2019年03月05日

小池都知事の再選戦略

 自民党の二階幹事長が、任期があと1年以上ある小池都知事の再選を支援する旨記者会見で語りました。

<自民党の二階幹事長は、来年の東京都知事選挙への対応を巡って、「小池都知事が出馬すれば全面的に支援することは当たり前」と述べ、小池知事の再選を支持する考えを示しました。小池氏は最近、頻繁に二階氏のもとを訪れるなど関係修復を図っていますが、自民党都連は、小池知事との対決姿勢を鮮明にしているだけに、今回の二階氏の発言に対する反発が広がりそうです。>

 まだ任期が相当あるだけに、この話を聞いた総理も「早いな」とつぶやいたといいますし、自民党都連ももう蜂の巣をつついたような大騒ぎとなっています。
 一方、上記記事にもある通り、小池都知事側は幹事長を頻繁に訪れていただけに、都政関係者に聞くとこのタイミングでの幹事長の支援表明は小池都知事の任期と絡んで様々な憶測を呼んでいます。というのも、小池都知事の任期は2020年の7月30日まで。東京オリンピックの開幕直前です。オリンピックに向けて海外からのお客さんが大挙してやってくるこの時期に選挙をやる、東京中で選挙カーが走り回るというのは国際的に見てもマズい。そこで、都知事は開会式の半年前に自ら辞任することを出馬表明の段階から公言していました。

<なお次の都知事選が東京オリンピック・パラリンピックの期間にかかる問題が浮上したのはみなさんもご存じのことかと思いますけれども、そこで提案をしたいのは次の都知事選は、今回の知事選の結果知事となって、そして任期を3年半にすることによって、混乱を避けるという方法もございます。>

 そう考えると、実質の任期は半年足らずとなり、ならば幹事長の表明もあながち早いとは言えないというわけですね。ただ、都知事を自ら辞任し、出直し選挙に出馬するとなると、当選しても公職選挙法259条の2の規定により任期は変わらず20年7月末ということになります。(もちろん、小池都知事以外の人が当選すれば、任期は4年となるのでオリンピックには重なりませんが、再選を期している小池都知事からするとこのシナリオはあり得ないでしょう)

<第二百五十九条の二 地方公共団体の長の職の退職を申し出た者が当該退職の申立てがあつたことにより告示された地方公共団体の長の選挙において当選人となつたときは、その者の任期については、当該退職の申立て及び当該退職の申立てがあつたことにより告示された選挙がなかつたものとみなして前条の規定を適用する。>

 ちなみに、知事の任期は地方自治法140条によって4年とされており、その起算日は選挙の日である旨も公職選挙法259条で決まっています。つまり、知事の意向や都道府県の条例によって任期を短縮させることはできないわけです。本当に任期短縮の上で選挙を行い再選されて二期目を狙うのなら、国会で特措法を通す必要があるんですね。過去には、東日本大震災に伴って統一地方選を延期するため特措法を通したことがありますから、オリンピック直前という事情に鑑みて今回も特措法を提出することも理論的には可能です。しかしながら、政治的に考えると、自民党と袂を分かって都知事選に出馬、さらに希望の党を率いて総選挙で自民党に対峙した小池都知事が国政に関与し立法するというのは常識的に考えれば難しいでしょう。

 こうした事情を都政関係者に聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「そこで都知事周辺が考えているウルトラCが都知事不信任案だ。議会から不信任を突きつけられれば、知事は議会を解散するかしないかの選択をしなくてはならない。ここで議会を解散しなければ失職→出直し選となり、この場合は当選すれば丸々4年の任期となる。」
たしかに、地方自治法178条にはその旨の記載がありました。

<第百七十八条 普通地方公共団体の議会において、当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をしたときは、直ちに議長からその旨を当該普通地方公共団体の長に通知しなければならない。この場合においては、普通地方公共団体の長は、その通知を受けた日から十日以内に議会を解散することができる。
〇2 議会において当該普通地方公共団体の長の不信任の議決をした場合において、前項の期間内に議会を解散しないとき、又はその解散後初めて招集された議会において再び不信任の議決があり、議長から当該普通地方公共団体の長に対しその旨の通知があつたときは、普通地方公共団体の長は、同項の期間が経過した日又は議長から通知があつた日においてその職を失う。>

 とはいえ、このシナリオのためには都議会の過半数を握る知事与党の都民ファーストの会が知事に不信任を突きつけるという捻じれた議会行動をしなくてはいけません。いくら何でもそれは無理やり過ぎないか...?そのあたりを聞くと...、

「だからこそ、自民党の支援がなおのこと必要なのさ。自身の自己顕示欲のために"なれ合い不信任"を主導したとあっては、前回選挙で小池都知事が頼みとした無党派層はその身勝手さに嫌気するだろう。そこで、都知事サイドは何としても自民党の支援を取り付け、無党派層の支持が得られずとも組織票で当選できるように足元を固めておきたいんだよ。」

 ん~、これはあくまで一つの見立てであり、ちょっと飛躍が過ぎる気もしますが、政治は一寸先は闇。選挙が近いとなると何が起こってもおかしくありません。ちなみに、二階幹事長周辺では今回の発言について、自民党都連に勝てる候補を見つけてこい!と発破をかけたという見方もあり、自民党側だってこのままスンナリ小池支援に向かうとは断言できないようです。いずれにせよ、小池都知事がオリンピックでホスト知事として脚光を浴びるためには、細く険しい道を通る必要がありそうですね。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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