2017年10月23日

大切なのは...

 第48回衆議院選挙が終わりました。台風21号列島接近の影響で即日開票できなくなった選挙区や投票時間を繰り上げて締め切った選挙区などもありましたが、今日午後までにすべての選挙区で開票作業が開始され、大勢が判明しました。与党で改憲発議可能な定数の3分の2である310議席に達し、自民党は単独で過半数はおろか、安定的な国会運営が可能な絶対安定多数に到達しています。一方野党では当初破竹の勢いと言われた希望の党が失速。代わって、立憲民主党が判官びいきがあったとも言われる躍進で野党第一党にまで達しました。

『自公の議席310、与党大勝 立民躍進54、野党第1党に』(10月23日 共同通信)https://goo.gl/9q6tMv
<第48回衆院選は23日午後、各党の獲得全議席が確定した。自民、公明両党は計310議席となり、定数の3分の2(310)を確保した。自民党は281議席に達し、国会運営を主導できる絶対安定多数(261)を単独で上回る大勝。立憲民主党は54議席で公示前の16議席から3倍以上となり、野党第1党に躍進した。希望の党は50議席と公示前から7減。共産党は12議席、日本維新の会は11議席と低調だった。>

 選挙の結果を受けて、様々な論評記事が出ています。もともと政権に批判的だった左派系の朝日・毎日・東京は政治部長の署名論文や社説で「国民の声に耳を」とか「多様な意見に目を向けよ」という一方、読売・産経という右派といわれる新聞も「おごることなく」と、政権に対して謙虚さを求めています。私自身、選挙の開票速報番組を担当していて、幹部インタビューでそうした低姿勢をアピールする雰囲気を濃厚に感じましたし、翌日の安倍自民党総裁の会見に出席した際にもにこりともせずにメディアに対応する総裁の姿勢を見るだに、スキを見せない姿勢を感じました。

 さて、この自民の大勝、そして立憲民主党の躍進。よくある分析記事には、自民党について他に入れる党もないという消極的な支持が多く集まり、立憲民主党には反自民の受け皿になったのだという記述が目立ちます。むしろこれが自明の前提のようにして論を進める向きも多いのですが、私はどうもそれに違和感を感じるんですね。
 選挙戦を取材し、実際に党首演説などを聞きに行った感じでは、相反する主張の2党にある共通点を感じたのです。それは、両党とも例外的に「経済」について多く語っているという点。実はその傾向は、中盤戦の党首演説にすでに如実に表れていました。

『各党首演説分析 序盤で「優劣」 舌戦に変化 安倍晋三首相は経済・北に重点 希望の小池百合子代表は首相批判強める』(10月15日 産経新聞)https://goo.gl/qBnw8Y

 この記事の図表を見ていただきたいのですが、自民党の安倍総裁は第一声で3分の1を割いていた経済についての演説を中盤ではほぼ半分にまで広げています。同じように、立憲民主の枝野代表は第一声、中盤戦ともにおよそ4割を経済政策に割いているのです。
 私も平日の昼、雨の中神奈川での枝野代表の演説を見に行きましたが、消費税凍結、格差是正、福祉に財政支出といった具体的な経済政策を熱く語っていました。演説を見守る群衆も、動員されたであろう年配の方もいましたが、むしろ私には若い女性が多い印象を受けました。そして、その若い世代の方々が経済政策の部分では非常に聞き入っている印象で、時折大きくうなずく姿が見られました。
 自民党に対しては物価や実質賃金が上がっていないじゃないかという目標未達に対しての批判、立憲民主に対しては財源をどうするのか?バラマキになるんじゃないか?などなどそれぞれに対して批判はありますが、時間を割いて丁寧に経済政策を説明しているというのは共通しています。

 それに対し、立憲民主を除く野党各党、特に希望の小池代表、共産の志位委員長は「その他」が圧倒的に多く、おそらくここに政権批判、モリ・カケだとか安倍一強打破といった内容が含まれるものと思われます。その傾向は、第一声よりも中盤戦に向けて拡大しています。そして、選挙戦終盤に向けてはさらにその度合いを強め、かなり語気も強めて政権批判を繰り広げていたように感じました。
 もちろん、党首の演説だけで大勢が決したわけではありませんから、あくまで一つのバロメーターに過ぎませんが、党首の演説は選挙戦のさなかでも報道されることが多いだけに選挙結果と全く関連がないとは言えません。結局、自分たちの懐をどれだけ具体的に暖めてくれるのか?その実績や具体案を提示した党派に票が行ったのではないでしょうか?
 今から25年余り前、アメリカ大統領選でブッシュシニアに挑戦したビル・クリントン氏の名言を思い出しました。

『"It's the economy, stupid"』(マネースクウェア・ジャパン)https://goo.gl/e9bWzR
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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