2016年10月11日

せいかつ費の使い道

 今、全国的に「せいかつ費」がメディアの見出しを賑わせています。といっても、生活費ではなく、政活費。政務活動費という地方議会の議員が行う調査研究その他の活動に必要な経費の一部として支給される経費です。かつては政務調査費と呼ばれていたものが、2012年の地方自治法改正によって用途が拡大され、名前も変わりました。ほとんどの自治体で前払いされ、後から領収書を添付して余った分は返還するというシステムになっているので、前々から不正の温床となっているのではないかと指摘されてきました。年度末に架空の領収書を作って返すべきお金を返さなかったり、あるいは本来の調査研究の目的から外れるような支出を政務活動費名目で計上したり...。今回は、富山市議の不正を皮切りに、全国の地方議会に疑惑がどんどん飛び火しています。

『富山市議会、12人目の辞職へ 名刺印刷代で政務活動費不正』(10月3日 FNN)https://goo.gl/zkBR1B
<政務活動費の不正が相次いで明らかとなっている富山市議会。8月下旬からのわずか1カ月で、11人もの市議が辞職。4人に1人以上が、政務活動費の問題で辞職している。収書の改ざんに偽造、さらにカラ出張と次々と明らかになり、まさに「不正のデパート」、異常事態が続いている。して、3日も、また1人、新たな市議が辞意を表明した。>

 本家?の富山では、定数40人の議会ですでに12人が辞職もしくは辞意表明。続いて隣の高岡でも、

『富山・高岡市議、政活費で不正 自宅PCで領収書偽造』(10月11日 朝日新聞)https://goo.gl/ztcXwL
<富山県高岡市議会(定数30)の中山欣一氏(47)が11日、東京と九州への出張計3回分の領収書を偽造して政務活動費約33万円を不正に取得したと認め、辞職願を提出した。中山氏は民進党県連副政調会長だったが、すでに除籍処分を受けている。>

他県でも、岐阜、奈良、大阪・阪南...、

『議長経験者が政活費不正=廃業店の領収書使用-岐阜市』(9月30日 時事通信)https://goo.gl/FwHzk8

『コピー機ない施設でコピー代、茶菓子代18万円...奈良県議のあきれた公金感覚 富山だけじゃない政活費不正』(10月11日 産経新聞)https://goo.gl/hvSBUU

『阪南市議 別の年度でも不正か』(10月11日 MBS)https://goo.gl/xtNsB4

この不正を抜本的に解決する策として、後払い方式が提唱されています。

『政活費「後払い制」に注目 富山市議会不正受給受け』(10月6日 東京新聞)https://goo.gl/Jy3aM3
<地方議員の政務活動費の不正受給が相次ぎ発覚する中、適正と認められた実費だけを後日支給する「後払い制」を全国に先駆けて導入した京都府京丹後市に注目が集まっている。富山市議会での不正受給が発覚後、他の自治体関係者や住民から制度に関する問い合わせもあるという。>

 私なども一般企業に勤めていますが、基本的に経費は後払い式の立て替え精算。多くの企業がそうだと思います。ですから、「後払い制」にすれば適正化されるのではないかと思うんですが、どうやらそう簡単な問題でもなさそうです。
 同じように後払い式にしている宮城県議会の政務活動費を調査した市民オンブズマンはシンポジウムで配布した資料の中で、でたらめな支出が依然として続いていたことが判明したと報告しています。

『「本当に必要なの?その政活費」配付資料』(仙台市民オンブズマンHP)https://goo.gl/iC9qy8

 この資料によれば、年度末の駆け込み消費はやはり止まず、ある会派は会派として多額の備品を購入し、パソコンやiPadを構成員に配布していたことが判明しています。京丹後市の方式では間に議会事務局や市長が入ってチェックすることで、これまでよりもでたらめな支出がしにくくなりますが、どこまでできるか...。
 領収書をネット公開することで、不正な支出に対する抑止力につながるという議論もあります。公開された領収書がきちんとチェックされれば、これは大きな抑止力になりますが、市町村議会レベルまできちんとフォローするようなメディアが我が国にはまだまだ少ないのが事実。また、領収書そのものを大量にアップされたところで、それを一つ一つ精査して分類し、本当に支出されたのかウラ取りしなくてはいけないので、大変な手間がかかります。非常に重要な情報ではあるんですが、これが加工されずに生のまま出てきても、多くの市民にとっては処理しきれないわけですね。さらに、このネット公開にも消極的な議会の中には、「領収書の取れないような細かな支出もたくさんある。政務活動にはこういった支出がつきものだ」といった批判もあります。

 そこで思うのです。最近では、スマホでレシートをパシャっと写真に撮るだけで勝手に家計簿を作ってくれるようなアプリがたくさんありますよね。これを使うことは出来ないのかと。
 レシートを写真に撮るだけで、数字のデータを分類して家計簿を作るだけでなく、費目ごとに円グラフや折れ線グラフにして視覚化してくれます。レシートには日付も書いてありますから、時系列で分類することも可能ですし、何月が支出が多いのかも一目瞭然。このところ、家計に関する統計が信用できるのかという議論の中でこうした家計簿アプリのデータを使えないかということが言われています。この国の個人消費をフォローするなら大変な数のデータが必要で、制度設計も大変ですが、地方議会のたかだか40人前後のデータなら、あっという間にシステムを構築できるでしょう。既存のプラットフォームを使えるんですから、コスト的にも見合うはず。データが見やすくなれば、検証しようとする人も増えるでしょう。沢山の目が見るとなれば、不正支出への抑止力にもなります。
 こういうところは、新しい技術をどんどん使うべきだと思います。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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