今年1~3月期のGDP速報値が発表されました。厳しい数字が並んだようです。
<内閣府が16日発表した2018年1~3月期の国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値は、物価変動の影響を除いた実質で前期比0.2%減、同じペースの下落が1年続くと仮定した年率換算では0.6%減となった。マイナス成長は9四半期ぶりで、景気回復の足踏みが鮮明となった。>
もともと、冬の天候不順などであまりいい数字は期待できないというのが大方の予想でしたが、それでもプラス圏はギリギリ維持するだろうというのがコンセンサスでした。ところが、フタを開けてみれば4半期でも年率換算でもマイナス...。茂木経済財政担当大臣は、年度の数字を見れば実質プラス1.5%、名目プラス1.4%だったことを根拠に、「景気は緩やかに回復している」と認識を据え置いていますが、2017年度も四半期ごとの数字で見ればだんだんと下降してついにマイナス圏に沈んだというのが明らかです。
見るべきポイントは様々あるのですが、まずは1ページ目にあるGDPの内外需別寄与度。残念ながら内需が不振で、実質GDPにおける内需の寄与度はマイナス0.2%。外需がプラス0.1%でしたから外需でもカバーしきれず全体の数字でマイナスに沈んでしまったわけです。細かくその中身を見ていくと、このところずっと下がり続けているのが民間住宅。1~3月期は実質でマイナス2.1%、名目でマイナス1.7%でした。一方で、今まで民間住宅の減速を補ってきた民間企業投資がそれまでのように伸びず、実質マイナス0.1%、名目マイナス0.0%となっています。
一つ一つの要素を見ても冴えないなぁと思うのですが、それ以上に心配になるのがGDPデフレーター。これがマイナス0.2%と4四半期ぶりにマイナス圏に沈んでいます。グラフを見ると、2017年度は4~6月のプラス0.4%から0.1%→-0.0%→-0.2%と右肩下がりのグラフになってしまっています。デフレ脱却どころか、徐々にデフレに近づいてきているといっても過言ではありません。
そして、ここが最も問題の大きいところなんですが、徐々にデフレに近づいて行っているのに政策的な手当がほとんど行われていないわけです。公的固定資本形成を見ると、4~6月期、当初予算で手当された分で伸びますが、その後が続きません。補正予算が極小粒だったので当然です。そして、公的支出が続かない分だけGDPの伸びも鈍化してしまっているというのが読み取れるわけです。
家計も企業も冴えない中で、政府が需要を喚起することが必要だとこのブログでも何度も書いてきました。どんな形であれ、需要の創出ができれば当座の目的を果たすことができますが、出来ることなら有効な使い方をしたい。そこで、去年非常に盛り上がっていたのが教育国債を使っての教育無償化でした。同じ教育無償化でも他の予算を削って予算をねん出するのはただの予算の付け替えであって、需要の上乗せになりません。
そして、この教育に対する投資は安全保障にも役に立つということを意外なところから聞きました。ある中東の専門家と話した時のこと。かつては世俗的で穏健だったアジアのイスラム教国でどうして過激派が伸長し、テロが頻発し出したかに話題が及び、こう言われたのです。
「これらの国々は教育に対しては必要最低限の支出しかできなかった。そこに目を付けたサウジアラビアなどの中東産油国が経費丸抱えで若者を留学させたのです。ここで原理主義的教えに感化された若者が帰国し、そうした教えを地元に広めました。こうして徐々に世俗・穏健から原理的・過激な思想が浸透していったのです」
こうした留学スキームはここ最近始まったものではありません。従って、アジアでの過激派の伸長やテロ頻発も今に始まったものではないのです。「タダより高いものはない」というわけで、日本も他人事と思わず他山の石としなくてはいけません。
研究費の不足や短期で成果を出すことを求められる中で基礎研究などに割かれる予算は心許ないものがあります。そこへ海外からの莫大な資金提供があった場合にどうなるか?研究成果としての知的財産が流失してしまう恐れがないとはいえません。あるいは、日本国内の知的階層に協力者が増えれば世論工作がより容易になるかもしれません。
まさに、「タダより高いものはない」。
目先のプライマリーバランスを綺麗にするために、この国の将来を切り売りすることになってしまうかもしれません。短期的には赤字になっても、必要な投資はしっかりとすべきではないでしょうか。