2015年10月~12月期のGDP速報値が発表されました。
この手の指標の発表があると、判で押したように各社同じような分析が並びます。
<内閣府が15日発表した2015年10~12月期の国内総生産(GDP)の1次速報は、物価変動の影響を除いた実質成長率が前期(7~9月期)比で0・4%減だった。>
<GDPの6割を占める個人消費は前期比0・8%減と、2四半期ぶりに落ち込んだ。暖冬で冬物衣料の売れ行きが鈍く、ガソリンや灯油の消費も減った。>
<輸出は0.9%減、輸入は1.4%減だった。輸出は減少したが、原油安を受けて輸入が減り、GDP成長率に対する外需寄与度はプラスを確保した。>
どれを見ても、個人消費の減少は暖冬の影響で冬物衣料などの売れ行きが鈍ったことが原因。設備投資は伸びたが、全体を押し上げるには至らず。中国経済の不振やアメリカの景気の足踏みもあって、輸出も伸び悩んだが、原油安で輸入がそれ以上に減ったので全体としてはプラスを確保した。こういった説明文が並んでいます。もちろん、判で押したように同じ記事になるのは理由があって、同じアンチョコを基に記事を書いているからです。さすがネットの時代。そのアンチョコも含めて、内閣府はすべてネットに挙げてくれています。れが、これです。
民間需要、とくに民間最終消費支出や民間設備投資に関する記述など、まさにカーボンコピーです。また、輸出入の動向などもこのペーパーに沿った記述で、相変わらずの経常黒字崇拝記事になってしまっています。
<(3)輸出入の動向
財貨・サービスの輸出については、実質▲0.9%と 2 四半期ぶりの減少となった。船舶・同修理、非鉄金属、特殊産業機械等が減少に寄与したとみられる。
財貨・サービスの輸入については、実質▲1.4%と 2 四半期ぶりの減少となった。電子・通信機器、原油・天然ガス、鉄鉱石等が減少に寄与したとみられる。
この結果、財貨・サービスの純輸出(輸出-輸入)のGDP寄与度は実質 0.1%とプラス寄与となった。>
輸出が減少しているが、それ以上に輸入が減少しているので、全体への寄与度としては0.1%のプラスになったということなんですが、数字はプラスでも中身は正反対に深刻です。各社の経済記事では、折からの原油安が輸入減少の主な原因というような書き方ですが、原油安は昨日今日始まったものではありません。TIが40ドル台をウロウロしだしたのは、去年の夏ごろから。すでに原油が安値圏で推移しだして半年以上が経っています。10~12月期より前からすでに影響が出ているはずで、原油価格だけを輸入減少の要因に挙げるのはあまりに乱暴です。原油安という一時的な要因よりも、内需の減少で輸入も減少しているという方がよほどしっくりくると思います。要するに、輸出の減少を相殺するくらい、内需が減少して輸入が減少しているのではないでしょうか。
ということで、本丸の個人消費、民間最終消費支出を見てみましょう。季節調整済みの実質で見てみると、
15年10~12 -0.8(前期比)
15年 7~9 0.4
15年 4~6 -0.8
15年 1~3 0.2
14年10~12 0.6
上がったり下がったりでデコボコを繰り返していて一進一退のように見えますが、もう少し前のデータを引っ張ってみると、
14年 7~9 -0.0
14年 4~6 -5.0
ここまで引っ張るとお分かりでしょう。消費税を5%から8%に上げた2014年4月から6月で、前期比5.0%一気に落ち込んだ後、上がったり下がったりしながらほとんど足踏みしているわけですね。つまり、消費増税後内需は冷え込んだまま回復していない。そして、そんな弱い内需に足を引っ張られて輸入も減少。数字上はプラスになっていますが、これは変な日本語ですが、「悪いプラス」ということです。
もう一つ気になるのが、公共投資。公的固定資本形成という項目なんですが、
15年10~12 -2.7(前期比・季節調整済み)
15年 7~9 -2.0
15年 4~6 3.3
15年 1~3 -2.9
14年10~12 0.7
過去1年間、4四半期のうち、3四半期でマイナス。もうこれでもかというほどに投資が絞られているのがよくわかりますね。家計も企業も投資を躊躇するこのデフレ期に、政府がこれだけ緊縮財政を敷けば、GDPが低迷するのは当然です。先ほど例に出した日本経済新聞が、非常に示唆に富む一文を載せていました。
<2015年度の実質成長率が内閣府の試算(1.2%程度)を達成するには、16年1~3月期で前期比年率8.9%程度の伸びが必要になるという。>
全体で前期比の年率換算で8.9%の伸びが必要...。民間需要がこれだけ冷え込んでいる中、あと1か月半でどれだけ押し上げられるのか?もうすでに間に合わない可能性も大きいですが、財政出動で内需を押し上げる以外に方法はないような気がします。何もしなければ、2015年度通年でもマイナスの可能性だって否定はできません。