2019年06月10日

GDP二次速報値から今後を考える

 5月20日の拙ブログのエントリーでGDP一次速報値について書きました。GDPが予想に反して増えているが、それは数字の上の話だけで、足元の詳細は数字以上に悪いのではないかという内容でした。そして、先ほど、この2019年1月~3月期のGDPの2次速報値が出てきました。


今回の数字は、一次速報値と比べてさらに良くなりました。各紙速報で報じています。



<内閣府が10日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算では2.2%増だった。速報値(前期比0.5%増、年率2.1%増)から上方修正となった。法人企業統計など最新の統計を反映した。>

 法人企業統計の数字で設備投資が比較的良かったので、もともとややプラスになるだろうという市場の予想もあり、寄り付きで日経平均株価は2万1千円台を回復しています。たしかに設備投資は一時速報のマイナス0.3%からプラス0.3%と上方修正されていますから、とりあえず企業セクターは堅調なのかとも思わせます。
 とはいえ、内需全体で見ると民間消費の落ち込み、住宅投資や公的固定資本形成(公共投資)の小幅下方修正もあり、国内需要はプラス0.1で変わらず。むしろ、輸出の減速が一次速報値に比べてやわらぎ(寄与率でマイナス0.5からマイナス0.4)、GDP全体としては前期比プラス0.6%(季節調整済み実質)となりました。輸出入どちらもマイナスながら、輸入の減速がより大きく、その結果差し引きプラスであるというのは一次速報値と変わらず、むしろ国内需要デフレーターを見ると一次速報値のマイナス0.1%からマイナス0.2%と悪化。
内需の冷え込みはより鮮明になっています。

 この冷え込みの中で消費増税は非常にリスキーである、止めるべきだというのは再三再四指摘してきた通りで、それは変わることはありません。が、仮に消費税増税を延期ないし凍結したとしても、足元の経済がすでに冷え込んでいることが各種指標で明らかなわけです。たとえば、4月の景気動向調査の結果が先週金曜に発表され、やはり厳しい数字でした。

<内閣府は7日、4月の景気動向指数を発表し、経済情勢の基調判断について景気が後退している可能性が高いことを表す「悪化」に据え置いた。悪化は2カ月連続。自動車や生産用機械の生産が改善したが、基調判断を上方修正する基準には達しなかった。米中貿易摩擦など海外経済の停滞への懸念は続く。政府は今年10月の消費税増税を控える中で景気の鈍化が一時的なものかどうか難しい判断を迫られそうだ。>


 仮に消費税増税を延期・凍結されても、それは現状維持に過ぎず、景気を浮揚させるためにはさらなる施策が必要になります。企業の設備投資が良くなったといっても、年度末の駆け込みである可能性もあり、この伸びが今後も続くとは限りません。景気動向調査の先行指数を見てみると、前月に大きく減った最終需要財在庫が再び大きく増えていることがわかります。一方で新規住宅着工件数は減っている。実質機械受注はまだ4月の数字が出ていませんが、3月は大きく減らしています。
 GDPの速報値を見るまでもなく、民需が振るわないというのは一時的なものではなく、もはや慢性的と見るべきなのではないでしょうか。その上、米中貿易摩擦を発端とする世界経済の低迷はもはや常識と化し、外需に期待することはできません。となると、官需、公共需要を増やすことが重要になってきます。
 政府支出を増やそうとすると、当然予算の制約があり、追加するのであれば補正予算を組む必要があります。予算が通るまでに時間がかかる上に、予算がついて執行し、それが経済活動に反映されるまでにはタイムラグがあります。支出の内容や事業の条件によっても違いますが、ざっくりと言われているのは2か月から3か月はタイムラグがあるだろうということ。残念ながら消費税の増税が10月にあると想定すると(繰り返しますが私はやめた方がいいと思いますが)、その経済の落ち込みをカバーするような補正予算は7月には執行される必要があり、そうなるとこの6月の後半国会で早急に審議しなくてはなりません。
 そう考えると、この開店休業状態の国会には危機感を覚えます。マクロ経済の落ち込みは、思いのほか雇用や生活に影響を及ぼします。甘く見てはいけないと私は思うのですが...。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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