2017年12月13日

平成時代振り返り記事

 「平成」は2019年4月30日をもって終わり、翌5月1日に新天皇の即位が正式に決まりました。

<政府は8日午前、天皇陛下の退位日にあたる退位特例法の施行日を「2019年4月30日」とする政令を閣議決定した。翌日の5月1日に皇太子さまが新しい天皇に即位する。新しい元号について菅義偉官房長官は記者会見で、同日施行にする方針を示した。平成は30年と4カ月で幕を下ろすことになる。>

 これをきっかけに、平成の世を振り返る特集記事やコラムが数多く紙面を飾りました。バブル崩壊から「失われた20年」を経てきた平成時代。明るいニュースよりも暗いニュースが多かったのは否めません。こうしたコラムや特集を執筆するのは、50代以上の論説委員や編集委員といった「エライ」人たち。自身の歩んできた人生と重なるだけに、この停滞した原因を分析し、総括するよりも、もはや成長しないというような結論になったり、改革が足らないのだ!という結論に行きついたりと、率直に言って無責任な言説にあふれています。

<平成が2019年4月末で終わる。何度も危機に見舞われた停滞の時代である。1945年以降の昭和が復興と高度成長の時代だったのとは対照的だ。>
<停滞が続いた理由は何か。不良債権問題が典型だが、政府も銀行も企業も、問題解決を「先送り」し、無駄に時間を費やしたからではないか。>
<現状の超緩和が続けば金融機関の体力が衰え、金融危機が再発する恐れがある。
 経済の活力を高めながら、少しずつ消費増税を進めるしかない。いまの中福祉・低負担を続けると、次世代が担い手になる頃には低福祉・高負担になってしまうだろう。
 安倍晋三首相は来年秋の自民党総裁3選が視界に入った。期待するのは課題の先送りでなく、先取りする政治だ。政権の評価も10年後の日本の姿によって定まるだろう。>

 問題解決を「先送り」したのが停滞の原因?金融緩和の出口戦略の「先送り」と消費増税の「先送り」で危機が増す?90年代後半、山一証券や北海道拓殖銀行といった金融機関を潰して大出血した時、経済の後退や大量の失業者発生にも関わらず、新聞などのメディアは「ゾンビ企業には市場からの退出を!」と言い募りました。お望みどおりに体力のない金融機関が潰れだし、金融危機が起こると今度は金融機関には公的資金が注入されるようになりました。
 新聞などのメディアが当時、それを反省したのか?そんなことはありません。いまだに、「ゾンビ企業は市場からの退出を!」と言い募っています。彼らにとっては、金融緩和もゾンビ企業の延命に手を貸す許しがたい政策のようです。

 そして、飽くなき消費増税の追求。彼らは、90年代後半の消費税増税が何をもたらしたか?その後、2014年の増税が何をもたらしたのかを何も総括していません。
 「改革!」「改革!」「カイカク!」と言って各種の規制緩和、構造改革を繰り返してきましたが、結果として何がもたらされたのか?それこそ、「失われた20年」だったのではないでしょうか?デフレ下、需要が冷え込んでいるところで、需要をもたらすどころか逆に供給側を増やす各種改革を行ったら、デフレがますます深刻になるのは自明のことのはず。社会の授業で習った、需要と供給のグラフを思い出せばわかりますが、オーソドックスな価格の決定理論は、需要と供給の一致点と言われます。需要が変わらず、供給が増えれば、欲しい人が同じなのにモノだけ増えることになりますから、当然価格が下がります。価格が下がる圧力=デフレ圧力というわけですから、デフレが深刻化していくわけですね。
 そうして、物価が上がらず景気が低迷すると、彼ら改革を主張するメディアはどうしたか?景気の低迷は「改革」が足らないからだ!「改革!」「改革!」「カイカク!」となり、別の意味での「デフレスパイラル」に突入していったんですね。この、改革デフレスパイラルに関して、メディアが少しでも総括し、反省したのか?そんなことはなく、この失われた20年を経て、むしろこの物価が上がらず、成長しない日本が新常態(ニューノーマル)だという見解に至るのです。間違っていたのは自分たちではない。日本の経済構造が変わってしまったのだという結論です。

<日本の物価は四半世紀のあいだほぼ横ばいだった。生鮮食品を除く消費者物価はバブル期に2%台に伸びた年が4年だけあったものの、その後はほとんどゼロ%台かマイナスゼロ%台だった。人口減少、超高齢化のもとで、優等生と言えるような安定度ではないか。>
<二つのキーワード(筆者注:「デフレ」と「失われた20年」)は「失われた」成長を取り戻すためならギャンブル的な政策もやむなしという空気を生んだ。そして低成長や低インフレのもとでも持続可能な財政や社会保障にしていくのだという、本来めざすべき道を見失わせてしまったのだと思う。いまは名付けを悔やんでいる。>

 すでに十分に稼ぎ、功成り名を挙げたバブル世代の方々はそれでいいのかもしれません。デフレ下の方が、手元にある現金や金融資産が放っておけば価値を上げるわけですからね。
 しかし、もはや日本は成長しない。低成長、低インフレは不可避であるとなれば割を食うのは若い世代です。手元にカネもない、まだまだスキルも発展途上、その上低成長で雇用がなく、スキルアップのきっかけもない。そうなると、親世代のコネクションや人脈、通った学校といったものが非常に有効になり、格差の固定化が進みます。あれ?特に朝日新聞は格差の是正を常に訴えてきたはずではないでしょうか?低成長、低インフレは格差是正の敵なのではないのでしょうか?それとも、格差是正を訴えるのは支持者向けのポーズに過ぎず、本心から格差是正を実現しようなどとは思っていないのでしょうか?

 欧米における左派の経済政策は、低成長・低インフレは格差是正の敵として、これをいかにして脱するかにフォーカスを当てています。そのために、金融緩和と財政出動を組み合わせて需要を喚起していく。イギリス・労働党のジェレミー・コービン党首が今年の総選挙のマニュフェストで示した「人民のための金融緩和」など、まるで教科書のようです。
イギリスでは、若年層がこれを支持しました。それは当たり前で、その方が若年層に恩恵が大きかったからです。
 では、日本で曲がりなりにもこうした需要を喚起する政策を志向しているのは...?そう、政権与党なのですね。だから、政権は選挙で負けなかったのではないでしょうか?

 やはり、ビル・クリントンの大統領選での発言が思い出されます。
 It's the economy, stupid!(経済こそが重要なのだ、愚か者!)
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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