系・環境系・畜産動物系の4つに分類。
東京都立農業高等学校では、園芸系の都市園芸科、
食品系の食品科学科、環境系の緑地計画科が設置されている。
自分は19年間、食品科学を中心に教えてきた。
専門科目は全体の3分の1で、残りは普通教科だが、
この基盤学力が実はとても大事。
専門科目の内容は決まっているが、
自分はその過程で様々なことを
生徒に伝えていきたいと思ってやってきた。。
農業というと耕す、育てるといったイメージが強いが、
食品製造や流通、環境保全、地域振興まで
幅広く教えている。
農業高校のデジタル化
実際の農業と同じように農業高校でもデジタル化が加速している
気候変動で毎年の栽培条件が大きく変わる中、
経験だけに頼る農業には限界がある。
これからはデータに基づく精密農業への転換が鍵になる。
若い世代が先端技術を使うことで、農業に参入しやすくもなり、
データを経験値の代わりに活用できるようになるのは大きい。
例えばトマトの色づきに関わるリコピン生成は
積算温度1000〜1100度が必要で、
気象センサーのデータを読み解けば収穫時期の予測もできる。
こうした知識を教えるためには、自分たち教員も
学び続けなければならない。
生徒たちはデータの見える化などに慣れるのが早く、
クラウド上の情報を読み解いてグラフ化していく姿を見ると頼もしい。
一方で、自然や生き物を相手にする農業では
リアルな経験が欠かせない。
スマート農業と実習のバランスをうまくとることで、
科学的根拠に基づいた課題解決や新たな価値創造していく
ことができる可能性が大きいと思っている。
農業高校と地域との連携
農業高校は、地域と関わる機会がとても多い。
本校でも府中・調布・小金井の3自治体と相互協定を結び、
特に府中市とは「ケヤキ並木の保護更新プロジェクト」
に取り組んでいる。
緑地計画科の生徒が種から苗を育て、それを並木へ植樹したり、
落ち葉を堆肥にして戻すなど、
地域の自然環境を守る活動をしている。
また、武蔵府中郵便局の花壇を都市園芸科の草花で彩る
活動も続けており、通行の方から「いつも楽しみにしています」と
声をかけてもらう瞬間、生徒は自分の学びが
地域の役に立っていると実感し、自己肯定感が育っていく。
毎年11月には地域との交流を図る「農高祭」を開催。
これは最大のアウトプットの機会で、毎年4000人近くが来場。
来校者は様々な体験をすることができる。
都市園芸科の野菜や草花、食品科学科のジャムやクッキー、
味噌の販売もあり、梅や柑橘の果実を都市園芸科が育て、
食品科学科が加工するという学科連携もおこなわれている。
生徒は販売を通して商品の評価を直接受け止め、
改善に結びつけていく。
ジャムのラベルも自分たちでデザインし、アンケートをもとに
ブラッシュアップするなど、ブランディングの視点も学んでいる。
農業というと栽培のイメージが強いが、
実際には環境・食品・流通・加工まで裾野は広い。
6次産業化まで見据えた取り組みが授業でもおこなわれている。
農業高校で教える、ということ
自分が農業系高校で教員になったのは、
大学で学んだ栄養生化学の知識を活かし、
食品や健康の分野で活躍できる人材を育てたいと思ったから。
農業は守備範囲が広く、変化も激しい。
その中で生徒を導くためには、先生自身が積極的に
新しい技術や知識を学び続けることが欠かせない。
自分がGAP指導員の資格を取得したのもその一つだ。
東京オリンピック・パラリンピックでは
食材調達にGAP認証が必須となり、
本校でも選手村に食材を届けたいという気持ちが高まった。
学校全体でGAPに取り組む必要があり、
その流れを牽引するため、自ら資格を取った。
学校には「GAPをする」と「GAPを取る」という考え方があるが、
すべての生徒に身につけてほしいのは前者。
整理整頓やリスク評価、品質管理の記録、
労働安全といったGAPの理念は、
どんな分野に進んでも必ず役立つ基本的な力になる。
実際、本校の生徒が育てた作物が選手村で提供され、
自分たちの学びが世界の舞台につながった経験は、
大きな自己有用感をもたらしたはず。
これからの農業高校
学校運営の軸として「SDGs」「STEAM」
「データサイエンス」「エシカル」の4つを掲げている。
「SDGs」は農業高校においては多くの項目と密接に関係している。
「STEAM」では学科連携が進み、分野横断の学びが広がる。
「データサイエンス」は勘と経験の農業から
データ駆動型のスマート農業へ転換する中で必要な基礎力。
「エシカル」は消費やファッションなど価値観全般に関わり、
これからの社会で欠かせない視点でもある。
自分が大切にしているのは、生徒の創造した夢を
実現できる「第一志望実現率」。
学び続ける力、正解のない問いに向き合う力、
新しい価値を創造していく力を得られるよう指導している。
東京の農業高校は都市型農業教育。
農業はウェルビーイングとも大きく関係していて
緑を創り守る力を持つ人材を育てることも使命。
そして地域や社会の課題を捉え、取り組んでいくことも
農業高校の意義ではないかと思っている
世の中のために役立つ仕事をしていくような
タフでしなやかな生徒を育てていきたい。

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