2018年06月20日

大阪北部地震取材報告

 月曜日のOK!Cozy Up!の放送が終わった直後、スタジオの中にあるモニターに『緊急地震速報!近畿 強い揺れの恐れ』という文字が出ました。
直後にもたらされた第一報は、「大阪、震度6弱」。脳裏によぎったのは、「大都市圏直下型、炊事中の火の始末、新幹線を含む鉄道が混雑のピークで無事だろうか...?」という3つでした。報道部で初動の情報収集を電話でしている間中、「ピーコ」と呼ばれる共同通信の音声端末からはキンコンカンコンというチャイム音が鳴らされました。これは、相当な大事件、大災害が起こったときにのみ鳴らされるサイン音。私が聞いたのは東日本大震災以来でした。これは大変な被害になる可能性がある。番組スタッフと協議の結果、出来るだけ早く大阪に入って取材をし、翌日の放送は大阪から出そうということになりました。

 大都市圏での直下型地震で最大震度6弱。今後起こるであろう首都直下地震を考えると、条件等が重なっている部分が多く、今回の教訓は非常に重い意味を持ちます。現地に入って取材を始めたときの率直な感想は、地震そのものの被害は非常に軽微というものでした。発災当日は枚方周辺しか取材が出来ず、震源至近の茨木、高槻は翌日に取材に回ったのですが、瓦が落ちたり看板やモルタルが剥落しているのはほんのごく一部の老朽化した建物のみ。今の建築基準で建った建物は少なくとも外観上はびくともしていないと思われました。写真のようにブルーシートを張っている家はむしろ少数で、建物などハードの部分は強靭化が進んでいると感じます。

大阪北部地震①.jpg

 インフラの復旧はまちまちで、翌日の各紙は「大阪 都市機能マヒ」(読売・大阪版一面)という論調で報じていましたが、ある意味人的被害・物的被害が少なかったり、迅速に復旧したものが多かったので、もっとも復旧が遅れた交通インフラを取り上げるしかなかったという見方もできます。電力は、午前中いっぱいで17万戸あった停電地域をほぼ解消。水道も震源地至近の高槻、茨木を除けば今回の揺れに耐えました。建物が倒壊していた場合、停電後通電した時にショートして発火することがあります。が、前述のとおり今回の場合、そもそも倒壊家屋がほとんどありませんでしたから、通電後ショートによる火災も抑えることが出来たようです。
 日本は過去何度も大きな地震に見舞われてきました。揺れたことのないところがないと言っても過言ではないほど、津々浦々で地震を経験しています。その過去の教訓が、強靭な建物や迅速な復旧という形で活かされたということが言えるのではないでしょうか。

 一方で、誠に遺憾ながら過去の教訓が活かされなかったこともありました。ブロック塀が倒れ9歳の女の子がその下敷きになって亡くなった高槻市立寿栄小学校。発災翌日の火曜日に現場周辺も取材しましたが、周りの民家のブロック塀は全く倒れていませんでした。ということは、小学校の事例が劣悪な施工による人災であることを強く伺わせます。写真は、規制線の手前に作られた献花台。献花台の左手に見える民家のブロック塀は全く倒れていませんね。

大阪北部地震②.jpg

こうしたブロック塀にも建築基準法施行令で積み方、作り方に基準が定められています。これは過去の経験から作られた基準です。

<ブロック塀の倒壊は過去の地震でも問題になった。1978年の宮城県沖地震では、18人がブロック塀などの下敷きになり死亡。これを受け、国は81年に建築基準法施行令を改正し、高さの上限を3メートルから2.2メートルに引き下げるなど規制を強めた。>

 ところが、このブロック塀は、<市によると、ブロック塀は幅約40メートルにわたり倒壊した。高さ1.9メートルの基礎部分と同1.6メートルのブロック部分があり、全体で同3.5メートルだった。高さの上限を2.2メートルと規定した建築基準法の施行令に違反するとしている。>
 過去の教訓を活かして基準までは作っていたのに、現場でそれにのっとって施工されなかったわけですね。基準が作られる前にこの壁が作られていれば施工業者は免責となりますから壁の設置時期が問題になりますが、高槻市は今日現在調査中と回答しています。警察による捜査が行われている最中ですからそれをまずは待ちたいと思いますが、どうしてこんな施工になったのか?どうしてそのまま放置されたのか?そして、こうした危険なブロック塀が他にもあるのか?ブロック塀そのものはきちんと基準を満たして建てれば今回の揺れにも十分に耐えたということは現場周辺を見ればすぐにわかります。ですから、問題のあるブロック塀を根絶するために何が出来るのか?この大阪北部地震の大きな教訓となると思います。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
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