2018年08月03日

東京2020に向けて、暑さを乗り越えろ

 ニッポン放送平日朝6時から8時までお送りしています、『飯田浩司のOK!Cozy Up!』。今週は「2018ニュースの夏!アツいぜ、俺たちのニッポン!」と題して熱いニュースを熱いコメンテーターとともに熱く(厚く?)お送りしています。6時15分過ぎのモーニングラフアップのコーナーは、今週一週間「アツいぜ!俺たちの2020!」と題しまして、いよいよ2年後に迫った東京オリンピック・パラリンピックの各会場の取材レポートをお届け。まさにこの時期、暑い夏のさなかのオリンピック・パラリンピックということで、各会場の暑熱対策がどうかというフラクタル日よけ2.JPGのも取材のポイントとなりました。取材した7月の後半は最高気温が軒並み35度を超える猛暑日でしたから、気候の面から考えると恰好のロールプレイングとなったわけです。さすがにこれだけ暑いと選手への影響も気になります。これに関しては国立スポーツ科学センターも調査を行うようです。

<国立スポーツ科学センター(JISS)がジャカルタ・アジア大会(8月18日開幕)に出場する日本の全41競技を対象に、暑熱対策に関する調査を実施することが22日、関係者の話で分かった。2020年東京五輪に向けた特別プロジェクトの一環で、強化現場の現状や課題を吸い上げ、科学的な知見でメダル獲得を後押しする。>

 各会場の中が今どうなっているのか?そして今後どうなるのか?というあたりは放送内のレポートでお話ししました。放送は会場内にフォーカスしましたが、もっともっと懸念されるのが会場外での暑熱対策。沿道での応援や、会場に入るまでの待機列でいかに暑熱対策をするかです。
 会場に入るにはセキュリティチェックが必須となりますから、これを待つ列はかなり長くなることが予想されます。何しろ、新国立競技場で6万人余りが収容されますから。選手も観客も建物の中に入るから安心だよと解説されがちな水泳会場アクアティクスセンターやバスケなどの会場、有明アリーナなども、選手は安心かもしれませんが、観客は待機列で待っているうちに熱中症になってしまうかもしれません。そのあたりは、各会場の整備計画では建物に特化していて触れられず、ちょうど対策のエアポケットに入り込んでしまったような形。これから検討するというような分野となっています。
 暑さの中で取材しているだけでも結構身体に堪えましたが、行列でじっと待つのはより影響が大きいように思われます。整理券を配って入場ということにしてもある程度は並ぶ上、入場時間まで外で待っていては結局同じこと。屋外にいても身体への悪影響を小さくする、そんな設備が必要です。先日、7月23日から25日まで、ミッドタウン日比谷で東京都環境局が音頭をとり、「暑さ対策技術等の展示」が行われました。


 ミストやエアコン、植栽ユニットなど様々なアイディアが並んでいますが、そのうちの一つがフラクタル日除け。他のアイディアは読んで字のごとし、理解することができますが、この「フラクタル」のみが何だかわかりません。まずは、調べてみました。


 実際に、この日除けを開発した京都大学人間・環境学研究科の酒井敏教授にお話を伺う機会があったのですが、直射日光の下では人間の身体は100Wの熱量を受け取っているそうです。携帯用カイロ1個がだいたい1Wだそうですから、100Wはカイロ100個分!夏の直射日光下にいると、カイロ100個を身体に巻き付けているのと同じということになります。日陰に入るとこの100個のカイロを下すことが出来るわけですから、そりゃ日が陰っただけでも涼しく感じるわけです。
 ただ、たとえばテントのようなもので日陰を作ると、今度はテントの生地の方が100個のカイロを巻き付けたのと同じになり、結果テントの下は日陰であってもテントから出る熱で暑くなってしまいます。ちょうど、ホットプレートの下にいるのと同じようなものだと酒井先生は解説してくれました。そこで、このフラクタル日除けの出番となるのです。
 テントの場合、大きな布一枚で覆いますが、そうすると風が通り抜けても熱が逃げずにため込んでしまいます。フラクタル日除けは適度に小さなハギレのような生地が連なることで構成していますから、風が抜けると熱が逃げていくのです。地表からの熱もなく、頭上からも熱が来ないわけですから、気温が同じでも人間の体が受け取る熱量が全く違う。
したがって、涼しく感じるということなんですね。

フラクタル日よけ2.JPG
このように、一見すると日差しを遮らないようにも見えるが、これがこもれびのような自然な影を生み出す。

 このフラクタル日除け、オリンピック・パラリンピックを見据えて広めていくというのはもちろんなんですが、関係者の構想はさらに壮大で、日除けと机・椅子・Wifi環境を整備して、天気のいい日は外で仕事をしたり、休んだり、ふらりと立ち寄れる場所を都市のいたるところに作って人と人との出会いの場を作っていきたいとのこと。これだけネットでなんでも済む時代になっても、ビジネスの芽は人と人との出会いから生まれているといいます。コワーキングスペースがこれだけ流行っているのも、結局は出会いからしかイノベーションが生まれないことをみんな知っているからなんでしょう。ただ、コワーキングスペースだと踏み出すのに勇気が要る人も中にはいますね。そこへ行くと、フラクタル日除けのスペースはフラッと立ち寄ることができ、ハードルは限りなく低い。暑い夏を活かして、イノベーションのゆりかごにしようという知恵。日本には、様々な技術とそれを活かす知恵があるのだなぁと感心しました。オリンピック・パラリンピックまであと2年。こうしたアイディアが育っていってほしいものですね。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
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