高田文夫のおもひでコロコロ

2024.12.09

第115回『新刊本だらけ』

「森繁久彌大全集」なんてCDをBGMに これを書き始めた。此の世は やっぱ無情だな。
「花に嵐のたとえもあるさ さよならだけが人生だ」なんて言葉もあれば
「散る桜 残る桜も 散る桜」だとさ。
私が好きなのは「あっさりと 恋も命もあきらめる 江戸育ちほど哀しきはなし」
江戸っ子は哀しいね。
やせ我慢ばかりだから。
オレも若い頃から どれだけあっさりと恋をあきらめてきたものか。
その代わり命だけはあきらめなかった。

また沢山の人から愛された人の「さよなら」だ。

 

去年の今頃の写真がみつかった。
私達の「さんぽ会」の忘年会を神保町でやってるよと桂雀々に言ったら
「誰が居まんの?」「松村邦洋とか招待で野末陳平(91)先生を呼んである」と言ったら
人なつっこい雀々「陳平センセに会いたいから行くわ」
みんなで一杯やって大さわぎ。いい気持ちになって「よしっ地下鉄に乗って雀々帰ろう」の誘いに喜んでメトロホームへ。
実は これ神保町のホーム。メガネはずせば雀々と分かるが。
雀々と最後になった神保町のホームの珍しい1枚。この駅で さよなら。
「必死のパッチ」の一生だったネ。
ごゆっくり。師匠の枝雀師も待ってるよ。
スビバセンネ。

 

私の好きな人が みんな居なくなっちゃった。
若い頃から大好きで大好きで。
ドリフターズで いかりや氏との権力闘争に破れ「ドンキーカルテット」結成。
小野を尊敬する加藤茶もついて行こうとしたが いかりやに引きとめられた。いかりやに怒られた。

私は「スターどっきり㊙報告」で やっと長いこと一緒に仕事ができた。

 

本当に今でも芸能界で一番面白いのは(特に楽屋では。人前では面白さを出せない。私にだけウケればいいと思ってる。)楽屋の大真打 小野ヤスシである。
好きな人ばかり揃ってるので・・・。

 

〈今月の一枚〉

2009年の11月21日とある。ン?
談志の命日?ン?亡くなったのは2011。
その2年前だ。何の集まりなのか。
今では貴重すぎる一枚である。
鶴瓶が私の悪友 左談次につっこみ私があきれ右端で鼻で笑っている小野ヤスシである。
いい写真。
左談次と私の間にいるのは近頃「笑点」でみかけない噺家。

 

大衆芸能に関する本が好きである。
書店でみつければ購入し また著者や出版社が ていねいに送ってくれる。
ありがたい。芸能関係者が本を出してくれると本当にありがたい。嬉しい。
父も親せきも皆 出版社を経営していたので血がさわぐのか。家業なのだろう。
大学出る時「放送」の方に行くといったら皆「出版」行かないの?とビックリしていた。
あの時代でも もう「出版」は古いメディアで「TV・ラジオ」が新しいニューメディアだった。
それから50年以上たった今みんなSNSだネットだ。TVラジオがオールドメディアになった。
ガンバレ出版界も――である。
私は「マス」でやる「コミュニケーション」と「笑芸」が小野ヤスシの次に好きなのだ。

 

ラジオで笑い 本をめくっていれば それで幸せだ。
この10日間のあいだに届いたり買ったりした本。
紹介だけしとくので自分の目で たしかめて下さい。本を買いましょう。

 

「しゃべり続けて40年 今だから話せるナイショ話」三宅裕司(扶桑社)
ラジオに関する対談集。伊東四朗や私など。

 

「木久扇の昭和芸能史」林家木久扇(きき手)たけ平(草思社)

みごとに記憶を掘り出した堂々の一冊。年寄りひとりは図書館100館分の知識。
すばらしい一冊。充実。

 

「タブレット純自伝 ムクの祈り」(リトルモア)

育ちが切なくて切なくてバカバカしくて。世に出てこられて良かった。
芸能界の野良にならないよう。

 

「玉袋筋太郎の昭和あるある」(双葉社)

新宿の子ならではの昭和が満載。

 

「違和感にもほどがある」松尾貴史(毎日新聞出版)

正しく怒るための備忘録と帯にある。お笑い界の論客。

 

「萩本欽一 昭和をつくった男」太田省一(筑摩書房)

この太田って人は本当によくお笑い界・芸能界のことをよく調べ研究している。脱帽に脱毛。

 

「すばらしい!!日々!」アンジェリーナ1/3(文藝春秋)

みごとな本。いま最も勢いのある1/3。表紙は江口寿史。「夢は口に出せば叶う。きっと」

 

「もう諦めた でも 辞めない」マシンガンズ(日経BP)

15年前のネタで「THE SECOND」準優勝。

 

「水道水の味を説明する」鈴木ジェロニモ(アナロク社)


谷川俊太郎が帯に寄せていた。

 

「コカドとミシン」コカドケンタロウ(ワニブックス)


これにはうなった一冊。タレント本コーナーでは見当たらず趣味本のコーナーにある。
コカドって分る?ロッチの中岡の相方だよ。
みごとな腕前。

 

本が色々届くので正直追いつかない。
皆さまも書店をのぞいて下さい。

 

そして前回お知らせした「明治座」の私の公演は12月15日前売り券一般発売です。
よろしく。
会は2月1日の昼夜です。

 

年があけると「サンセット・サンライズ」
1月17日公開
脚本 宮藤官九郎
主演 菅田将暉
監督 岸 善幸

脇の脇役としてビートきよし(東北の人という役)がイカをくわえて出てきます。
遺作とならぬよう。

 

そして<未亡人の会>会員の皆様
第3回例会は週末です。
そっとお集まり下さい。

 

12月6日

 

高田文夫

  • ビバリーHP導線
筆者
  • 高田 文夫
    高田 文夫
    高田 文夫

    高田 文夫

    1948年渋谷区生まれ、世田谷育ち。日本大学芸術学部放送学科在学中は落語研究会に所属。卒業と同時に放送作家の道を歩む。「ビートたけしのオールナイトニッポン」「オレたちひょうきん族」「気分はパラダイス」など数々のヒット番組を生む。その一方で昭和58年に立川談志の立川流に入門、立川藤志楼を名乗り、'88年に真打昇進をはたす。1989年からスタートした「高田文夫のラジオビバリー昼ズ」は4半世紀以上経つも全くもって衰えを知らず。