2017年06月07日

教育国債は"案"とは呼べない!?

先週木曜、自民党の若手のホープとされる小泉進次郎衆議院議員が日本記者クラブで会見を行いました。


『民進をメッタ斬り! 小泉進次郎氏が加計学園問題に参戦「国家戦略特区をつぶしてはいけない」、「日本にもフェイクニュース蔓延」』(6月3日 夕刊フジ)https://goo.gl/WgbB4o

<自民党の小泉進次郎衆院議員が、「加計学園」問題に緊急参戦した-。民進党が、国家戦略特区を廃止する法案を提出する方針を固めたことを受けてか、「国家戦略特区つぶしをしてはいけない」と明言した。一部のメディアや野党が、前川喜平前文科事務次官の主張を垂れ流していることなどを指したのか、「日本にもフェイクニュースは蔓延(まんえん)している」と言い切った。>


 この会見は小泉議員が中心となって取りまとめた「こども保険」についての記者会見だったのですが、記者との質疑応答の中でやはり今話題の加計学園問題についての質問があり、上に挙げたようなやり取りになった次第。結局、こども保険うんぬんよりもこの発言の方が大きく扱われていましたね。本来主張したかった講演のキモについては、日本経済新聞が比較的紙幅を割いて伝えています。


『自民・小泉氏「介護保険料上乗せも」 「こども保険」財源 』(6月1日 日本経済新聞)https://goo.gl/rkri57

<自民党の小泉進次郎衆院議員は1日、都内で講演し、自身らが提唱する「こども保険」の財源として、介護保険料の上乗せも検討すべきだとの認識を示した。将来、保険料を納める子どもが増えないと1人あたりの保険料は膨らむことに触れ「国民の理解が得られるか、政府の議論の展開を期待している」と述べた。>


 この会見、私も全ては見ることが出来なかったのですが、時間が許す放送前ギリギリまで会見場にいました。こども保険の意義について、熱く語っていて、やはり発信力のある方なのだなぁという印象を受けました。集まった記者もおそらく100人以上。テレビ各社もカメラを構えていて、会見場はすし詰め状態。さすがは人気者という感がありました。


 さて、その主張はといえば、基本的には消費増税を財源にするのが筋だが、消費税は世論の忌避意識もありおいそれと上げられない。その上、次回増税で10%になった際の使い道はすでに決まっているので、実際はさらなる消費増税時に(11%以上への増税の時に)教育への拠出を盛り込むしかないので、これはいつまで待っても実現できないのではないか。ならば現実的な解としては保険料の上乗せという結論に達したとのこと。残念ながら、その際の日本経済への影響などに言及する部分は、私が会見を見ている限りではありませんでした。その主張は、税にしろ保険料にしろ、国民の負担を迫るのが前提。これは全く報じられていませんが、教育国債については、「案とは呼べない」と全否定していました。


『小泉進次郎 衆議院議員 2017.6.1』(日本記者クラブ YouTube)https://goo.gl/P35Ue1

該当部は20:25付近から

<小泉氏:教育国債、これについては、私は案にはなっていないと思っています。それは、私たちは批判もありますけど、こども保険の規模感を示しています。幾らの負担をお願いするか、そしてそれがあればどれぐらいのことができるか。それぐらいのことまで含めて案だと思っています。で、教育国債、それから民進党の子ども国債、これ両方含めてここまで説明しなくては案にならないんじゃないかと思っているのは、8%から10%への消費増税をするときの一部の財源は赤字国債の償還に充てるわけでしょう。一方で消費増税をしてまで赤字国債の償還をするのに、こっちから新しい教育国債か子ども国債という名の赤字国債が出てくるということを、どうやって説明するんですかね。そういったことを含めて、そこまでの対応を考えて私は初めて案と言われるものになるんではないかなと言う風に思いますので、そういったことを考え、そして消費増税の11%以降から逃げるなというのは、言っていれば何となく骨太な主張をしているように聞こえるかもしれないし、財政再建にちゃんと取り組んでいるように聞こえるかもしれないけれども、それは政治の現実を見ていないという観点で、そして待ったなしだという観点から言えば、いつになるか分からないのに言っているだけでは政治の責任は果たせないと思いますから、そこで生まれたのが、新たな社会保険。こども保険を創設すべきだという、そういった考えであります。>


 何はなくとも財政健全化、政府債務残高を1円でも増やしてはならないということなのでしょうか。消費増税で赤字国債を償還している一方で、新たな赤字国債を出すのはまかりならんという主張ですが、そもそも現在でも期限の来た国債を償還している一方で、赤字国債を発行して財政を運営しています。ですから、

「一方で消費増税をしてまで赤字国債の償還をするのに、こっちから新しい教育国債か子ども国債という名の赤字国債が出てくるということを、どうやって説明するんですかね。」

という問いに答えるとすれば、「今すでにやっていますが何か?」ということになってしまいます。


 政府は今月決定される骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針)で、財政健全化目標として2020年のプライマリーバランス黒字化だけでなく、債務残高の対GDP比も盛り込むことにしています。債務残高の対GDP比の安定的な減少を目指すのであれば、分子の債務残高を減らすか、分母のGDPを増やすか、その両方かを目指せばいいわけです。そして、このブログでも何度も指摘していますが、GDP成長のために今必要なのが財政出動。教育国債を発行して教育無償化を実現することは、その分家計の可処分所得の増加となり、GDPの6割を占める個人消費への刺激が期待されます。これが、「案になっていない」という代物なのでしょうか...。

また、財政出動の重要性については、世界の高名な経済学者たちが強調しています。

『世界経済は弱さ蔓延、収支気にせず財政出動を=クルーグマン教授』(2016年3月22日 ロイター)https://goo.gl/02HfKN

『スティグリッツ氏「消費増税すべきでない」 国際経済分析会合』(2016年3月16日 日本経済新聞)https://goo.gl/x8vXNw

 いずれもノーベル経済学賞受賞教授です。これでも、教育国債は案になっていないというのでしょうか?

 小泉氏は会見で、早期の幼児教育無償化のため、こども保険や税、拠出金といった財源案が骨太の方針に載り、年内に結論を得るという方向で調整されていると明かしました。教育国債はどうなるのか。私は、論理的で説得的な"案"だと思うのですが...。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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