先週宮崎哲弥さんが提供されたこのグラフ。完全失業率(年平均)と「経済・社会生活」を原因とする自殺者数の推移がほぼリンクしているということが表れています。つまり、失業率が上がると、自殺者数が増加する。逆に、失業率を下げると自殺者数も減少するということがわかりますね。両変数の差分を計算した相関係数は0.74。やはりかなりの連動があることがわかります。
グラフを見ると、1990年からの26年間で過去2度大きな山を迎えています。2003年と、2009年。03年はITバブル崩壊後の不景気、09年は言わずと知れたリーマンショック後の不景気です。
そして、足元の数字はどうかというと、失業率、自殺者数ともに1998年以来の水準。では98年に何があったかというと、消費税の3%から5%への増税でした。ここから日本は長期のデフレに突入していったわけですが、グラフから読み取れるのは、「デフレは人を殺す」ということです。このグラフでは「経済・生活問題」を原因とする数字のみでグラフを作っているわけですが、自殺者数全体も98年以降3万人を超えていました。原因の分類は遺書などで類推する他なく、病気や精神的なプレッシャーが原因の自殺も突き詰めれば経済的問題に達するものも多いので、この数字はベースのものと考えていただければと思います。
さて、ここ4年でようやく6000人を割った「経済・生活問題」を原因とする自殺者数。これに間違いなく作用しているのが、失業率の改善、なかんずくアベノミクスです。というのも、金融緩和、マネタリーベースの増加と失業率の間にはかなりの関連が指摘されているのです。
<日本では2年程度の効果ラグはある。アメリカ経済の場合、リーマンショック後のマネタリーベースと失業率の関係には1年程度のラグがある。つまり、FRBがマネタリーベースを増加させると、1年くらい経過すると低下しはじめる。>
アメリカでは1年。日本では2年のタイムラグ。ということで、今3.2%の失業率は、2年前、2014年の金融緩和の効果となります。つまりは、自殺者数の減少はアベノミクスの効果といえるのではないでしょうか?
しかしながら、野党は「アベノミクスは失敗」を合言葉に批判の嵐です。
<この6年で物価は2割以上上がったが、名目賃金は2010年とほぼ横ばい。デフレが良くないからと言って、金融緩和でむりやり円安にして、輸入物価を上げて、株価を上げて、賃金や年金は上がらない、どんどん生活が苦しくなるのがアベノミクスではないか。>
確かに今までアベノミクスと言えば金融緩和一辺倒で、そこで歪みが出てきたのも事実かもしれません。一方で、光の部分を語るデータはなかなか信用されません。今回のグラフが参考になれば幸いです。