1989年生まれ、東京都出身の35歳。2014年、国の難病に指定されている病気を発症。両手・両足にまひが残りました。2017年から本格的にパラ水泳を始め、わずか半年でジャパンパラ水泳競技大会の50mバタフライで優勝。2021年には日本パラ水泳選手権大会の50m背泳ぎで日本新記録をマークして、その後も更新しました。今年のジャパンパラ水泳競技大会では4種目で優勝。また2022年から冬季競技の車いすカーリングにも挑戦。競技と仕事を両立しながら、夏冬二刀流で活躍中です。
■子どもの頃から、スポーツが大好きだった花岡選手。ところが花岡選手は、大学院2年生のときに国の指定難病を発症、左右の手足に障がいを抱えた。再びスポーツを始めたきっかけは?
「最初は左右差もある障がいで、足にも麻痺があるので、走るということが難しくて、陸上競技への復帰は難しいと思っていたので、スポーツは離れて、大学院博士課程に進学もしていたので、研究を中心の生活をしていました。そんな中で、2016年のリオ・パラリンピックも自宅でテレビで見ていて。その後、東京都障害者総合スポーツセンターで水泳入門の教室があるのを母が見つけて、リハビリも兼ねて行ってみないかと誘われました」
「そのときプールに入って、地上では思うように体を動かせなくても、水の中だったら意外と自由に動けるなっていうことが何よりも楽しくて。久々にやってみて、体を動かすっていうことの楽しさを思い出しました」
■本格的にやってみようと思った理由は?
「水泳入門の教室で4泳法を泳げるようになって。それが楽しくて、教室以外の時間でもスポーツセンターに通って泳ぐようになったときに、東京都障害者スポーツ協会のかたから『東京パラリンピックを目指す選手を探しているから、水泳を競技としてやってみないか?』と誘われました」
■本格的に水泳を始めてからわずか半年で、ジャパンパラ水泳競技大会に出場した花岡選手は、50mバタフライでいきなり優勝を飾る。
「私自身はこんなにも早く結果が出せるとは思っていませんでした。ただ 障害者スポーツセンターの職員の方に聞くと、このぐらいのタイミングで日本一になれることは最初から思っていた、と言われています」
■2021年、日本パラ水泳選手権大会に出場した花岡選手。50m背泳ぎで、当時のS8クラスの日本新記録を打ち立てた。
「この大会というのは2020年、コロナの影響で1年間大会が中止となっていて、再開した初めての大会でした」
「私は2020年4月に清水建設に入社しており、部署の皆さんから非常に多くの応援の声をいただいていて。部署の皆さんに具体的な目標としてお話ししていたのが、この日本パラ水泳選手権大会で日本記録を出します、ということだったので……大会の前日に出社していたんですけど、そのときも多くの社員の方から応援の言葉をいただいていて。無観客でのレースだったんですけど『もう絶対に日本記録を更新するぞ』という気持ちだけで臨みました」
■花岡選手は今年、ジャパンパラ水泳競技大会の50m自由形、400m自由形、100m背泳ぎ、200m個人メドレーで優勝。4冠を獲得した。
「3日間で予選・決勝合わせて8レースという非常にタフな大会でしたけど、それを全て泳ぎ切れたこと、そして前年の記録を大きく上回っていたことなどで、非常に大きな自信になりました」
■車椅子カーリングを始めたきっかけは?
「2020年に東京都パラスポーツ次世代選手発掘プログラムというのが開催されて、そこに参加したときの競技相談会で、車いすカーリングの協会のかたともお話しさせてもらい、初めて車いすカーリングという競技を知りました」
「車いすカーリングは健常のカーリングと違って、ブラシでこするという、いわゆるスイーピングというのが禁止されているので、自分が石を投げた力加減や方向、それが全てです。自分が投げる一投に、いかに集中して投げるのかというところが面白いなと思って始めました」
■現在、花岡選手は「ease埼玉」という車いすカーリングのチームでプレーしている。2023年5月、ease埼玉は日本選手権で3位という成績を収めた。花岡選手の役割は?
「リードというポジションで、4人の中で1番最初に投げるという役割でした」
「試合の展開を作るという立場で緊張感もありましたけど、メンバー4人で一緒に表彰台に立ったときには、チームとして一緒にやっていけてよかったなというふうに強く感じます」
■車いすカーリングでの、今後の目標は?
「まずは今年の11月にアジア大会に出場させていただくことになったので、国際大会でも今出せる最大の力を出して自分のプレーをすることと、あと、アジア大会で普段プレーしているチームとは異なるメンバーで出場するので、他のメンバーから技術的にも戦術的にも、多くのことを学んで、自分自身の経験値を上げてスキルアップしていきたいと思っています」
「10年後にはパラリンピックなどの国際舞台で活躍できるような選手になりたいなと思っています」
■アスリートとして、花岡選手のこれからの夢は?
「水泳の場合は、今自分が持っている50メートル背泳ぎ、200メートル背泳ぎの日本記録をさらに更新していくこと」
「カーリングについては、水泳の聖地と言われていた東京辰巳国際水泳場が、来年の秋に通年のアイスリンクに生まれ変わって、カーリングの大会も行われる予定と聞いています。私が初めてパラ水泳で全国大会に出場した、そして日本一になることができた辰巳国際水泳場、その地が今度はカーリング日本一になることができるかもしれないということで、非常にワクワクしています」
■パラ水泳と、車いすカーリングの魅力を聞いてみた。
「パラ水泳の魅力は、なんと言っても補装具なしで、自分自身の体1つで競技を行うことだと思っています。 使えるところは最大限使って、それぞれの工夫をした泳ぎをしているところが最大の魅力かなと思います」
「車いすカーリングの魅力は、自分自分が投げた力加減1つで全てが決まっていきます。試合中に変わっていくアイスの状態をチームでしっかりと共有して、どこに自分のストーンを置きたいという戦略を基にしっかりと調整して投げていく、チーム内のコミュニケーションというのが非常に大事な競技になっていくので、そういったところが魅力の1つかなと思っています」
2025.08.04
辻悠佳(デフオリエンテーリング)
1993年生まれ、兵庫県出身の32歳。株式会社JTB所属。先天性の難聴で、音がきこえにくい状態です。2022年から地図とコンパスを使って、山や野外に設置されたチェッ...
2025.07.28
田村小瑚(パラダンススポーツ)
2001年生まれ、千葉県出身の24歳。4歳のときに発症した病気の影響で、車いす生活に。2020年2月、脊髄を損傷した人が通うトレーニングジムで社交ダンスのワルツを体験...
2025.07.21
辻内彩野(パラ水泳)
1996年、東京都江戸川区生まれの28歳。小学3年生から水泳を始めますが、目の病気で視力が低下。2017年からパラ水泳に転向し、各種目で日本記録を次々...
2025.07.14
高室冴綺(車いすテニス)
1995年、東京都生まれ、埼玉県川口市出身の30歳。先天性の骨の病気のため、高校生の頃から歩行が困難になり、やがて車いす生活に。高校卒業後に車いすテニスを始め、201...
2025.07.07
金尾克(パラ射撃)
1976年、富山県生まれの49歳。YKKライフル射撃部所属。2003年、事故で右腕を失いますが、2022年、40代後半からパラ射撃を始めるとすぐに頭角を現し、翌202...