4月からスタートした『飯田浩司のOK!Cozy Up!』。今まで担当していた夕方のザ・ボイスと比べると、主要ニュースを掘り下げて議論することが中心なので、どうしても落としてしまう項目があります。今週月曜も、こんなニュースを断腸の思いで落としました。
<日本自動車工業会(自工会)が9日発表した2017年度の乗用車市場動向調査によると、車を保有していない10~20代の社会人のうち「購入したくない」との回答が前回調査に続いて5割超に上った。利用手段としてはレンタカーやカーシェアリングへの関心が高く、車の維持費などに負担を感じて「所有」にこだわらない若者が増えている傾向が改めて浮き彫りになった。>
見出しや記事の端々に、「最近の若いもんは...」というつぶやきが聞こえてきそうな記事ですね。この調査は、10代~20代の1000人にウェブサイトで行った調査で、そのうち800人が車を持っていなかったそうです。持っていない人のうち、車を買う意向を聞いたところ、「買いたくない」が29%。「あまり買いたくない」の25%を合わせると5割を超えるということで、この見出しになったようです。その理由については、
<買いたくない理由を複数回答で聞くと、「買わなくても生活できる」が最も多く33%。これに「駐車場代など今まで以上にお金がかかる」(27%)、「お金は車以外に使いたい」(25%)が続き、堅実な消費志向が読み取れた。>
とされています。これに対して、特に40代以上の方々からの反応で、「かつては大人の階段を上るように車を買っていたのに...」とか、「覇気がない」「つまらない連中だよ...」といった書き込みが散見されました。まぁ、この記事だけを見れば若者全体が車を持つことにさほどプライオリティを感じていないように思いますが、きちんとこの調査を読み込むとそうも言えない事情も浮かび上がります。
日本自動車工業会の調査は、PDFファイルにして196頁にも及ぶ詳細な報告がウェブ上にアップされています。
この108頁以降(表紙・概要も含めたPDFファイルのページ数では123頁以降)が若年層分析となるのですが、ここでは、性・未既婚、同居家族、世帯保有の有無、地域、社会人、大学・短大生と、属性ごとに細かく分かれた数字が出ています。
車に対する関心一つとっても、既婚者はおおむね平均よりも高い関心がありますし、さらに既婚者で地方圏に在住だと関心があるとの答えが上がります。車の購入意向を見るとこの傾向はさらに顕著になって、首都圏在住の方々は買いたい42%に対して買いたくない58%。地方圏在住の方々は買いたいと買いたくないが50%ずつとなっています。地方圏では生活の足として、好むと好まざるにかかわらず車を買う必要があるのではないか?という事情が浮き彫りになりますね。
そのうえで、上記質問に対して買いたくないと答えた人に、その理由を複数回答で聞いた設問が続いています。この追加質問のデータも属性ごとに細かく分類されているのですが、ここは非常に興味深い。首都圏と地方圏に注目すると、首都圏で車を買わない理由は「買わなくても生活できる」が40%でトップなのですが、地方圏では15ポイントも低い25%しかありません。地方圏で車を持たない理由のトップは「駐車場代など今まで以上にお金がかかる」という理由でした。首都圏では公共交通機関の充実で、車がなくても全く困らない生活ができるので車なしの生活を選択しているが、地方圏では車が必要でも金銭的な要因で保有が叶わないという違いが見えてきます。
首都圏在住で生活スタイルとして車が必要ないという人を振り向かせることは至難の業ですが、地方圏在住で金銭的な要因で保有が叶わない人に対しては、一定の処方箋が出せるでしょう。すなわち、景気を良くして可処分所得を増やせば、おのずと若年層の車の所有志向も向上するのではないでしょうか?事実、消費増税直後で再びデフレに入りかけていた2015年度の調査と比べると、やや景気が回復してきた2017年度の調査の方が車を買いたいという割合が5ポイント改善しています。(41%→46%)「最近の若者は...」と思考停止に陥る前に、金融緩和、財政出動による内需振興、再分配機能の強化、そして消費増税の見直しなどなど、デフレ脱却に向けて出来ることがまだまだ沢山あるはずです。