今週のOK!Cozy Up!は、『激動の平成にスクープアップ!』と題して、経済界の個性溢れる社長たちのインタビューをお送りしました。月曜と火曜がジャパネットたかた創業者の高田明さん。水曜と木曜が崎陽軒社長の野並直文さん。そして金曜日が築地銀だこを展開するホットランドの社長、佐瀬守男さんです。いずれも非常に興味深いお話を聞くことができました。この様子は、radikoタイムフリー、ポッドキャスト、YouTubeで配信しています。詳しくは番組ホームページをご覧ください。
高田さんや佐瀬さんには叩き上げの経営者の凄みを感じましたね。お二人とも物腰も柔らかで話し方も丁寧なのですが、言葉の力強さ、そしてふとした間に「お前次なに聞いてくるんだ?ちゃんとした質問しろよ?」と言うかのようなオーラを出すんですね。ただ私が気圧されていただけなのかもしれませんが・・・。
また、野並さんは崎陽軒の三代目。こちらは先代、先々代が守ってきた看板を受け継ぎ、守っていくという別の形のプレッシャーが重く肩にのしかかっていました。ある意味、家業なのですから仕事への理解と情熱は誰よりもある。それをどうやって社内に浸透させるのか?特に食品という、直接お客様の口に入るものを扱っている以上、品質だけでなくその理念もしっかりと従業員に浸透させなくてはモラルハザードが起きてしまいます。そこで作り出した経営理念は、以外にも否定形から入るというものでした。
ナショナルブランドとして全国展開するのではなく、あえてローカルブランドに徹する。広げるのは簡単でも、我慢してそこに居続けるというのがどれ程大変なことか。安易に一時の利益拡大に走らずに地に足のついた経営をするというのは、オーナー企業の強みの1つであるのかもしれません。
この経営理念の浸透は、経営トップにとって共通の課題。高田さんともインタビュー中にそんな話題になりましたが、横にいたジャパネットの社員さんに「言えるか?」と抜き打ちテストをいきなり始めてしまいました。高田さんは、
「どんな立派な理念があっても、従業員に浸透しなかったら意味がない。こういったものはすぐに形骸化してしまう。書くだけではダメ」
と、朝礼の時やこうした抜き打ちテストなど、折に触れて社員が経営理念に触れる仕組みを作ることに腐心したそうです。このことは、今社長をされているJリーグのVファーレン長崎でも続けているといいます。あなたは、自分の会社の経営理念、言えますか?私は・・・、全くダメですね(笑)
さて、今回の社長インタビューは消費者にもっとも近い分野の企業トップが揃いました。その中でも食品はまさに生活に密着するもの。ということで、消費増税の影響をどう見るかも聞いてみたんですね。
すると、実は正反対の反応が返ってきました。築地銀だこの佐瀬社長は「参った」。一方、崎陽軒の野並社長は「今回はさほど影響ない」。なぜこの違いが出たのか、そこには軽減税率の扱いが絡んでいました。崎陽軒はそのビジネスモデルからして、持ち帰りオンリーの業態です。ですから、無条件で軽減税率適用となり、値段を変える必要はありません。一方、銀だこの方はイートインなのかテイクアウトなのか、どちらの需要も大きいだけにどう判断していいものか非常に迷うところ。この辺の判断の複雑さは軽減税率の議論が始まった頃からこのブログや番組で議論していますが、現場の苦労はことほど左様に尋常なものではありません。そして、小売り大手各社はこんな、ある種乱暴な対応を検討しているようです。
<2019年10月の消費増税と同時に導入される軽減税率をめぐり、外食大手の対応が割れる可能性が出てきた。日本経済新聞社が実施したアンケートで、同一商品でも税率が異なる店内飲食と持ち帰りの扱いを聞いたところ、回答企業の4割が同一価格で提供を検討していると答えた。>
外食の10%税率の時の税込み価格に内食の方も合わせるということだそうです。これならきちんと消費税を転嫁できるので企業は損をせずに済みますが、消費者からすると消費税アップで苦しい上に、持ち帰りで少しでも負担を軽くしようという努力も許されなくなるということになります。いくら現場のオペレーションが煩雑になるとはいえ、そもそもこんなことが可能なのは大手だけでしょう。
私はもともと、消費税増税そのものがこのタイミングではおかしいと思っていますし、その負担軽減策としての軽減税率は本来救済すべき人々以外の富裕層にまで恩恵が及ぶ時点で愚策であると思っています。が、この大手小売りの軽減税率対策は、現場従業員の負担軽減を差し引いても、軽減税率をも上回る天下の大愚策といっても過言ではないと考えます。
というのも、これ、消費増税で経済が冷え込み、軽減税率で財務省もちょっと税収を損するのですが、その損をした分が消費者に帰るならまだしも、企業が自分達の利益にしてしまおうということですからね。
「一将功成りて万骨枯る」ではありませんが、企業のみが利益を維持拡大させ、その分経済全体が冷え込む上に大して財政再建に資することもない。
まぁ、私企業の判断ですから、我々にはそれを止めるすべを持ち合わせていませんが、企業も社会の一員である以上、その責任というか、自分達が良ければいいの部分最適ではなく、マクロ的な全体最適から判断をすることは出来ないのでしょうか?今回インタビューした3人の社長は揃って、企業は社会の一員であることを強調していました。
最後に、松下幸之助の考えた「企業の社会的責任」という3つのポイントを紹介して本稿を閉じたいと思います。
<1.企業の本来の事業を通じて、社会生活の向上、人びとの幸せに貢献していくこと。
2.その事業活動から適正な利益を生み出し、それをいろいろなかたちで国家社会に還元していくこと。
3.そうした企業の活動の過程が、社会と調和したものでなくてはならないこと。>