2016年01月13日

国会論戦開始!ですが...

 通常国会の本格的議論が、15年度補正予算案審議から始まりました。足元の景気が厳しさを増す中、どうしたら景気を浮揚できるのかの議論を期待していたんですが、残念ながらそれは叶わぬ夢のようです。主・維新の統一会派は「何が何でも政権と対決しなくてはならない」と考えているようで、もう無理筋で否定的な質問に終始。正予算の効果、それが力不足なのか過剰なのかというような建設的な議論からは程遠い質問のオンパレードです。

『ドル建てのGDP減少、気にする必要ない=安倍首相』(1月12日 ロイター)http://goo.gl/s1GnHu
<安倍晋三首相は12日午後の衆院予算委員会で、安倍政権になってからドル建ての国内総生産(GDP)が減少しているとの指摘に対して、「ドルで給料をもらっている人はいない」とし、「為替が変動する中でドル建てのGDP減少を気にする必要はない」と述べた。維新の井坂信彦委員への答弁。>

 これが、対案路線で鳴らした維新の党の委員の質問なのか...。暗澹たる思いがします。一体、ご自身をどこの国の議員だとお思いなんでしょうか。
 総理の指摘を待つまでもなく、一般的な日本人は、日本円で給料を得、それを日本円で商品やサービスに替えて生活を維持しています。普段からアメリカドルを使う人は相当変わっているか、その人は日本人ではありません。日本円での所得を増やすのが日本人のための政策ではないのでしょうか?日本円でのGDPも米ドル建てと同様激減しているのであればそれは大問題です。2014年4月の消費増税以来、たしかに日本円建てのGDPも伸び悩んでいますから、そこを批判するのであればわかります。しかし、為替の円安進行を理由に米ドル建てでのGDP減少を問題視するとは。

 もしそれが大問題なのであれば、解決策は今すぐ金融緩和をやめて大幅に引き締め、結果的に円高ドル安に誘導していけばいいわけです。米ドルを円に換えて国内で投資していた海外の機関投資家からすればこれほど結構な話はありません。米ドルから見た為替差益がたんまり入るわけですからね。一方、日本国民の生活を考えると、それはまさに円高不況に苦しんだ民主党政権時代に逆戻りすることに他なりません。その苦しみを国民がもう忘れたとでも言うのでしょうか?一体どこを向かって政治をやっているのか、残念ながら日本国民を向いてはいないのではないかという疑念を抱いてしまいます。

 こうしたデータを無理矢理解釈して政府の経済政策を根本から否定しようという動きは他にも見られます。たとえば、

『衝撃 アベノミクス「GDP伸び率」あの民主党政権に完敗』(2015年12月16日 日刊ゲンダイ)http://goo.gl/ukrajl
<民主党の山井和則衆院議員が今月、内閣府に対して民主党政権時代と安倍政権下で実質GDPはどれだけ伸びたのか――を比較できる数値を求めたところ、数値は民主党政権の方が断然、良かったのだ。>
<内閣府経済社会総合研究所の調べによると、民主党が政権を奪取した2009年7~9月期から、政権を明け渡す12年10~12月期までの実質GDPの伸び率が「5.7%」だったのに対し、安倍政権が誕生(12年10~12月期)してから3年間(15年7~9月期)の実質GDPの伸び率は「2.4%」。つまり、同じ3年間を比べてみると、伸び率は民主党政権時代の方が安倍政権より2倍以上、数値が「良かった」のである。>
<山井議員がこう言う。
「(中略)今回は内閣府の公表数値です。数字はウソをつきません。安倍政権は消費税増税などを理由に言い訳するのでしょうが、民主党政権では東日本大震災がありました。それでも民主党政権の実質GDPの伸び率の方が上回っているのです。繰り返しますが、アベノミクスは失敗したのです」>

 では、実際のデータを見てみましょう。直近のデータで、12月に出ているGDPの2次速報値の中に、1997年までのデータが載っています。

『2015(平成27)年7~9月期四半期別GDP速報(2次速報値)』(内閣府HP)http://goo.gl/ElQeK8

 支出側実質GDPの季節調整済みの数字を見てみますと、山井議員の言う期間、民主党の政権担当期間は09年7~9の489兆あまりから、12年10~12の517兆へ伸びています。一方、自民党の政権担当の12年10~12、517兆からどう増えているかというと、15年7~9で529兆あまり。伸び率から言えば、たしかに民主党政権時代の方が優秀といえるかもしれません。しかしながら、そのスタートの09年7~9月は、リーマンショックの影響がもろに残っていて、かなり低い水準からのスタートだったことが分かります。れだけ深刻な不景気だったからこそ民主党政権に世論が期待したわけですが、3年3か月の民主党政権ではついにリーマン前の水準には回復させられずに政権を明け渡しています。一方、第2次安倍政権は消費増税直前の2014年1~3月期に534兆円を記録。ーマンショック直前の529兆円を超えて、リーマン越えを果たしました。その後、消費増税の影響が尾を引き、このところ景気が足踏みを続けているのはご存知の通りです。

 事ほど左様に、本来問題にすべきは消費増税後の足踏みが続いている上に、そのまま世界景気の悪い方向への変動が続いている。これに耐えられるのかどうかではないでしょうか?今だにデフレギャップは7兆円あまりあって、国内には需要が足りない。海外の著名なエコノミストやノーベル賞教授がこぞって「財政出動して需要を作り出せ!」と言っているのに、政府が用意した補正予算はデフレギャップの半分にも満たない3.3兆円。の力不足を指摘するべきなのに、民主・維新の統一会派は予算の組み替え動議を出して、さらに財政出動を削り取り、その分借金を返す方に回そうとしています。

『民維、補正予算案で組み替え動議提出へ 給付金撤回求める』(1月8日 日本経済新聞)http://goo.gl/onhJ4R
<民主党と維新の党は8日の政策調整会議で、2015年度補正予算案の組み替え動議を提出する方針を決めた。所得の低い高齢者への1人3万円の臨時給付金や環太平洋経済連携協定(TPP)関連の国内対策費など約8000億円を削除し、国債の減額に充てるのが柱。保育や介護関連の施設整備の基金に積み増す1542億円も削る。>

 国家財政は家庭の財布とは違います。家庭の財布であれば借金を返せばその分可処分所得が増えますが、国の場合借金を返しても何も生みません。その分を新たな歳出に回せば、政府最終支出という形でGDPの押し上げ要素となり、受注した会社の所得になり、雇用された人の所得になります。

 誰かの支出は、別の誰かの所得になる。

 経済学の基礎の基礎のはずなんですが、どうやら野党議員の先生方は国民の方を見ていらっしゃらないようです。ある野党議員秘書が嘆きました。
「民主がぼーっとしているから、政治に緊張感が足りない。これは国民にとっての不幸」

 さて、補正予算議論は"良識の府"参院側に回ります。"良識の府"らしい議論を期待したいところですが...。
書籍
プロフィール

飯田浩司(いいだ・こうじ)

1981年12月5日生まれ。
神奈川県横須賀市出身。O型。
2004年、横浜国立大学経営学部国際経営学科卒業。
現在、ニッポン放送アナウンサー。
ニュース番組のパーソナリティとして政治経済から国際問題まで取材活動を行い、ラジオでは「議論は戦わせるものではなく、深めるもの」をモットーに情報発信をしている。
趣味は野球観戦(阪神タイガースファン)、鉄道・飛行機鑑賞、競馬、読書。

■出演番組
≪現在≫
「飯田浩司のOK!COZY UP!」

≪過去≫
「ザ・ボイス そこまで言うか」
「辛坊治郎ズーム そこまで言うか」

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