2018年01月04日

福島県の農業は今

 明けましておめでとうございます。本年もザ・ボイスをよろしくお願いいたします!

 新年最初のザ・ボイスは、私の福島取材レポートから始まりました。『ザ・ボイスそこまで言うか!スペシャル 福島県の農業は今』Radikoのタイムフリーは来週火曜日で聞けなくなりますが、PodcastやYouTubeではアップしている限り聴けます。


 放送を受けて、メール、ツイッターで様々な反応、反響をいただきました。本当にありがとうございました。ここでは、放送で答え切れなかったところなどの補足を中心に書いていきます。まず、生放送中にご紹介した、福島県や各団体、市町村が行っている放射線検査の結果を公表しているホームページです。


 こちらのホームページでは品目から、市町村名から、地図やエリアからなど様々なレイヤーから検索することができます。ほぼリアルタイム、検査をしたらデータ処理をして、その翌日や翌々日(土休日を挟むと翌営業日)に結果が公表されています。
 次に、お話を伺った東大大学院農学生命科学研究科復興支援プロジェクトのホームページはこちらです。


 最新の知見については、こうしてウェブ上で公開しているほか、年1回から多い年で3回ほど、公開の研究報告会を行っています。当然専門家が集まる議論の場ですから専門用語も飛び交うわけですが、各報告者の方々はできる限りかみ砕いて説明するように努めている印象。私が取材した時には乳飲み子を抱えたお母さんの参加も見られ、冷静に現状を知りたいというニーズが確実にあることを感じました。

 さて、1月2日生放送での取材報告を受けて様々な反応をいただきましたが、その中でいくつか、生放送内で答え切れずに終わってしまったものがありましたので、この場でできる限り答えていきたいと思います。東大大学院の中西先生にお話を伺った中で、放射性セシウムの動きについて原発事故から7年がたっていろいろ分かってきたという話がありました。中西先生は「瞬間接着剤付きの花粉のようなもの」と表現されていましたが、セシウムは大気中に飛散し落ちてきた際に、最初にくっついたところで固定し、動かなくなる。その後風雨雪にさらされても容易に動かず、その場にとどまっていることが分かってきたようです。
 それを受け、ツイッターの書き込みで、「放射性セシウムが動かないのであれば、福島第一原発事故の対応も違ってくるのではないか?汚染水の浄化が果たして必要なのか?」という趣旨の書き込みがありました。
 残念ながら、福島第一原発内に今も残る放射性物質と、2011年3月に環境中に降り注いだ放射性セシウムの動きとは直接リンクしません。福島第一原発の1号機から4号機は、溶けだした燃料+熱で溶けた構造物の混ざったデブリが溶け落ちたまま原子炉格納容器の直下付近に残っています。これが崩壊熱を発することから、大量の水を入れて冷やしているのが現状です。たしかにセシウムそのものは水に溶けださないことが分かってきていますが、福島第一原発の場合はセシウムや他の放射性物質を含む小さなデブリ片として水の中に含まれることが大いにあり得ます。だからこそ、溶け落ちたデブリを冷やした後の汚染水はALPSという放射性物質除去装置を通し、それでも除去しきれないトリチウムを含む水を原発敷地内に貯めてあるのです。トリチウム水の扱いについては議論のあるところですが、現状はそうなっているわけですね。
 今回の番組で取り上げたのは、あくまで2011年3月12日~15日に起こった水素爆発で大気中に放出され、土壌その他に降り注いだ放射性物質の話です。その限りにおいては、前述したとおり最初に落ちたところにとどまる性質を持ち、容易に動くことはありません。放送中に郡山にお住いの方が、「阿武隈川に運ばれて河口の宮城県で影響が出るのではないか?」と心配される方がいらっしゃいましたが、それに関しては心配がないことが研究により分かってきました。

 それから、この水素爆発で出たのはセシウムだけではないはず。他の核種には触れないのか?という質問もいただきました。実は中西先生を取材した時にも、そんな話が出ましたが、時間の都合で放送では触れませんでした。たしかに2011年の3月12日~15日の水素爆発、およびその後の事故対応初期に飛散した放射性物質はセシウムだけではありません。放射性ヨウ素(ヨウ素131)やストロンチウム90も放出されたことが確認されています。
 しかし、放射性ヨウ素は半減期が8日ですから、7年経った今、まず検出されることはありません。
 ストロンチウム90は半減期が30年と長く、チェルノブイリ原発事故ではこのストロンチウムによる長期間汚染が問題となりました。しかしながら、福島第一原発事故の水素爆発時の温度はチェルノブイリと比べて低かったということで、セシウムの量と比較すると放出量がぐっと少なく、セシウム対ストロンチウムでは155分の1の違いがあるそうです。したがって、検出されることも少なくなり、福島における放射性物質の動きを研究する上ではあまり対象とならなくなりました。
 ということで、今対策を考えるべきは放射性セシウムとなります。放射性セシウムにも2種類あって半減期2年のセシウム134と半減期30年のセシウム137。原発事故から7年が経つ今、土壌など環境中に残っている、存在しているのはセシウム137であろうという結論に達したそうです。このあたりの詳しくは、中西友子著『土壌汚染』(NHK出版)56頁以降をご参照ください。

 そのほか、様々な反響をいただきました。改めまして、御礼申し上げたいと思います。3月11日を平成の世で迎えるのもあと2回。節目の取材だけでなく、今後もこうして粘り強く取材を続けていこうと思っています。お聞きになっていない方は、ぜひ一度聞いてみてください。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

■Twitter
「飯田浩司そこまで言うか!」

■会員制ファンクラブ(CAMPFIREファンクラブ)
「飯田浩司そこまで言うか!ONLINE」

最新の記事
アーカイブ

トップページ