東京ステーションギャラリーで開催中の
「甲斐荘楠音の全貌」を観てきました。
甲斐荘楠音は、大正期から活躍した日本画家であり、
戦後は、映画界で数々の作品を手掛けた人物です。
1997年に初めての回顧展が行われて以来の回顧展。
2021年に東京国立近代美術館で行われた「あやしい絵展」で
甲斐荘楠音への注目が高まる中での開催です!
《春》1929年、メトロポリタン美術館、ニューヨーク
Purchase, Brooke Russell Astor Bequest and Mary Livingston Griggs and Mary Griggs Burke Foundation Fund, 2019 / 2019.366
前回、回顧展が行われたときは、
甲斐荘の日本画家としての展覧会になったそうです。
映画界でも大きな活躍をしたことが分かっていても、
簡単にしか紹介できなかったとのこと。
当時は、データベースなどもなく、
映画などの資料を渉猟するのが難しかったそうです。
1997年を思い返すと納得ですが、
インターネットやデータベースの発展が、
美術に関する研究の進展や、展覧会の充実にも繋がっているんですね。
今回の展覧会は、企画が進む中で、
ご親族から、甲斐荘が世に出たきっかけになった「横櫛」を含め、
大量の作品の寄贈があったこと、

また、東映から甲斐荘が手がけた衣裳が出てきたこともあって、
まさしく全貌というにふさわしい展覧会になったそうです。
いろいろなタイミングが重なった奇跡の展覧会。
一人の人物が、興味と情熱を絵、そして映画に注いでいく様を、じっくり追える空間です。

ご家族からの資料も大量で、
作品の下絵やスケッチなどを並べて観ることができます。

完成した作品では、髪型が変わっています!
梅蘭芳の絵葉書や、スクラップブックなどは、
画家の手によるデータベース。

これも、インターネットのない時代に、力を発揮したそうです。
そして、圧巻なのが、2018年に発掘された、甲斐荘楠音が携わった映画の衣裳の数々。
現在、およそ250作に携わったことが分かっています。
昭和33年に、観客動員数は11億人を超えたそうで、
そんな映画黄金期時代劇の衣裳は、
前半は時代劇東映の甲斐荘、
後半は、日活の森英恵という傑出した才能によって彩られていたんだとか。

雨月物語では、アカデミー賞にノミネートもされています。
まさに甲斐荘楠音の全貌、多彩な仕事ぶりをじっくり味わえる
「甲斐荘楠音の全貌」は、
東京ステーションギャラリーで、8月27日(日)まで開催中です。
《虹のかけ橋(七妍)》1915-76年、京都国立近代美術館
※写真は、主催者の許可を得て掲載しています。