2016年06月20日

世論調査の扱い

 参院選公示を明後日に控え、この週末に行われた各社の世論調査の結果が今日の朝刊を軒並み飾りました。朝日、毎日、読売、産経と主要紙はそのほとんどが週末に緊急調査の形で行ったわけですが、その扱いが微妙に異なりました。一面で大きく扱ったのは、読売と毎日です。

『比例投票先、自民35%・民進12%...読売調査』(読売新聞 6月20日)http://goo.gl/Unq7Yn
<読売新聞社は17~19日、参院選公示を前に全国世論調査を実施した。
 参院比例選での投票先は、自民党が35%でトップを保ったが、前回調査(6月3~5日)の42%から7ポイント下落した。民進党は12%(前回11%)とほぼ横ばいで、公明党、おおさか維新の会の各7%、共産党の4%などが続いた。安倍内閣の支持率は49%で前回の53%からやや下がった。不支持率は38%(同35%)となった。>

『本社世論調査 アベノミクス「見直すべきだ」61%』(毎日新聞 6月20日)http://goo.gl/ieqQFz
<毎日新聞は18、19両日、全国世論調査を実施した。安倍内閣の支持率は5月の前回調査から7ポイント減の42%、不支持率は6ポイント増の39%。安倍政権の経済政策「アベノミクス」を「見直すべきだ」という回答は61%で、「さらに進めるべきだ」の23%を上回った。>

 両紙とも、サブの見出しに「内閣支持低下49%」(読売)、「内閣支持率7ポイント減」(毎日)と、内閣支持率についても大きく報じていました。また、紙面には間に合いませんでしたが、産経新聞・FNNも合同世論調査を行い、やはり内閣支持率について大きく報じています。

『内閣支持率49・4%↓ アベノミクス「継続すべき」51・1% 参院で自公過半数で「よい」54・8%』(産経新聞 6月20日)http://goo.gl/tQ5xue
<産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)は18、19両日に合同世論調査を実施した。安倍晋三内閣の支持率は49・4%で前回調査(5月28、29両日)から6・0ポイント減少した。50%を割り込むのは、4月以来2カ月ぶり。不支持率は4・1ポイント増の38・1%だった。>

 これを受け、菅官房長官は20日午前の記者会見でコメントしています。
『支持率に一喜一憂せぬ=菅長官【16参院選】』(時事通信 6月20日)http://goo.gl/yQsugz
<菅義偉官房長官は20日午前の記者会見で、来月の参院選を控える中、報道各社の世論調査で安倍内閣の支持率が低下したことについて、「支持率に一喜一憂すべきではない」と述べた。その上で「国民に約束したデフレ脱却、経済再生、さらには希望出生率1.8、介護離職ゼロ。こうしたことをしっかり行うことが大事だ」と強調した。>

 ここまで見て来ると政権の退潮が著しいような印象を受けます。読売新聞は一面トップで扱っていますし、毎日新聞も参院選関連の2番手記事ながらも4段を割いていますから。しかし、支持率について正反対とは言わないまでも違った結果が出ている世論調査もあるのです。それが、朝日新聞とNHKです。

『比例投票先「自民38%民進15%」 朝日連続世論調査』(朝日新聞 6月20日)http://goo.gl/5UCh4m
<朝日新聞社は18、19日、参院選(22日公示、7月10日投開票)に向けた連続世論調査(電話)の2回目を実施した。仮にいま投票するなら、比例区ではどの政党に投票したいと思うかを政党名を挙げて尋ねると、自民38%(4、5日の前回調査は39%)、民進15%(同12%)、公明7%(同7%)、共産6%(同7%)、おおさか維新の会4%(同6%)などとなった。>

『安倍内閣「支持する」47% 「支持しない」34%』(NHK 6月20日)http://goo.gl/9ujKIh
<NHKの世論調査によりますと、安倍内閣を「支持する」と答えた人は、1週間前に行った調査より1ポイント下がって47%、「支持しない」と答えた人は、1ポイント下がって34%でした。>

 NHKは内閣支持率が1ポイント減。朝日は前回調査と変わらずという結果でした。NHKはまだ見出しにも内閣支持率を取り、リード記事にも載せているので良心的ですが、朝日は支持率に変化がないことを見出しにも取らず、記事の中でも最後の最後に申し訳程度に<内閣支持率は45%(前回45%)、不支持率36%(同34%)だった。>と触れるのみ。その上、この記事は一面の一番小さな扱い。番組前にざっと各紙を読んでから打合せをするんですが、「読売、毎日は世論調査しているけど、あれ?朝日はやってないんだっけ?」と一瞬見つけられないほど小さな扱いで驚きました。

 また、記事の大きさは違えど、読売と朝日で同じ見出しを取っているのも面白いですね。もちろん、その意図は正反対で、政権に対して肯定的な読売としては支持率が4ポイント下がったのでそれを大きく扱いたくなかったのでしょう。一方、政権に厳しい姿勢の朝日は、下がると思っていた内閣支持率があろうことか前回と同じだったのでこれでは大きく扱えないと思ったからでしょう。どちらも、本来の論点をズラす意図があるのではないかと批判されても仕方がない扱いです。
 ただ、朝日の方は扱いを小さくして、見出しもズラしてと手が込んでいます。なぜこんなことをするんでしょうか?おそらく、本音ではなかったことにしたいけれど、一面からも削ったら各紙見比べた時にかえって目立っちゃうからという苦肉の扱いなのではないかと私は見ています。

 いずれにせよ、同じタイミングで行った世論調査にも関わらず、こんなに結果が違い、そして結果によって紙面の扱いがここまで変わってしまう。紙面での扱いが変われば、読み手側の感じ方は大きく変わってしまいます。これで公平な視点の提供と言えるのでしょうか?
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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