大阪ダブル選挙は地域政党・大阪維新の会の圧勝に終わりました。府知事選、市長選共に、8時に投票箱が閉まった瞬間に各新聞・通信・テレビが維新側候補の当選確実を打つという、「瞬殺」でありました。
<大阪府知事、市長のダブル選は二十二日、知事に現職松井一郎氏(51)が再選、市長に新人で元衆院議員吉村洋文氏(40)が初当選を果たし、共に橋下徹大阪市長率いる地域政党・大阪維新の会が勝利した。五月の住民投票で否決された「大阪都構想」への再挑戦を掲げ、自民党推薦候補をそれぞれ大差で破った。>
この選挙に関しては、投票日を一週間前に控えた週末に各社が行った世論調査で、維新側の優勢が伝えられていました。「優勢」、あるいは「やや優勢」といった表現で、実際の数字は記事には出てきていませんが、その当時すでに永田町界隈では維新側の完勝が予想されていました。内々に出回っていた実際の数字では、各社の調査がおおむね10~15ポイント差で維新側の優勢を示していたので、驚きをもって受け止められました。いうのも、特に市長選については、前回5月の住民投票では都構想反対が僅差で勝利していただけに、この世論調査の結果が出るまではある程度の接戦が予想されていたからです。
ある政界関係者は当時、
「告示直後の自民党の内々での調査では2、3%柳本(自民側候補)リードで出ていたんだ。それより前は2ケタ差で柳本がリードしていたから、だいぶ詰められてきたという印象で、維新に勢いがあるなぁという雰囲気だった。しかし、まさか1週前の段階で10ポイント以上もリードするとは...」
と話していました。そして、当日までその勢いは衰えず、維新が圧勝となったというわけです。
投票率は50%をわずかに上回った程度ということで、前回の住民投票の時と比べると組織票の存在感が際立つはずが、「ふわっとした民意」(橋下氏)に頼る維新が勝ったというのは、ウラを返すと住民投票の時ほど組織がフル回転しなかったということを示しています。そういえば、大阪住民投票当時、反対が僅差で勝利したという結果を見て地元の記者たちはささやいていました。
「最後の最後に反対派の大動員があった...。それに維新が負けた...」
後日いろいろ話を聞くと、この住民投票の時には期日前投票に反対派が動員をかけましたから、投票日前の調査では圧倒的な差で反対派が先行していたんです。ところが、投票日の午前中に投票所に足を運んだ人の出口調査で、期日前の反対票を上回る勢いで賛成票が投じられていることが分かったんですね。このペースで行けば、僅差で都構想は賛成多数になりそうでした。それを反対派が瞬間に、大量動員が始まりました。特に大阪市内の南部、南東部、西成区、平野区などで、公明党、共産党が組織を挙げて反対票の掘り起こしを行い、その結果形勢は再び逆転。僅差で反対派が勝ったんです。
逆に今回は、あの時ほどの組織戦が展開されなかったということになります。これは、住民投票当時と今回のダブル選の行政区別得票を見比べると良く分かります。
前回1万票近い大きな差がつき僅差反対という結果の原動力となった、2つの区を見てみましょう。
まずは、平野区。前回は、賛成46072票に対して、反対56959票でした。ところが今回は、賛成(吉村)40730に対し、反対(柳本)32759。1万票差反対優勢が、8000票差賛成優勢にひっくり返っています。
続いて、住吉区。前回は、賛成38623に対し、反対45950。今回は、賛成(吉村)33872に対し、反対(柳本)28001。こちらも7000票反対優勢が、6000票の賛成優勢にひっくり返っています。区別得票数全体で見ても、反対派の柳本候補が制することが出来たのは、地元の西成区のみ。それでもわずか13票差ですから、いかに組織が動かなかったかがわかります。
では、なぜ前回ほどの組織戦が展開されなかったのか?大阪政界関係者は、公明党の姿勢の違いを強調します。
「今回は1週前の各社世論調査で維新が圧倒的な差をつけたので、公明党が恐れをなした。衆院選小選挙区では府内4選挙区に現職がいる公明は基本的に維新を敵に回したくない。1週前までは様子見ムードだったけど、あれでほぼ決まった。維新側は公明にプレッシャーをかけるつもりで最後まで手を緩めなかったからね」
選挙期間中に来年の通常国会の日程がほぼ固まり、衆参ダブル選挙の可能性が残る日程となったことも、公明党の組織戦を押しとどめる方向に作用したようです。ある意味官邸からの水面下でのサポートが功を奏したと言えるかもしれません。
この結果でもう一度練り直された都構想案が出てきて、住民投票にかけられるでしょう。一度否決しているだけに難しいのではないかという向きもありますが、これは間違いなく通ります。それも、圧勝で通る可能性だって決して夢ではありません。もちろん、公明党の消極的な賛成が今回の選挙でほぼ決まったからです。
それに続くのは、都構想を引っさげた国政政党おおさか維新の躍進、そして与党との連携。参院選の結果によっては、すでに押さえている衆議院のみならず、参議院でも改憲の発議に届く3分の2の議員数を自・公・おおさか維で超えてくるかもしれません。ついに、改憲の目が出て来るか?官邸の高笑いが聞こえてくるようです。