ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

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2024.09.22

サンデー早起キネマ『西湖畔(せいこはん)に生きる』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
9/22は、犯罪を通して現代社会の闇を描いた3本をご紹介します。

2本目は、中国杭州市、西湖のほとりを舞台に違法ビジネスの地獄から母を救おうとする息子の物語
『西湖畔(せいこはん)に生きる』

デビュー作『春江水暖〜しゅんこうすいだん』で世界に注⽬された中国のグー・シャオガン監督の二作目は、さらにスケールアップし、挑戦を極めた「山水映画」第二巻です。
「山水映画」とは、中国の伝統的な風景画である「山水画」の哲学の世界を映画で表現しようと
グー・シャオガン監督が追求しているもの。
取り上げたストーリーは、釈迦の十大弟子のひとりである目連が地獄に堕ちた母親を救う仏教故事「目連救母」をヒントに、現代の物語として書き上げたオリジナルです。

舞台は、前作と同じ、監督が生まれ育ち今も暮らす杭州市。
最高峰の中国茶・⿓井茶の生産地である西湖のほとりに住む母タイホアと息子ムーリエン。
10年前に家をでた父は行方知れずで、タイホアは山の美しい茶畑で茶摘みをして、ひとり息子を育て上げました。
大学卒業を迎えるムーリエンは、やっとのことで詐欺まがいの仕事に就きますが、長続きしません。
一方、タイホアもあることがきっかけで茶畑を追い出されてしまいます。そして、一緒に飛び出した仲間に誘われ、彼女の弟が大儲けしているというバタフライ社の集会にいくことに。そこでは疲れがとれるという怪しげな“足裏シート”を販売していましたが、その実態はマルチ商法だったのです。
息子を立派に育てるお金が欲しい、お金を稼いでバカにされてきた人々を見返したい…タイホアは洗脳され、違法ビジネスの世界にどっぷりつかるようになります。
何とか母に正気を取り戻して欲しいムーリエンは、違法ビジネスの地獄から母を救うために一線を超える決断をするのですが…。

ムーリエンを演じたのは、ドラマや映画のヒット作に出演し、日本でもファンの多い若手俳優ウー・レイ。別人のように変わってしまった母を救おうとする芯の強さと優しさをとてもナチュラルに演じました。
マルチ商法に落ちるタイホア役は、国民的女優ジアン・チンチン。ゾッとするほど迫真の演技でした。

親族がマルチ商法にハマってしまったという監督がマルチ集団に潜入し、その経験が生かされている作品。
悪徳商法を広めるための洗脳セミナー、バタフライ社の集会はとんでもなく恐ろしいものでした。声高に語られる成功者の話、マイクに乗せられ大声で叫ぶスローガン、いつの間にか一緒に叫び興奮する人々。
人は心身が疲れると何も考えられなくなり、言われるがままに踊らされるものなのだと思い知りました。

随分前に一度だけ西湖に行ったことがあるのですが、本当に山水画のような心洗われるような美しい場所なのです。
違法ビジネスの地獄と対比するかのような自然の天国。
私たちはその間に住んでいて、どちらにも行けるのかもしれません。

『西湖畔(せいこはん)に生きる』
2024年9月27日(金)より
新宿シネマカリテ、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開

公式サイト:https://moviola.jp/seikohan
原題:草木人間|英語題:Dwelling by the West Lake|2023年|中国映画|118分
監督:グー・シャオガン[顧暁剛]|撮影監督:グオ・ダーミン[郭達明]|音楽:梅林茂|出演:ウー・レイ[呉磊]、ジアン・チンチン[蒋勤勤]、チェン・ジエンビン[陳建斌]、ワン・ジアジア[王佳佳] 配給:ムヴィオラ、面白映画 一般G 
©Hangzhou Enlightenment Films

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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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