2018年11月15日

影響は、軽微?

 日ロ首脳会談や入管難民法改正案の審議といった大きなニュースが目白押しの水曜日(14日)、ひっそりと今年7月~9月期のGDP速報値が発表されました。


 翌日の紙面では、大きなニュースに紙幅を割かれたためかあまり大きく報じられていませんが、個人的にはこれは非常に重大なニュースであろうと思っています。というか、放送でも言いましたが、各項目でマイナスが並び、惨憺たる数字と感じたのです。では、各紙はどう報じたかというと...。

<内閣府が14日発表した2018年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%減だった。年率換算では1.2%減。1~3月期以来、2四半期ぶりのマイナスとなった。全国で相次いだ自然災害の影響で個人消費が伸びなかった。輸出も大幅なマイナスとなった。>

<内閣府が14日発表した2018年7~9月期の国内総生産(GDP、季節調整値)速報値は、物価変動を除く実質で前期比0.3%減、このペースが1年間続くと仮定した年率換算は1.2%減となり、2四半期ぶりにマイナス成長に転じた。西日本豪雨や北海道地震などの災害が響いて個人消費が振るわず、訪日外国人観光客の落ち込みも重なって輸出が減少。企業の設備投資も停滞した。>

 各紙、揃って災害の影響で落ち込んだという表現を使っています。おそらく、そういうレクチャーを受けてそのまま記事化していると思うのですが、数字をしっかりと見るとちょっと疑問を感じます。
 たしかに7月から9月は台風や豪雨災害、さらに北海道胆振東部地震が重なり、経済にもマイナスの影響があったことは否めません。海外経済も、アメリカが中国に対して制裁関税を発動させた時期にも重なりますから、外需の下押しもあって厳しい数字が出たこともたしかにその通りです。とはいえ、それだけで説明できるのか?
 全体としては、四半期でマイナス0.3%成長(季節調整済み、実質)、年率換算でマイナス1.2%成長でしたが、各要素に分解して、それぞれが全体の数字に対してどれだけ影響を及ぼしたのかを示す「寄与度」も同じ概要の中には記載があります。それを見ると、全体でマイナス0.3%のうち、ざっと民間需要がマイナス0.2%、公的需要がマイナス0.1%、輸出入が差し引きでマイナス0.1%となっています。記事では個人消費の不振と輸出の減少ばかりを書いていますが、官公需もしっかりと(?)足を引っ張っているのにあまり言及がありません。
 そして、この公的需要をさらに分解すると、政府最終消費支出がプラスなのに対し、インフラなどへの財政出動を表す公的固定資本形成がマイナスです。この公的固定資本形成のマイナスは深刻で、ここ1年以上プラスになった試しがありません。2017年10月~12月期から四半期ごとに前期比の数字を見ていくと、マイナス2.2→マイナス0.8→マイナス0.5→マイナス0.3、そして今期のマイナス1.9。(いずれも季節調整済みの実質成長率前期比)
 何と一度もプラス圏に顔を出すことなく、常にGDP統計の足を引っ張り続けているのです。弱い弱いと言われ、今回のマイナス成長の主犯のように各紙から言われている個人消費だって、プラスとマイナスを行ったり来たりしているにも関わらず、公共投資は常にマイナス。何という緊縮財政でしょうか。

 加えて深刻なのが、物価の動きを総合的に示すGDPデフレーターの値が、ここ1年ゼロより下に沈み込んでいる点です。一般に、物価の動きというと消費者物価指数(CPI)の値が注目されます。日銀の物価目標もこのCPIの値が生鮮食品を除く総合で2%となっていますが、直近の値では総合で1.2%、生鮮食品を除く総合が1.0%、生鮮食品とエネルギー価格を除いた総合が0.4%でした。
 一方、GDPデフレーターの動きは四半期ごととはいえ、より厳しくなっています。同じく2017年10月~12月期から四半期ごとの数字を列挙すると、0.3→0.0→マイナス0.2→マイナス0.2、そして今期が0.0。(いずれも季節調整済みの前期比)
 この数字だけで判断することはできませんが、デフレ脱却どころか良く言ってもデフレへ逆戻り寸前まで来ているのではないでしょうか?たしかに、流通関係者を取材すると、
「最近、ここ1年ほどは客単価が下がり続けている。まだ量を売ることで数字を作っているが、決して楽観視できない」
と、このところの変化を話してくれました。客単価が下がっているということは、取扱商品全体として値下げ圧力が強く働いているということ。GDPデフレーターの動きと符合しますね。

 そして、この地合いで来年の10月には消費税増税ですか?このままでは、失われた20年が失われた30年になってしまいます。今期のGDP不振の原因を災害に求めることが、全体のかじ取りを誤る気がしてなりません。杞憂に終わればいいのですが...。
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
(2012年1月9日~2018年3月29日)

「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」
(2012年4月7日~2017年9月30日)

・「東日本大震災から7年・・・本気の備えはできていますか」
(2018年3月11日)

・「ザ・ボイススペシャル 福島県の農業は今」
(2018年1月2日)

・「ザ・ボイススペシャル 密着・不発弾処理隊 今なお眠る2200トンとの戦い」
(2014年12月30日)

・「ザ・ボイススペシャル 辺野古の声」
(2013年12月30日)

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