イギリスのEU離脱を問う国民投票。日本のニュース番組もそれ一色が続いていますが、ご存知の通り離脱多数の結果が出ました。
<欧州連合(EU)に残留すべきか離脱すべきかを問う英国民投票の結果は24日確定し、離脱支持が過半数に達した。>
世界中が固唾をのんで見守ったこの投票、衝撃の結果を受け、各国の市場が荒れています。
<英国の欧州連合(EU)からの離脱決定を受け、世界各国で株価が下落した。24日のニューヨーク株式市場は、大企業で構成するダウ工業株平均が急落し、終値は前日より610・32ドル(3・39%)安い1万7400・75ドル。欧州各国の株価も大幅に下がり、世界同時株安の展開となった。>
株などのリスク資産から逃げ出したマネーは、安全とされる国債へと流れています。世界の国々の国債の中でも、特に日本国債は大いに買われているようです。
<24日午後の国内債券市場で、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りが過去最低を更新した。12時30分すぎにマイナス0.215%を付けた。円相場の急騰を受けて企業業績の悪化懸念が強まり、日経平均株価が急落したことを受け、投資家がリスクを避ける目的で「安全資産」とされる国債の買いを進めた。>
さて、イギリスのEU離脱を巡る騒動の中で海外経済が俄然注目を集めていますが、実は日本経済全体にとって海外経済はとっくに下押し要因でした。
このデータを受けての各社の報道は、「4か月ぶり貿易赤字!」ばかりでしたが、貿易収支は赤字だから悪、黒字だから善というものではありません。それよりも、輸出が金額ベース、数量ベースどちらをとっても減少を続けているところが問題です。特に、直近の5月に関しては、世界中どこの地域でも減少しています。イギリスのEU離脱で世界経済がガタつく前から、すでに輸出は減少していた。つまり、輸出に日本経済拡大の期待をかけるのは間違っているであろうということですね。
もう一つこの統計データを見てみて唯一の明るい点は、輸入の数量ベースが増えているということ。日本の内需が少しずつですが回復しつつあることが見えるわけですね。そして、先ほど触れましたが、このイギリスのEU離脱の余波で日本の国債が買われています。10年債のマイナス金利が拡大し、国債を発行する、お金を借りる立場からすると非常に有利になっている。ということで、この回復の兆しが見える内需を、国債発行を原資とした財政出動でもっともっと温めていくべきなのではないでしょうか?
何と言ってもマイナス金利ですから、今ならほとんどノーリスクで財政出動ができます。イギリスのEU離脱による世界経済の失速は、過去に起こったリーマンショックやサブプライムショック、アジア通貨危機などと違って、明確な病巣があるわけではありません。むしろ、先が見通せないことそのものが失速の原因となっています。そして、イギリスのキャメロン首相は「EU離脱の表明は次の政権で」と言っている以上、この先行きの不透明さは長く続きそうです。つまり、このリスクオフの姿勢、株式よりも国債へという流れは長く続く公算が高いわけです。
まさに、財政出動の絶好のチャンス。この危機を逆手にとり内需というコートを着て、世界経済の荒波に備えるべきなのではないでしょうか?