2017年10月30日

質問時間の配分

 先週末から、国会での質問時間の与野党配分についてがニュースになっています。

『安倍首相、質疑時間の配分見直し指示=自民「魔の3回生」が拡大要望』(10月27日 時事通信)https://goo.gl/zVeacP
<自民党の石崎徹衆院議員ら当選3回有志が27日、国会内で森山裕国対委員長と会い、慣例でおおむね「与党2割、野党8割」としてきた質疑時間の配分を見直し、与党の持ち時間を拡大するよう要望した。これを受け、安倍晋三首相(党総裁)は萩生田光一幹事長代行に対し、配分見直しに取り組むよう指示した。>

 「魔の3回生」という見出しに悪意すら感じますが、与党の質問時間を伸ばそうという今回の提案に対してメディアは総じて批判的。
質問時間を削られる野党にとっては言わずもがな。記者から質問されるたびに激烈に反応しています。

『野党の質問時間削減に枝野氏反発「とんでもない暴論」』(10月30日 朝日新聞)https://goo.gl/CwJmBB
<政府・自民党が野党の国会での質問時間を減らすことを検討している問題で、立憲民主党の枝野幸男代表は30日午前、党本部での会合で「とんでもない暴論とも言える主張。一刻も早く取り下げ、建設的な議論ができる状況を作って欲しい。一切、我々として妥協する余地がない」と述べ、検討の中止を要求した。>

 枝野代表曰く、与党は政府から法案の国会提出前に詳しい説明や場合によっては法案を書き換えたりして主張を潜り込ませているのだから国会での質問は野党が多めでちょうどいいとのこと。それにしても、野党8に対し与党2だったというところに驚きました。これに対し、官房長官は「議席数での配分が基本」と反論しています。

『官房長官 衆院予算委の質問時間 "議席数で配分が基本"』(10月27日 NHK)https://goo.gl/khDguC
<菅官房長官は午後の記者会見で、衆議院予算委員会での質問時間について、与野党への配分は国会で決めることだとしながらも、議席数に応じた配分が基本だという認識を示しました。>

 そもそも、この与野党の質問時間については慣例で決められてきました。もともと麻生政権までは「与党4割、野党6割」だったものが、旧民主党政権の時に現行の「与党2割、野党8割」となりました。当時野党だった自民党側が主張して与野党8:2にしたのに、ご都合主義も甚だしいという批判が上がっています。6:4を8:2に変えたタイミングもあって、自民党がごり押しをしたかのように今報道されていますが、当時を知る政界関係者は「魚心あれば水心だった」と振り返ります。

「当時、民主党は党内の路線対立がすでにあって、与党質問の時間が多いと党内不一致的な質問をしかねなかった。ガソリン代の値下げ、高速道路の無料化など、政権奪取の為にした約束を財源問題で断念せざるを得なかったのはまだまだ記憶に残っているでしょう。そうした現実的な政権の判断は、一方で党内論議はガス抜き程度で党の決定はなく政府側によって決定されていた。党=政府なのだから政府の決定は党の決定という建前があったからだが、当時の大勢の民主党国会議員たちは不満を募らせていて、手を焼いていたのだ」

 また、野党側もこの慣例で獲得した多くの質問時間を持て余しているようにも感じます。政界関係者に取材をすると、TVの生中継が入る予算委員会ならば我も我もと手を挙げる質問者の枠ですが、中継も入らない、主要大臣の出席もないような委員会では野党同士で質問時間を押し付けあうというシーンも見られるそうです。
 たしかに、政策的には重要でもメディアの注目を浴びない委員会というものは残念ながら存在します。例えば安保関連の委員会の傍聴に行った際、記者席にいるのは私一人ということもしばしばありました。この委員会では、国土防衛に関して与野党で実際的な議論が行われていて、非常に見ごたえがありました。しかし、現実はそうしたことばかりではないようです。

 そもそも国会議員は選挙で国民の主権の束を背負って選ばれてきた存在。その選挙区の民意をそれぞれしょっているわけで、そこに与野党の違いはありません。したがって、与党だから質問時間が制約され、野党だから多くの質問時間を獲得するというのは、根本的には国民主権に反する行為です。今回の質問時間の割り振り変更について、「モリ・カケ問題について丁寧に説明すると選挙中に言っていたのに、選挙が終わったら手のひらを返した!」との批判がにぎやかですが、ではなぜ与党がこれだけ大勝したのか?なぜ、モリ・カケを追及し続けた野党が伸びなかったのか?そこに、いい加減スキャンダル(とされるモノ)で停滞し続ける国会にウンザリしているという民意が存在したとは言えないのでしょうか?
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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