2019年02月28日

見せる警備とインバウンド

 先週は一週間のお休みをいただきました。その間、コメンテーターの方々をスペシャルパーソナリティにCozy Up!をお送りしました。新行アナウンサーもとてもとても頑張ってくれていました。ポッドキャスト、YouTubeではまだまだ聞くことができますので、ぜひお聞きください。詳しくは番組ホームページまで。

 さて、私はお休みの間にトルコ・イスタンブールに行ってきました。イスタンブールといえば、東西の文化の結節点。かつては東ローマ帝国の首都として、時代が下るとオスマントルコ帝国の首都として繁栄を謳歌しました。その積み重なった歴史を感じられる名所がいくつもある、世界有数の観光都市でもあります。
 しかしながら、近年は政情不安定な中東に隣接していることもあり、テロの脅威にも直面しています。2016年には、1月に旧市街の観光地スルタンアフメット広場で爆弾テロが発生。外国人観光客10人が死亡しています。

<トルコの最大都市、イスタンブールの中心部にある観光地区で12日、自爆攻撃があり、少なくとも10人が死亡した。現時点で犯行声明は出ていないが、ダウトオール首相は、過激派組織「イスラム国」の犯行と主張した。>

さらに、イスタンブールのアタチュルク国際空港でも同じ年の6月、襲撃事件が発生し、実行犯3人を含む48人が死亡しました。

<トルコ最大の都市、イスタンブールのアタチュルク国際空港で28日夜(日本時間29日早朝)、爆発と銃撃があり、少なくとも36人が死亡、140人以上が負傷した。トルコ当局によると、3人の襲撃犯は空港入り口近くで発砲し始め、警察の銃撃を受けた後、自爆死した。>

 こうした一連の出来事で観光客は激減。2016年の観光客は前年比25%減でリーマンショック直後の2008年の水準まで落ち込んでしまいました。
 そこで、当局は様々な対策に手を打ちます。この2016年に早速、観光の安全を専門にするツーリストポリスを創設。警備の「見える化」を相当強化したということです。たしかに、一大観光地のスルタンアフメットジャーミィ(ブルーモスク)、アヤ・ソフィアの前にも装甲車が配置されていたり軽機関銃で武装した警察官が巡回していたりと見える形での警備が行われていましたし、各博物館やバザール、地下鉄などの交通機関の入り口では空港と同じような手荷物検査を行っていました。そこにもツーリストポリスが配置されていましたから、これも警備の見える化の一環でしょう。

ISTツーリストポリス.JPG

 日本で同じように銃をむき出しにしての警備をすると、国内から「物々しい!」「軍靴の響きが聞こえる!」といった批判が出そうなものですが、観光を一大産業ととらえている国々はむしろ、こうした見える化によって観光客の安心を担保する方がよどほ重要と考えているようです。これは、以前イスラエルを旅した時にも感じました。インバウンド(訪日観光客)を成長戦略の一環に掲げている以上、我が国も他人事ではありません。その意味で、一歩前進なのかな?というニュースがこちらです。

<JR西日本の来島達夫社長(64)は26日までに共同通信のインタビューに応じ、乗客の手荷物検査について「限られた時間とスペースという条件の中で、実施を考えたい」と意欲を示した。新幹線や関西空港直通の特急などが念頭にあるという。>

 私自身はかねてから、せめて新幹線には手荷物検査を導入するべきだと思い、放送でもそう話して来ました。過密なダイヤの東海道新幹線ではそうしたことは難しいという反論が必ずあり、また手荷物検査をしたところでテロを防ぐことは出来ないという批判も一方では起こっていて、結果として不幸な車内での事件が起ころうとも現状維持が続いてきたわけですが、ようやく動き出したかという思いです。JR西日本の本社もある大阪、近畿圏は今年G20の首脳会合や、2025年には万博も予定されているということで訪日外国人旅行者も増えることが見込まれます。そうしたこともあって、他の都市圏の各社よりも身に差し迫った課題として交通インフラの安全というものが意識された結果なのでしょうか。この英断は評価されるべきものなのだろうと思います。

 それに加えて、世界レベルと同等の見せる警備、軽機関銃等を携行しての警備も議論される時期にあるのではないでしょうか。これだけグローバル化が礼賛されているのに(あまりグローバルグローバル言い過ぎるのも疑問なのですが...)、なぜか安全に関してだけが日本スタンダードのまま残っています。他でグローバルを叫ぶのであれば、安全の分野こそきちんとグローバル化しなくてはいけません。多言語表記やWifi整備もいいですが、安全が担保されるのが大前提だと私は思うのですが...。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

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