今週「ついていけない」というテーマでメールお葉書を募集しましたが、まさにこの話には「ついていけない」方が多いかもと思ったのが、朗読のコーナー「あけの語り人」で紹介した「電線絵画」展でした。
電信柱(明治時代は通信のための線でした。だから電信柱)、電柱、電線が登場する絵画を、練馬区立美術館の学芸員の加藤陽介さんが日本全国から集めた企画展なのです。
この実に「タモリ倶楽部」的な展示が(ちなみに「タモリ俱楽部」ではマイ電柱を建てるという企画がありましたぁ!)果たして皆さんに興味を持ってもらえるのか。「つていけないよぉ」で終わってしまうのでないかと少々不安になりました。
しかしそれは杞憂だったようでチケットプレゼントにはたくさんの応募があり、中には早速行って来ましたという方も。
また電柱や電信柱に関するメールや、練馬区立美術館の最寄り駅の西武池袋線中村橋駅の思い出までも届いたので、次回のメールテーマは「中村橋」もしくは「電柱」にしようかと思ったほどです。
学生時代、家族と中村橋駅近くの物件を見に行った記憶があります。残念ながら手狭だったり日当たりが悪かったりしたためにそこに住むことはなく、代わりに父と母は緑が豊かな大船の観音様の裏手の坂の上に家を購入しました。
しかし池袋の大学に通い始めた私は、遠すぎると家を出て、小田急線参宮橋駅近くの月16000円風呂なし共同トイレの古いアパーで一人暮らしを始めました。
ニッポン放送に入社しても2年ほどはそこから出勤していました(宿直前に入る銭湯の一番風呂がなつかしい…)。
この「宝荘」というアパートがあった場所は、大正時代に付近に住んでした「麗子像」で有名な画家の岸田劉生が、名作「切通之写生」で描いた坂の横であったことを学生時代に知ります。
(赤土の坂道を横切る線は電柱の影 「電線絵画展」図録より)
しかも「代々木附近の赤土風景」という作品で、別の角度からこの切通しを描き、正面に見える崖のようなところはまさに「宝荘」が建っている場所だったと気が付きます。
後の参宮橋付近を描いたこの作品をいつかこの目で見たいと思っていたのですが(『切通之写生』は以前東京国立近代美術館で見ました)、なんと今回中村橋の練馬区立美術館で出会うことが出来ました。
(先ほどの電柱が真ん中に 「電線絵画展」図録より)
長い年月をかけて岸田劉生の作品を「参宮橋」と「中村橋」という二つの「橋」、そして「電線絵画」が見事に結びつけてくれたのでした。
これもひとえに岸田劉生がその多くの作品の中に近代化の象徴であった電柱を描き込んでくれていたからなのでした。
今回の「電線絵画」展を企画して下さった練馬区立美術館学芸員の加藤陽介さんに心から感謝を申し上げます。

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