週末に、次の臨時国会での衆議院解散が濃厚になってきました。土曜日に永田町周辺で様々な情報が飛び交って、いわゆる解散風が急に強くなり、翌日の朝刊一面を飾りました。
<安倍晋三首相は年内に衆院を解散する検討に入ったと与党幹部に伝えた。28日召集の臨時国会冒頭で踏み切ることも視野に、北朝鮮情勢などを見極めて最終決断する。報道各社の世論調査で内閣支持率が回復基調にある中、民進党は離党騒動で混乱しており、局面打開の好機と判断。衆参各院で3分の2を持つ現在の改憲勢力で憲法改正の発議をめざす戦略から方針転換する。>
今日の朝刊各紙の一面も解散・総選挙についてで、吹き始めた解散風は強まることこそあれ、やむことはありません。総理は国連総会から帰国後に最終判断と言っていますが、これを額面通りに受け取る人はもはやいない情勢です。
<安倍総理大臣は18日午後、羽田空港で記者団に対し、「衆議院の解散については、いちいち答えることは差し控えさせていただきたいと思うが、帰国後に判断したいと考えている」と述べ、訪問先のニューヨークから帰国する今週22日以降に、具体的な解散時期を判断する考えを示しました。>
ということで、総理は解散についてまだ判断をしていないわけですが、すでに各方面から批判されています。目につくのは、このところ解散が言われると必ず言われる"解散の大義"というもの。これがない、あるいは説明がないという類の批判が散見されます。
<民進党の前原代表は東京都内で記者団に対し、「常在戦場のつもりで準備をしたい。ただ、『仕事人内閣』の発足から何の国会議論もしていない。仮に臨時国会の冒頭に解散するのであれば、『森友学園』や『加計学園』の問題から逃げ、答弁する責務から逃れた『疑惑隠し、敵前逃亡の解散だ』と言われてもしかたがない」と批判しました。>
<東京都の小池百合子知事は18日、安倍晋三首相が28日召集予定の臨時国会冒頭にも衆院を解散する意向を固めたことについて、「何を目的になさるのか、大義ということについては分からない。国民に何を問い掛けていくのかが私には分かりにくい」と批判した。都内で記者団に語った。>
さて、この"解散の大義"というものは一体いつから言われるようになったのでしょうか?万人が納得するような理由がなくては解散できない、そこから、万人が納得する理由のない解散は不当な解散であるというロジックが導き出されるわけですね。今はそのロジックで解散しようとする政権を批判するのが一つの定型のようになっていて、メディアのみならず野党議員がこの解散にコメントするときは慣用句のように「大義がない」となります。
官邸や中央省庁から時の政権をずっと見てきたある官僚に話を聞いたときに、こんなことを言っていました。
「今は解散となると野党が批判するけれども、かつては解散と聞くと喜んだものだった。建前とはいえ、野党は、特に野党第一党は次の選挙で与党を打倒して政権を奪取するのが第一目標。政権に挑戦するチャンスが得られるのだから、これを喜ばなくてどうするのか?」
そして、"大義"については、
「だから、大義を問うたのは常に与党の議員たちだった。だって、黙っていれば政権を担当し続けられたのに、わざわざ解散するのだから。今はそれがアベコベになっている」
結局、厳しい言い方をすれば自分たちの選挙への準備のなさを誤魔化すために、「この解散には大義がない」と批判しているに過ぎないのではないでしょうか?
民進党の前原代表は「疑惑隠し、敵前逃亡の解散だと言われても仕方がない」と批判していますが、今回の解散の判断の一端には、民進党新体制の頼りなさもあったとも言われています。山尾議員の幹事長起用方針から一転して白紙に、そしてその後のスキャンダル。各社の世論調査でも政党支持率が伸び悩んでいます。与党が弱っていても、野党がさらに弱っていれば勝てるのが小選挙区制。敵方の陣立てを見て、与しやすしと思えば打って出て選挙というのも頷けるところです。
ある政界関係者は、
「山尾氏のゴタゴタで躓き、落としどころの幹事長は党務をやったことのない人。さらに、選挙対策委員長は自分の選挙しかやったことのない人。それでまともに選挙ができると思うほうがおかしい。」
と、民進党の新体制のマズさを指摘しました。
民進党のある議員秘書はため息交じりに、
「我が陣は1か月前からすでに臨戦態勢を敷いている。だって、(執行部は)戦えない陣容になってしまったからね」
と話しました。現場はすでに、大義云々を話している場合ではないという雰囲気になっているようです。