2018年06月15日

世界中からのメディアを捌くには...

 史上初の米朝首脳会談が終わりました。歴史的と称された今回の会談。今回私はこの会談を取材しにシンガポールを訪れました。会談そのものや、その後署名された共同声明、さらにトランプ大統領の記者会見については各コメンテーターの方々それぞれに見解が分かれ、非常に興味深かったですね。当日の取材と放送はジャーナリストの有本香さんと、翌朝は有本さんと国際政治アナリストの藤井厳喜さんにお話いただき、木曜日は自民党参議院議員の青山?晴さん、そして今朝は外交評論家の宮家邦彦さんに見解を伺いました。その模様はradikoのタイムフリーやPodcast、YouTubeで聞くことができます。ぜひ、番組ホームページからアクセスしてください。
radikoのタイムフリーは放送後1週間で聞けなくなります。お早めに!

 さて、今回の取材で私はすべて、プレスセンターの巨大なモニター越しに見ることになりました。これは、今回の歴史的な会談を取材に訪れた2500人あまりの報道陣の大半が同じ扱いを受けました。それだけ巨大なプレスセンターを、今回の開催国シンガポールはわずか2週間あまりで整えたそうです。2500人の報道陣の8割が外国から。ということで、現地に拠点を持たない報道陣向けにこのプレスセンターは24時間オープンで、ネットのアクセスも完備。別途料金を支払えば生中継も出来るよう回線も用意し、放送用のブースも用意しました。さらに、報道陣向けの食堂にはシンガポールのローカルフードや洋食、カレーなどなど15ジャンル45種類の料理をバイキング形式で食べられ、飲み物も豊富と至れり尽くせり。そんなプレスセンターの総面積は23000平方フィート(およそ2140平米)あり、世界中から報道陣が集まっても狭い感じは全くしませんでした。

米朝プレスセンター2.JPG
プレスセンターの様子

 なぜこの広さ、これだけの規模のプレスセンターをわずか2週間で用意できたのかといえば、このプレスセンター、もともとF1シンガポールグランプリのピット用に作られた建物を使っています。F1も世界中からメディアが集まる大イベント。その時にメディアを収容し、情報提供する建物ですから、メディアの人員を収容するだけの広さも、放送用の音声も映像も、ネット環境もすでに整っていたわけですね。やはり世界中からメディアの集まる大イベントなだけに、ノウハウとともに建物や回線といったインフラを用意しないことには話にならないということを実感しました。

 そこで思ったのが2020年の東京オリンピック・パラリンピック。こちらも世界中からメディアが集まる大イベントですが、東京には常設でそこまでのメディアセンターはありません。ということで仮設で作るわけですが、今のところそれをお台場にある東京ビッグサイトに作ることになっています。ビッグサイトのウェブサイトを見ると、ほとんど毎日何かに使われているという超多忙な展示会会場、東京ビッグサイト。ここを2020年には長期間押さえてしまうので、その分毎年やってきた展示会を他の場所に移したり、他の日程に移したりしなくてはなりません。

 これに危機感を抱いているのが、中小企業経営者や展示会ビジネスに関わる人たち。先日、日本展示会協会(日展協)の意見交換会の取材に行ってきましたが、中小企業の方々は危機感を訴えていました。中小企業には十分な販売網や広告宣伝費がないので、何万人ものバイヤーが訪れ、商談をする展示会というのは重要な販売の場なのですね。
 たしかに、私の父親も中小の商社に勤めていて包装用の機械などを売っていましたが、展示会の時には気合が入っていた覚えがありますね。当時はビッグサイトもまだなく、晴海にあった見本市会場に私も母親に手を引かれて遊びに行った思い出があります。
 展示会が一度中止になるぐらいで影響は大してないだろう。オリンピック・パラリンピックはそうそうないのだから協力すべきだ。そんな風に思うかもしれません。ところが、準備期間も含めると20か月間東京ビッグサイトを使えなくなり、その間に大変な損失が出る可能性があるとの指摘があるのです。オリンピック・パラリンピックを誘致した東京都もまったく手を打っていないわけではなく、大体の仮設展示会場を用意したり、新たな展示棟を建設したりもしていますが、コアとなる2020年の5月~9月はほとんどの展示棟が使用不能となりますから、影響は大きくなると指摘しています。

 常設のメディアセンターまでは必要ないと思いますが、日本経済を支えているのは中小企業というのも頷けるところ。組織委員会は日展協に対し、IOCに提出した実施企画書にメディアセンターは東京ビッグサイトと書いてあるので今更変えられないとも説明しているようですが、メディア側からすれば本番まで2年前の今の段階での変更は十分に対応可能でしょう。今回の討論会では大きなテントのような仮設施設をリーズナブルに作るなどのアイディアも出されました。この間の議論にメディアサイドは全く入っていませんが、ユーザー側代表も交えて何とか落としどころを見つけてもらいたいと思います。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
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