消費税の再増税について、景気の状況が怪しい、むしろ悪い方向に行きかかっている中でやるべきではないと番組でも各コメンテーターが発言し、私もそう思ってこのブログにも度々書いてきました。しかしながら、外堀は着々と埋まって行っている気がします。特に、軽減税率に関する与党協議が始まってからその傾向が顕著です。何度も危機感をお話した通り、軽減税率のニュースを扱うにあたっては、2017年4月の消費税10%への増税が議論の前提となります。結果として、軽減税率の範囲を報じると、消費税の増税が既成事実であるかのように報じざるを得なくなるわけですね。もちろん、コメンテーターとのやり取りの中で消費税増税が決まったわけではない旨は取り上げるようにしてきましたが、番組で軽減税率を扱うたびにその歯がゆさを感じてきました。
そして、今週の月曜日。もはや毎週のように行われている、新聞・通信各社の世論調査。その中でついに質問事項から、消費税増税の是非が削除されたのです。先月11月の初め、まずは軽減税率を積極的に進める読売新聞の世論調査から「消費税増税に賛成か反対か?」という質問事項が削除されました。
この読売の調査では、消費増税の是非を問わずに直接軽減税率についての質問をしています。ただ、この時には、同じ日に行われた朝日新聞の世論調査で消費増税の是非に触れられていたのでそれを参考にすることができました。
<◆2017年4月に消費税を10%に引き上げることに、賛成ですか。反対ですか。
賛成31 反対60>
反対が賛成の2倍。国民の過半数が反対している上に、この数字はここ1年以上ずっと変わりません。生活に直結するものですし、国民の関心の高い政策事項なのですが、先週末行われた2つの世論調査、共同通信全国電話世論調査と、日本経済新聞テレビ東京電話世論調査では質問項目から完全に削除されています。あるのは、軽減税率にまつわるものばかり。むしろ、軽減税率については大きな見出しが立ち、1項目を割いて詳しく伝えられています。
私の見落としかと思い質問項目を見てみたんですが、どうやら聞いていないようです。
共同通信の調査に関しては、東京新聞11月30日の紙面を確認してみましたが、やはり聞いていないようでした。
国民の6割以上が反対の政策テーマに関して、賛成か反対かを聞かずに賛成前提の踏み込んだ質問をなぜするのでしょうか?例えて言えば、「安保法制に関して賛成か反対か」を聞かずに、「安保法制を活用した自衛隊の活動はどの範囲までできると思いますか?」という質問をしているようなものです。そんな世論調査をした段階で、リベラル系のメディアは「安保法制賛成を前提とした世論誘導である!」と大批判キャンペーンを張ったでしょう。
消費増税も法律には2017年4月に実施すると書かれていますが、内閣として税制改正を決定しない限り最終的に決まったわけではない。それなのになぜ、消費増税に関しては「まだ決まったわけではない。既成事実化するな!」という批判が湧き上がらないのでしょう?この消費増税議論に関して興味深いのは、安保では賛成の右派だった読売も、反対で左派だった共同通信も同じく、増税の是非を削除していることです。これに関しては、今までの世論調査で増税の是非を聞いてきた朝日新聞に期待をしたいと思います。次の調査で果たして質問項目に上ってくるのか、削除するのか?弱者に寄り添うという、本来のリベラルの矜持を見せてほしいものです。