ニッポンチャレンジドアスリート

2025.03.10

桐生寛子(パラ・パワーリフティング)

1983年生まれ、東京都墨田区出身の41歳。2010年、スノーボード中の事故で脊髄を損傷し、車いす生活に。リハビリ中にさまざまなパラスポーツと出会い、パラアスリートを目指そうと2019年暮れからパラ・パワーリフティングを本格的に開始。持ち前の運動神経を生かして順調に記録を伸ばし、2023年4月、チャレンジカップ京都・女子61キロ級で当時の日本新記録の72キロを挙げて優勝。現在は、3年後のロスパラリンピック出場と、100キロを挙げることを目標にしています。

◾️桐生選手は、埼玉県所沢市にある国立障がい者リハビリテーションセンターで、チェアスキーと出会う。   

「リハビリをしていたときに、障がい者向けの雑誌にチェアスキーが乗っていて『あ、座って滑るスキーがあるんだ。障がいがあってもスキーができるんだ』ということを知って、退院してからすぐに体験しに行きました。私は雪山にもう1回戻りたいっていう風に、すごくそのときは思っていました」

◾️チェアスキー以外にも、たくさんのパラスポーツに挑戦。さまざまな競技を経験する中で、桐生選手は下半身に障がいがある選手が仰向けに寝た状態でバーベルを持ち上げるパラ・パワーリフティングに出会う。

「パラスポーツを趣味じゃなくて、競技としてやってみたいって思ったときに、パラ・パワーリフティングがまだやったことがなかったので、友人を誘って体験しに行きました」

「私が誘った友人っていうのが、私よりも小柄な女の子だったんですけれども。バーベルを上げたら、私よりもその子の方が重い重量を持ち上げて。そのときに私もちょっと『悔しいな』って思う気持ちが芽生えまして。ちょっと続けてみようかなっていう気持ちになりました」

◾️日本パラ・パワーリフティング連盟の前理事長で、現在は強化委員長の吉田進さんの指導を受けた桐生選手。2020年2月、競技を始めて2カ月で「全日本パラ・パワーリフティング国際招待選手権大会」に出場する。

「私は2019年の12月からパラ・パワーリフティングを始めて、もう12月の時点で『全日本出て見れば』みたいな形で言われていて。最初はまだそんな1カ月、2カ月しかやってない状態で出ていいのかっていうところで悩んだんですけれども。一応経験として出ようと思って出場しました」

◾️その後体調を崩し、一年近く競技から離れた桐生選手。せっかくつけた筋肉も落ちてしまい、ブランクを取り戻すのは大変だった。

「全くお休みしていた期間はトレーニングをしていなかったので、最初は練習を再開したときは、20キロのバーだけで、最初ちょっと持ち上げてみたりするっていうところから始めたので、またちょっと1からっていう形になりましたね。少しずつ戻ってきたっていう感じでした」

「なんか、重いものを持ち上げたいっていう気持ち湧き出てくるんですよね」

◾️2023年4月、「チャレンジカップ京都」で72キロを挙げることができた要因は?

「やっぱり日本新記録を狙っていて、第2試技で72キロに挑戦したんですけれども、上がらなくて。失敗の判定で。いつもだったら、不安な気持ちでいっぱいになっちゃうんですけれども、このときは『絶対に挙げる』っていう、どうしても『そのまま終わりたくない』っていう気持ちで、第3試技に挑むことができて。実際にあげることができたので、諦めない気持ちを持つことの大切さをすごい実感した大会でした」

◾️日本新記録を出した4カ月後、桐生選手は2023年8月にドバイで行われた世界選手権に初出場した。緊張感の中、1回目は68キロに挑戦して成功。しかし、72キロに挑戦した2回目・3回目は、バーベルを持ち上げるも判定は不成功。惜しくも記録更新ならなかった。初挑戦の世界選手権で見えた課題は?

「パラパワーリフティングは筋力とか技術、技術力っていうのもとても大事だと思うんですけれども、私は一番、精神面が重要かなっていう風に思います。どれだけ集中して、自信を持って、いつも通りの試技ができるかっていうのが、すごく成功と失敗の判定が分かれるところかなっていう風に思います」

◾️ロス・パラリンピックに向けてトレーニングに励んでいる桐生選手。

「トレーニングとしては、週に3回、ベンチプレスで『マックス重量の何パーセントを何回』という感じで、回数をこなすトレーニングとか。スピードよくあげるためにスピードの強化のトレーニングですとか。あとはダンベルとかマシーンを使って筋トレをしたりとかしています」

◾️桐生選手は大会のときに目立つネイルをしている。

「そんなに凝ったネイルではないんですけれども、やっぱりパラ・パワーリフティングはバーベルを持つので、手元がすごく注目されるっていうところと。あとはやっぱり自分の気持ちを上げるためにネイルは常にしています。試合の前はゴールドだったり、あとは情熱の赤とかで、自分の中でテーマを決めて、ネイルの色を決めたりしています」

◾️3月1日・2日に、東京・八王子で全日本選手権が行われた。みごと日本新記録をマークした桐生選手。今後、ぜひ実現させたい目標は?

「ロスのパラリンピックに出場するには100キロぐらいは上げないと出られないかな、っていうところだと思いますので。3年後には100キロという目標で、毎年5キロ記録を伸ばすっていうのが課題になっています。もう筋力、技術力、精神力。全部必要だと思います」

◾️桐生選手にとって、パラ・パワーリフティングの魅力とは?

「今まで持ち上げられなかった重量を上げることができたときの達成感とか爽快感を味わえるっていうのが魅力だと思っています」

「試技を始める前に、選手みんなそれぞれ集中する、ルーティンというか表現みたいなのがあるんですよね。名前を呼ばれて舞台に上がって、ベンチ台の真ん中まで行って。そこで一呼吸を置いてからベンチ台に座ったりとか。あとベンチ台に座ってから、手を叩いたりとか、手を合わせたりする選手もいますし。そういうパフォーマンスみたいなものを見てもらうのは、パラパワーリフティングを見る時の面白さの1つかなっていう風には思います」

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